坂田誕生日2022
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HBD
苺のヘタを取りながらスポンジ生地を焼いて、ケーキの仕上がりを想像しながら渡す相手のことを考えていた。
医者に注意されてるのに日頃から甘いものを沢山摂取してる銀時の事を考えて、小さめで甘みを抑えた苺のケーキを作る予定で具材を買い揃えた時から頬の筋肉がゆるゆるになってる気がする。
銀時を好きになってから自分の趣味がお菓子作りで良かったとどれだけ思ったかわからない。銀時と付き合い始めてからはそれをさらに実感した。
「喜んでくれるかな」
普段からそこまで頻繁にではないけれど、あれが食べたいこれが食べたいという銀時の要望に極力応えるよう甘いものを作っていたりするし、誕生日だからってまた甘いものをあげるのは⋯と一瞬頭をよぎったけれどきっと嬉しそうに美味しそうに食べてくれるであろう姿を想像して悩みはすぐに吹き飛んだ。
挟む用と盛り付け用に形のいいものを選んで寄せておき、残りの苺を適当な大きさに刻んでソースを作ろうと小さな鍋に移していた。
「うまそーじゃん」
唐突に聞こえた自分以外の声に驚いて大袈裟に肩が跳ね上がった。
「は?!え?!銀時?!」
「近くまで来たんで寄ったけどよ、お前いつも鍵閉めてねえの?」
振り返ると「最初びびったわ」と言いながら寄せてある苺を一つ摘んで口に運ぶ銀時がいて、こっちこそびっくりして死ぬかと思ったと伝えると頬を苺で膨らませた銀時は軽く笑ってた。
「てか何、名前ちゃん今度は何作ってんの?」
二つ目の苺に手を伸ばしている銀時。
さすがにこれ以上少なくなるとバランスが悪くなりそうなので苺を手で覆いガードしながら、本当はサプライズで渡そうと思っていたばかりにここで言うのは少し気恥しい気持ちになって口を閉じたままでいた。
「俺ァてっきりまた俺宛かと思ったんですけどぉ〜」
そんな私を見て何かを察した銀時は少しふざけた様子で私の顔を覗き込んできた。
もう少しでスポンジ生地も焼き上がるしケーキを作ろうとしてるのはバレバレで、いっそ予定していた日より少し早いけど出来たてをあげちゃおうと思って「銀時のケーキ作ってる」と小さく言うと、普通を装いながらも嬉しそうに目を輝かせて「へー」だなんてわざとらしく短い言葉を返した銀時。
「だからもう苺は食べないで」
「でもそれ俺に食ってほしそうな顔してんぞ」
「してないしてない」
ほら部屋行ってて、と軽く背中を押すと「へいへい」と仕方なさそうに歩いてく銀時。
振り返るとお皿の上の苺はしっかりともう一つ無くなってた。
︙
泡立てた生クリームを手の甲に少し乗せ味見したけれど、どうも甘さを極力控えめにしたせいか普段作るものより物足りなさを感じてしまう。
もう少し甘くした方がとか、でも甘過ぎてもなとか、まさか生クリームでこんなに悩むと思ってなくてどうしようかと考えていると、私の名前を呼びながらこっちに歩いてきた銀時は私の真横に立って手元を覗き込んできた。
「ほぼ出来てんな」
そう言いながら人差し指でクリームをすくうと口へ運んだ銀時はほんの少し眉を寄せて複雑な顔をした。
「⋯やっぱりちょっと足りない?」
「足りねえっつーかほぼ無じゃねこれ」
「もうちょっと足すね」
第一は美味しく食べてもらうこと。眉を寄せたのを見てしまったからさすがにもう少しグラニュー糖を入れて、再度混ぜ合わせてから同じく手の甲に少し乗せ食べてみるとクリームは明らかに甘みが増していて、これなら!と思えるほどには丁度良い味になっていた。
「これは?どう?」
器を少し傾けると指先でクリームをすくい同じように口に含んだ銀時。今度は眉を寄せることも無く「いんじゃね」と言い再び指先でクリームをすくおうとしていた。
「だめ!また減っちゃうじゃん」
「いーだろ苺と違ってンな減らねえしよ」
「今苺食べたって認めた?」
「⋯⋯俺あっち行ってるわ」
急に目線を合わせてくれなくなった銀時は頭を搔きながらそそくさと部屋の方へと歩いていき、それが少し面白くて背中を見ながら小さく笑ってしまった。
綺麗に仕上げたケーキと、余った食材と冷凍庫から取りだしたアイスとをグラスに適当に詰めて作った即席のパフェ。
甘さは足りてるだろうけどお店で売ってるような立派な見た目では無いし、他に物として何か用意していたわけでもない。どちらも食べたら無くなってしまう。
今になっていろいろ考えてしまうけど、気持ちだけは誰にも負けてない自身はあった。
おぼんにケーキとパフェとお茶を入れた二つのグラスを乗せて部屋まで行くと、いつ置いていったのかも忘れてしまった何週間か前のジャンプを読んでる銀時がこちらを振り返った。
「はい」
銀時の前にケーキとパフェを並べてから向かい側に座った私を見て、ちょんちょんと手招きするように指先を動かした銀時。
「何⋯?」
「他に言うことねえの?」
銀時の隣まで移動すると、耳元でぼそっと言われた言葉でさわさわと胸が少し騒がしくなった。ちらりと顔を見るとにんまりと嬉しそうな顔でこちらを見つめたまま「ん?」と耳に手を当てて言葉を急かす銀時の姿。
「誕生日おめでと」
そう伝えると、満足したのかケーキを食べ始めた銀時は「うめー」と言いながらぱくぱくと口の中へ吸い込んでいく。
「名前ちゃんも食ってみって」
食べているところを眺めていると一口すくったフォークを私へ向ける銀時。素直に頂くと苺の程よい酸味とクリームの甘味が丁度良くて、すごく美味しい。銀時のために自分で作ったケーキだと思うと尚更美味しく感じた。
「名前ちゃ〜ん、今日泊まってくわ」
「え?!聞いてない」
「今言ったろ」
「急すぎない?!」
「俺誕生日だしぃ?」
「なっ⋯⋯」
年に一度の特別な日。
この小さな我儘を、また来年も聞けるといいな。
22.10.10
苺のヘタを取りながらスポンジ生地を焼いて、ケーキの仕上がりを想像しながら渡す相手のことを考えていた。
医者に注意されてるのに日頃から甘いものを沢山摂取してる銀時の事を考えて、小さめで甘みを抑えた苺のケーキを作る予定で具材を買い揃えた時から頬の筋肉がゆるゆるになってる気がする。
銀時を好きになってから自分の趣味がお菓子作りで良かったとどれだけ思ったかわからない。銀時と付き合い始めてからはそれをさらに実感した。
「喜んでくれるかな」
普段からそこまで頻繁にではないけれど、あれが食べたいこれが食べたいという銀時の要望に極力応えるよう甘いものを作っていたりするし、誕生日だからってまた甘いものをあげるのは⋯と一瞬頭をよぎったけれどきっと嬉しそうに美味しそうに食べてくれるであろう姿を想像して悩みはすぐに吹き飛んだ。
挟む用と盛り付け用に形のいいものを選んで寄せておき、残りの苺を適当な大きさに刻んでソースを作ろうと小さな鍋に移していた。
「うまそーじゃん」
唐突に聞こえた自分以外の声に驚いて大袈裟に肩が跳ね上がった。
「は?!え?!銀時?!」
「近くまで来たんで寄ったけどよ、お前いつも鍵閉めてねえの?」
振り返ると「最初びびったわ」と言いながら寄せてある苺を一つ摘んで口に運ぶ銀時がいて、こっちこそびっくりして死ぬかと思ったと伝えると頬を苺で膨らませた銀時は軽く笑ってた。
「てか何、名前ちゃん今度は何作ってんの?」
二つ目の苺に手を伸ばしている銀時。
さすがにこれ以上少なくなるとバランスが悪くなりそうなので苺を手で覆いガードしながら、本当はサプライズで渡そうと思っていたばかりにここで言うのは少し気恥しい気持ちになって口を閉じたままでいた。
「俺ァてっきりまた俺宛かと思ったんですけどぉ〜」
そんな私を見て何かを察した銀時は少しふざけた様子で私の顔を覗き込んできた。
もう少しでスポンジ生地も焼き上がるしケーキを作ろうとしてるのはバレバレで、いっそ予定していた日より少し早いけど出来たてをあげちゃおうと思って「銀時のケーキ作ってる」と小さく言うと、普通を装いながらも嬉しそうに目を輝かせて「へー」だなんてわざとらしく短い言葉を返した銀時。
「だからもう苺は食べないで」
「でもそれ俺に食ってほしそうな顔してんぞ」
「してないしてない」
ほら部屋行ってて、と軽く背中を押すと「へいへい」と仕方なさそうに歩いてく銀時。
振り返るとお皿の上の苺はしっかりともう一つ無くなってた。
︙
泡立てた生クリームを手の甲に少し乗せ味見したけれど、どうも甘さを極力控えめにしたせいか普段作るものより物足りなさを感じてしまう。
もう少し甘くした方がとか、でも甘過ぎてもなとか、まさか生クリームでこんなに悩むと思ってなくてどうしようかと考えていると、私の名前を呼びながらこっちに歩いてきた銀時は私の真横に立って手元を覗き込んできた。
「ほぼ出来てんな」
そう言いながら人差し指でクリームをすくうと口へ運んだ銀時はほんの少し眉を寄せて複雑な顔をした。
「⋯やっぱりちょっと足りない?」
「足りねえっつーかほぼ無じゃねこれ」
「もうちょっと足すね」
第一は美味しく食べてもらうこと。眉を寄せたのを見てしまったからさすがにもう少しグラニュー糖を入れて、再度混ぜ合わせてから同じく手の甲に少し乗せ食べてみるとクリームは明らかに甘みが増していて、これなら!と思えるほどには丁度良い味になっていた。
「これは?どう?」
器を少し傾けると指先でクリームをすくい同じように口に含んだ銀時。今度は眉を寄せることも無く「いんじゃね」と言い再び指先でクリームをすくおうとしていた。
「だめ!また減っちゃうじゃん」
「いーだろ苺と違ってンな減らねえしよ」
「今苺食べたって認めた?」
「⋯⋯俺あっち行ってるわ」
急に目線を合わせてくれなくなった銀時は頭を搔きながらそそくさと部屋の方へと歩いていき、それが少し面白くて背中を見ながら小さく笑ってしまった。
綺麗に仕上げたケーキと、余った食材と冷凍庫から取りだしたアイスとをグラスに適当に詰めて作った即席のパフェ。
甘さは足りてるだろうけどお店で売ってるような立派な見た目では無いし、他に物として何か用意していたわけでもない。どちらも食べたら無くなってしまう。
今になっていろいろ考えてしまうけど、気持ちだけは誰にも負けてない自身はあった。
おぼんにケーキとパフェとお茶を入れた二つのグラスを乗せて部屋まで行くと、いつ置いていったのかも忘れてしまった何週間か前のジャンプを読んでる銀時がこちらを振り返った。
「はい」
銀時の前にケーキとパフェを並べてから向かい側に座った私を見て、ちょんちょんと手招きするように指先を動かした銀時。
「何⋯?」
「他に言うことねえの?」
銀時の隣まで移動すると、耳元でぼそっと言われた言葉でさわさわと胸が少し騒がしくなった。ちらりと顔を見るとにんまりと嬉しそうな顔でこちらを見つめたまま「ん?」と耳に手を当てて言葉を急かす銀時の姿。
「誕生日おめでと」
そう伝えると、満足したのかケーキを食べ始めた銀時は「うめー」と言いながらぱくぱくと口の中へ吸い込んでいく。
「名前ちゃんも食ってみって」
食べているところを眺めていると一口すくったフォークを私へ向ける銀時。素直に頂くと苺の程よい酸味とクリームの甘味が丁度良くて、すごく美味しい。銀時のために自分で作ったケーキだと思うと尚更美味しく感じた。
「名前ちゃ〜ん、今日泊まってくわ」
「え?!聞いてない」
「今言ったろ」
「急すぎない?!」
「俺誕生日だしぃ?」
「なっ⋯⋯」
年に一度の特別な日。
この小さな我儘を、また来年も聞けるといいな。
22.10.10
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