置き土産
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沖田にピアスを開けてもらう話
数日前、衝動的に購入してしまった綺麗なピアス。
全然痛くないですし大丈夫ですよ、なんて店員さんの言葉に乗せられてつい一緒に買ってしまったピアッサーとにらめっこしながらどうしようかと考えていた。
⋯⋯今ならわかる。絶対痛い。
パッケージから見えるあの針先はどう考えても痛いやつだ。
試しに爪で少し力を入れて耳朶を挟んでみたけど普通に痛みはあった、全然痛くないなんて嘘、よく注意書きで個人的意見ですみたいに小さく書かれてるアレと一緒じゃないか。
両サイドの髪を耳にかけ鏡と向き合い始めてからそこそこの時間が経過していた。
そんな時、部屋に響いたベルの音。
今日誰かと遊ぶ予定も何か配達物が届く予定も無かったはず、と思いながら玄関へ行き扉を開けると隊服姿の沖田さんがいた。
「よぉ」
「⋯どうしました?」
「あそ⋯仕事しに来た」
「今遊びにって言いか」
「いいから中入れろ」
ちょっと!というわたしの言葉も二つの手も無視してズカズカと玄関に入ってきた沖田さん。たまに⋯いや頻繁に仕事中サボりにやってくる彼はいつものようにまるで自分の家ですよみたいな足取りで廊下を進んでいく。
きっと二時間か早くて一時間もすれば土方さんから怒りの電話か訪問を知らせるベルが鳴るんだろうなと思うと毎度の事ながら小さなため息が出た。
「今日はお茶しかないですよ」
「いつ来てもいいように用意しとけ」
「いやお仕事してもらって」
さっきまで悩み続けていた諸々の物が広がる机の前に座っている沖田さんの前にお茶を入れたグラスを出すと、沖田さんは小さなピアスを大きな目で見つめていた。
「開けるのか?」
「⋯⋯⋯そうですね」
「どうせ自分じゃ出来ねぇだろアンタ」
「なっ」
なんでわかるんですか、と言いかけた言葉を飲み込んで沖田さんを見るとピアッサーを手に持ちながらあの痛そうな針先を見つめている。
⋯ちょっとまってこの人。
「名前さん」
いやな予感しかしない。
「俺が穴、開けてやりますぜぃ」
耳や器具を消毒しながらどこで間違えたんだろうと考えた。
玄関?ピアスを買った時?そもそもで今日トライしようだなんて思ったこのわたしが悪かった?
そんなこと考えても答えは出ないし、沖田さんは心なしか普段より楽しそうな雰囲気を纏っている。
自分で出来ます、と小さく抗議したけれど「どうせその耳の爪痕、痛くてやめちまったんでしょう?」と言われつい耳を手で隠すとにやりとした顔を向けられて、しまった!と思った時には既に遅く沖田さんの口元はさらに吊り上がっていた。
「⋯あああの、やる時言ってくださいね」
「何言ってやがる、こういうのは唐突に刺すから楽しいんじゃねえですかい」
「いやわたしで楽しまないでくれます!?!」
沖田さんへ消毒し終えた器具を全て渡し向き合うように正座して、膝上で手を握りながら強く目を閉じた。
少ししてスリスリと服が擦れる音が聞こえると耳元にふわっと息がかかり体が強ばった。怖いのもそうだけど至近距離で顔を見れる勇気もなかった。
「今から数え」
「近い!近いです声が!」
「アンタの耳に今から穴開けようとしてんでさぁ我慢しやがれ」
「やめっあああのそこで話さないでッ」
視界を遮っているせいか声が普段より鮮明に耳に届いて、普段聞くことの無い距離感からの声にどきどきする。
それに遅かれ早かれ訪れる痛みを想像すると恐怖で握る手に力が篭もる。
「そんなに怖ぇならやめときゃいいのに」
「早くやってくださいッ」
「んじゃ、さーん」
あの沖田さんが数えてくれてる、案外優しいところもあるんですね、なんて思っていた私は馬鹿だった。
「にー」
「ぎゃッ」
まだイチとゼロが控えてると思っていた私の耳に届いたのはカチャッという音と突き刺すような痛み。突然の事で可愛げの欠片もない悲鳴が口から漏れた。
ただでさえ普段聞き慣れてない距離からの音が突然聞こえただけでもパニックなのに、加えて痛みを感じる耳朶。確かに想像していたよりは痛くない気がするけど、何より驚いたのはまるで意味が無いカウントだ。
何が〝さーん〟ですか!あんな風に言われたら普通ゼロまで続いてからカチッとするでしょ!そうだと思うでしょ!最初は普通に数え始めておいてまさか〝にー〟の段階で突き刺す人なんていませんよ!⋯いやここにいましたけど!
耳朶に手を添えると予めセットされていたピアスなのか固形の何かが耳を貫通して突き刺さっているのがわかった。
痛みというより繊細になっている鼓膜から伝わる恐怖でじわりと溢れる涙を必死に堪えながら目を開けて目の前にいる沖田さんを睨むと「なんでぃ」と悪びれる様子もなくこちらを見つめていた。
「普通!普通あれはゼロでやるんですよ!」
「いーじゃねぇですか覚悟が決まる前にサラッとやってやったんだ、礼ぐらいしてくれてもいいんですぜ」
「誰が⋯!本当びっくりしたんですから!」
机に置いてある手鏡を持って耳を見ると、若干赤みを帯びている耳には赤く輝く小さなピアスが付いていた。何週間か経つ頃にはこれを外して自分で選んだピアスを付けれるんだ、と思えば先程の恐怖も少しは和らいだ気がしなくもない。
でも問題は、鏡越しに見えるまだ何も付いていないまっさらなもう片方の耳。
「で?片方残ってやすが」
にやにやとやらしぃ笑顔を浮かべる沖田さんはもう一つのピアッサーを片手にこちらを向いている。
「⋯⋯次はちゃんとゼロですからね」
もう片方を自分の手でやる勇気は勿論ないので、しっかりと伝えてから再び目蓋を伏せた。
けれど、いつまで経っても声はもちろん服の擦れる音も何も聞こえてこない。無音が続いていた。
「⋯⋯⋯お、沖田さん?」
「なんでぃ」
「いやあの⋯こっちもやるんじゃ⋯」
目を閉じたまま片方の耳を指してみても、沖田さんからの返事は聞こえてこない。
もう片方もやってくれると思ってたのはわたしの勘違い?いやそんな訳ない、そう思ってゆっくり目を開けると至近距離でこちらをまじまじと見つめる沖田さんの綺麗な顔があった。
「ッ」
人は本気で驚くと声すら出ないらしい。
驚いて距離を取ろうと仰け反ると、正座をしていたわたしはバランスを崩して背中を思いきり床へぶつけてしまった。
「痛⋯ちょっと!沖田さ⋯⋯ん⋯」
背中をさすりながら反射的に閉じていた目を開けると、私の顔横に手を付いた沖田さんに見下ろされていて、退けようにも身動きが取れずただただ悲鳴をあげる心臓を落ち着かせようと必死だった。
「⋯おおおき」
「名前さん、アンタよく見りゃ綺麗な顔してやすね」
落ち着かせようと必死なわたしに突然何を言うかと思えば逆効果でしかない言葉を普段の顔のまま呟く沖田さんは、わたしの頬に手を添えて、その先にある先程付けたばかりのピアスを指先で触れてきた。
「似合ってる」
静かにそう言う沖田さんにドキドキが止まらない。
きっと恥ずかしいくらい顔が赤くなってるのはわかってる、けど隠そうにも胸の上に置いてある両手は石になったみたいに動かない。
瞬きを忘れるくらい余裕のないわたしに対して徐々に顔を近付けてくる沖田さんからは目が離せない。
息すらも気を使う距離。沖田さんの前髪の先が触れて、もう我慢の限界で目をぎちっと閉じたわたしのおでこや鼻先には何かが触れている感覚。死ぬんじゃないかってくらいバクバクと煩い心臓の震えが手に伝わってくる。
そんな時、部屋に響いた小さく乾いた音。
耳元で一際大きく聞こえた音と共に僅かな刺激を感じた。
その後すぐスリスリと服の擦れる音がして、恐る恐るゆっくりと目を開けるとそこには見慣れた部屋の天井。
「なにか期待しやしたか?」
少し目線をずらすと、これまた最高にいやらしい笑顔でこちらを見つめながら座っている沖田さんと目が合った。
「別に焦らしても良かったんですがねィ、アンタがあまりにも怖そうな顔してたもんで、つい」
痛くなさそうで良かったじゃねえですか、二回目にもなれば慣れたもんですかぃ?と机に肘をつき顔を支えながら笑顔を浮かべ続ける沖田さん。
この人は、人で遊ぶことを好むというのを忘れていた。
確かに二回目は殆ど痛みという痛みは感じなかったけれど、けれども、小さく長い溜息を吐きながら腕で目を覆って沖田さんに頼んだことを心の底から後悔した。特に二回目のそれは絶対に任せるんじゃなかったと。
完全にしてやられた。あんな可愛い顔して中身は悪魔だとわかっていたはずなのに私の心臓は未だに治まる気配がない。
今日の何もかも全てに後悔をし始めた頃、部屋に響いたのは本日二度目のベルの音。
「ちっ、いつもより早ぇな」
わざとらしく舌打ちをした沖田さんは「次は茶ァ以外も用意しとけ」と言うと小さな足音が続けて聞こえてきて、玄関からは微かに何度か聞いたことのある声が聞こえてきた。
暫くしてようやく落ち着いたわたしは、体を起こして熱を覚まそうと洗面台へ向き合い自分の両耳に付いている小さな赤いピアスを見ながら、ふと沖田さんの赤い瞳を思い出し、忘れるように何度も冷たい水を顔にあてた。
22.9.29
リクエスト〝沖田にピアスを開けてもらうお話〟
このリクエストを頂いた時、あぁ絶対沖田さんは素直に開けてはくれないだろうなと思ってしまいました。
リクエストありがとうございました!
数日前、衝動的に購入してしまった綺麗なピアス。
全然痛くないですし大丈夫ですよ、なんて店員さんの言葉に乗せられてつい一緒に買ってしまったピアッサーとにらめっこしながらどうしようかと考えていた。
⋯⋯今ならわかる。絶対痛い。
パッケージから見えるあの針先はどう考えても痛いやつだ。
試しに爪で少し力を入れて耳朶を挟んでみたけど普通に痛みはあった、全然痛くないなんて嘘、よく注意書きで個人的意見ですみたいに小さく書かれてるアレと一緒じゃないか。
両サイドの髪を耳にかけ鏡と向き合い始めてからそこそこの時間が経過していた。
そんな時、部屋に響いたベルの音。
今日誰かと遊ぶ予定も何か配達物が届く予定も無かったはず、と思いながら玄関へ行き扉を開けると隊服姿の沖田さんがいた。
「よぉ」
「⋯どうしました?」
「あそ⋯仕事しに来た」
「今遊びにって言いか」
「いいから中入れろ」
ちょっと!というわたしの言葉も二つの手も無視してズカズカと玄関に入ってきた沖田さん。たまに⋯いや頻繁に仕事中サボりにやってくる彼はいつものようにまるで自分の家ですよみたいな足取りで廊下を進んでいく。
きっと二時間か早くて一時間もすれば土方さんから怒りの電話か訪問を知らせるベルが鳴るんだろうなと思うと毎度の事ながら小さなため息が出た。
「今日はお茶しかないですよ」
「いつ来てもいいように用意しとけ」
「いやお仕事してもらって」
さっきまで悩み続けていた諸々の物が広がる机の前に座っている沖田さんの前にお茶を入れたグラスを出すと、沖田さんは小さなピアスを大きな目で見つめていた。
「開けるのか?」
「⋯⋯⋯そうですね」
「どうせ自分じゃ出来ねぇだろアンタ」
「なっ」
なんでわかるんですか、と言いかけた言葉を飲み込んで沖田さんを見るとピアッサーを手に持ちながらあの痛そうな針先を見つめている。
⋯ちょっとまってこの人。
「名前さん」
いやな予感しかしない。
「俺が穴、開けてやりますぜぃ」
耳や器具を消毒しながらどこで間違えたんだろうと考えた。
玄関?ピアスを買った時?そもそもで今日トライしようだなんて思ったこのわたしが悪かった?
そんなこと考えても答えは出ないし、沖田さんは心なしか普段より楽しそうな雰囲気を纏っている。
自分で出来ます、と小さく抗議したけれど「どうせその耳の爪痕、痛くてやめちまったんでしょう?」と言われつい耳を手で隠すとにやりとした顔を向けられて、しまった!と思った時には既に遅く沖田さんの口元はさらに吊り上がっていた。
「⋯あああの、やる時言ってくださいね」
「何言ってやがる、こういうのは唐突に刺すから楽しいんじゃねえですかい」
「いやわたしで楽しまないでくれます!?!」
沖田さんへ消毒し終えた器具を全て渡し向き合うように正座して、膝上で手を握りながら強く目を閉じた。
少ししてスリスリと服が擦れる音が聞こえると耳元にふわっと息がかかり体が強ばった。怖いのもそうだけど至近距離で顔を見れる勇気もなかった。
「今から数え」
「近い!近いです声が!」
「アンタの耳に今から穴開けようとしてんでさぁ我慢しやがれ」
「やめっあああのそこで話さないでッ」
視界を遮っているせいか声が普段より鮮明に耳に届いて、普段聞くことの無い距離感からの声にどきどきする。
それに遅かれ早かれ訪れる痛みを想像すると恐怖で握る手に力が篭もる。
「そんなに怖ぇならやめときゃいいのに」
「早くやってくださいッ」
「んじゃ、さーん」
あの沖田さんが数えてくれてる、案外優しいところもあるんですね、なんて思っていた私は馬鹿だった。
「にー」
「ぎゃッ」
まだイチとゼロが控えてると思っていた私の耳に届いたのはカチャッという音と突き刺すような痛み。突然の事で可愛げの欠片もない悲鳴が口から漏れた。
ただでさえ普段聞き慣れてない距離からの音が突然聞こえただけでもパニックなのに、加えて痛みを感じる耳朶。確かに想像していたよりは痛くない気がするけど、何より驚いたのはまるで意味が無いカウントだ。
何が〝さーん〟ですか!あんな風に言われたら普通ゼロまで続いてからカチッとするでしょ!そうだと思うでしょ!最初は普通に数え始めておいてまさか〝にー〟の段階で突き刺す人なんていませんよ!⋯いやここにいましたけど!
耳朶に手を添えると予めセットされていたピアスなのか固形の何かが耳を貫通して突き刺さっているのがわかった。
痛みというより繊細になっている鼓膜から伝わる恐怖でじわりと溢れる涙を必死に堪えながら目を開けて目の前にいる沖田さんを睨むと「なんでぃ」と悪びれる様子もなくこちらを見つめていた。
「普通!普通あれはゼロでやるんですよ!」
「いーじゃねぇですか覚悟が決まる前にサラッとやってやったんだ、礼ぐらいしてくれてもいいんですぜ」
「誰が⋯!本当びっくりしたんですから!」
机に置いてある手鏡を持って耳を見ると、若干赤みを帯びている耳には赤く輝く小さなピアスが付いていた。何週間か経つ頃にはこれを外して自分で選んだピアスを付けれるんだ、と思えば先程の恐怖も少しは和らいだ気がしなくもない。
でも問題は、鏡越しに見えるまだ何も付いていないまっさらなもう片方の耳。
「で?片方残ってやすが」
にやにやとやらしぃ笑顔を浮かべる沖田さんはもう一つのピアッサーを片手にこちらを向いている。
「⋯⋯次はちゃんとゼロですからね」
もう片方を自分の手でやる勇気は勿論ないので、しっかりと伝えてから再び目蓋を伏せた。
けれど、いつまで経っても声はもちろん服の擦れる音も何も聞こえてこない。無音が続いていた。
「⋯⋯⋯お、沖田さん?」
「なんでぃ」
「いやあの⋯こっちもやるんじゃ⋯」
目を閉じたまま片方の耳を指してみても、沖田さんからの返事は聞こえてこない。
もう片方もやってくれると思ってたのはわたしの勘違い?いやそんな訳ない、そう思ってゆっくり目を開けると至近距離でこちらをまじまじと見つめる沖田さんの綺麗な顔があった。
「ッ」
人は本気で驚くと声すら出ないらしい。
驚いて距離を取ろうと仰け反ると、正座をしていたわたしはバランスを崩して背中を思いきり床へぶつけてしまった。
「痛⋯ちょっと!沖田さ⋯⋯ん⋯」
背中をさすりながら反射的に閉じていた目を開けると、私の顔横に手を付いた沖田さんに見下ろされていて、退けようにも身動きが取れずただただ悲鳴をあげる心臓を落ち着かせようと必死だった。
「⋯おおおき」
「名前さん、アンタよく見りゃ綺麗な顔してやすね」
落ち着かせようと必死なわたしに突然何を言うかと思えば逆効果でしかない言葉を普段の顔のまま呟く沖田さんは、わたしの頬に手を添えて、その先にある先程付けたばかりのピアスを指先で触れてきた。
「似合ってる」
静かにそう言う沖田さんにドキドキが止まらない。
きっと恥ずかしいくらい顔が赤くなってるのはわかってる、けど隠そうにも胸の上に置いてある両手は石になったみたいに動かない。
瞬きを忘れるくらい余裕のないわたしに対して徐々に顔を近付けてくる沖田さんからは目が離せない。
息すらも気を使う距離。沖田さんの前髪の先が触れて、もう我慢の限界で目をぎちっと閉じたわたしのおでこや鼻先には何かが触れている感覚。死ぬんじゃないかってくらいバクバクと煩い心臓の震えが手に伝わってくる。
そんな時、部屋に響いた小さく乾いた音。
耳元で一際大きく聞こえた音と共に僅かな刺激を感じた。
その後すぐスリスリと服の擦れる音がして、恐る恐るゆっくりと目を開けるとそこには見慣れた部屋の天井。
「なにか期待しやしたか?」
少し目線をずらすと、これまた最高にいやらしい笑顔でこちらを見つめながら座っている沖田さんと目が合った。
「別に焦らしても良かったんですがねィ、アンタがあまりにも怖そうな顔してたもんで、つい」
痛くなさそうで良かったじゃねえですか、二回目にもなれば慣れたもんですかぃ?と机に肘をつき顔を支えながら笑顔を浮かべ続ける沖田さん。
この人は、人で遊ぶことを好むというのを忘れていた。
確かに二回目は殆ど痛みという痛みは感じなかったけれど、けれども、小さく長い溜息を吐きながら腕で目を覆って沖田さんに頼んだことを心の底から後悔した。特に二回目のそれは絶対に任せるんじゃなかったと。
完全にしてやられた。あんな可愛い顔して中身は悪魔だとわかっていたはずなのに私の心臓は未だに治まる気配がない。
今日の何もかも全てに後悔をし始めた頃、部屋に響いたのは本日二度目のベルの音。
「ちっ、いつもより早ぇな」
わざとらしく舌打ちをした沖田さんは「次は茶ァ以外も用意しとけ」と言うと小さな足音が続けて聞こえてきて、玄関からは微かに何度か聞いたことのある声が聞こえてきた。
暫くしてようやく落ち着いたわたしは、体を起こして熱を覚まそうと洗面台へ向き合い自分の両耳に付いている小さな赤いピアスを見ながら、ふと沖田さんの赤い瞳を思い出し、忘れるように何度も冷たい水を顔にあてた。
22.9.29
リクエスト〝沖田にピアスを開けてもらうお話〟
このリクエストを頂いた時、あぁ絶対沖田さんは素直に開けてはくれないだろうなと思ってしまいました。
リクエストありがとうございました!
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