蓼食う虫も好き好き
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コンビニ店員さん
名前は棚に商品を並べながら、最近気が付くと頭に浮かべてしまう人物のことを考えていた。
真面目そうな髪色で真選組の隊服に身を包んだ人物。
名前がその人物、土方十四郎を初めて見かけたのは最近働き始めたバイト先であるこのコンビニ。少し瞳孔が開き気味ではあるものの整った顔立ちを素直にかっこいいと思っていた。
次に見かけたのはファミレス。お昼を食べようと立ち寄ると少し離れた席でありえない量のマヨネーズをかけてご飯を食べていたのを目撃してしまった時は少し驚いたが、ソースが隠れるほど大量の粉チーズで覆われている自分の手元にあるパスタと似たようなものかと思った時もあった。
それからもバイトの日に何度か見かけたこともあったが、合計がいくらでお釣りがいくらだという言葉をかける以外では話したことも無く、たまに店に来る男前な人、として名前は他の客よりも印象が強く残る土方をよく考えるようになっていた。
「店長いるか」
名前は商品の陳列も終わりレジで仕事にあたっていると、先程まで考えていた土方が店に入って来るなり名前の元へ真っ直ぐに足を運び開口一番そう尋ねた。
「今日はまだですけど、どうかしましたか?」
「ちょっと外出れるか」
店長の不在を教えて何かあるか尋ねると一言告げ外に出た土方。もう一人の店員へ少し離れると伝えて土方と同じように外に出た名前は、目の前の光景に「え」と小さく声を漏らした。
土方が向かった先には真選組の隊服を着た男と、俯きながら泣いている子供。男は子供の腕を掴みながら何やら土方と話をしていた。
話を終えた土方は子供の腕を引きながら立ち尽くしてる名前に近付いた。
「おら、自分で言うんだろ」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら俯いた子供は小さく頷くと名前へ一歩足を踏み出して、ポケットから小さなお菓子を取り出した。
「⋯ごめ、ごめんなさい⋯⋯」
「これ⋯」
ただただ謝り続ける子供に目線を合わせるようにしゃがんだ名前は、手のひらに乗っている小さなお菓子を手に取ると子供と交互に目線を動かして全てを理解した。
「返してくれてありがとう」
万引きを理解した段階で店の中へ連れて行き親へ連絡をする事だって、今すぐ店長に連絡を取る事だって、勿論目の前にいる真選組に突き出すことだって出来た名前だったが、子供へ優しく声をかけると手を後ろへ流すように頭を優しく撫でた。
「どうしても欲しかったの?」
「⋯うん」
「そっかそっか、これ美味しいもんね」
私もこれすごい好きなんだよ。怒ることもせず優しく語りかける名前の様子に少しずつ顔を上げた子供と、その二人の様子を黙って見つめる土方。
「でもこれはお金を出して買わないと食べられないの」
「⋯ごめんなさい」
「だから次はしちゃだめだよ、私と約束しよ!」
はい!と小指を立てる形で手を前に出した名前をきょとんと見つめる子供は、目元の涙を乱暴に袖でぬぐうと自身の小さな小指を絡めた。
「ちょっと待っててね」
子供にそう告げた名前は姿勢を戻すと、土方との僅かな距離を埋めるように近付いた。
「あの、あの子許して貰えませんか?」
「⋯⋯ちゃんと店長に話通せよ」
「はい!ありがとうございます」
頭を下げた名前へ、店の事ぁ俺達には関係ねえしな、と土方は胸から煙草を取り出すと一本口に咥えた。
「あの子供、家まで送ってくが⋯それいくらだ」
「え?」
「さっきの菓子だろ」
煙草に火をつける前に名前へ尋ねた土方。名前は百円ちょっとの小さな駄菓子だと伝えると、ポケットから僅かに多い額の小銭を取り出すと名前へ差し出した。
「釣りが余ってんだ、丁度いいからあいつに渡してやってくれ」
土方の言葉を静かに聞いていた名前はその素直じゃない言葉と優しさのある行動に頬を緩めると、優しくその手を押し戻した。
「駄目ですよ!実は私このお菓子大好きで、丁度買おうと思ってたんです」
だからあの子送るの少し待っててください、そう伝えた名前は足早にコンビニの中へ戻っていく。その後ろ姿を見つめながら煙草に火をつけた土方は頭をボリボリと搔いた。
数分程経った頃に戻ってきた名前の手には先程のお菓子。
そのまま子供の目の前でまた目線を合わせるようにしゃがんだ名前は、そのお菓子を子供に手渡した。
「これ多く買っちゃったから一つあげるね」
「え⋯いいの?」
「うん!今度また買いに来てね」
優しく子供の頭を撫でた名前は、立ち上がると今度は土方の元へと再び近付いた。
「これ、銘柄合ってますか?」
そう言い土方へ煙草を一箱差し出した名前。
「お菓子のお釣りが余ってたので」
そう言い微笑む名前をしばらく見つめ、口の端を僅かに持ち上げ短く息を吐いた土方はその煙草を受け取って胸ポケットへとしまいこんだ。
「丁度買おうと思ってた」
「それなら良かったです」
助かる、そう一言告げた土方は子供を家まで送るらしく先程の子供と共に車に乗り込むともう一人の隊員と共にその場を離れていった。
たまに店に来る男前な人。土方のことをそう思っていた名前は、加えて素直じゃないけど優しさのある不器用な人、というイメージをこの一件で抱くようになった。
それから数日後、名前がレジに立っていると店を訪れた土方。
「いらっしゃいませ」
「あれ頼む」
「はい!今日は忙しいんですか?」
いつも煙草を買うだけ。たった数分程度のやり取りでも以前より会話が増えたことで互いのことを少しずつ知り始めた二人。
土方の意外な一面を見た名前はあの一件以来、以前よりも土方のことを思い浮かべる時間が増えている事にまだ気付いてはいないらしい。
2022.9.5
名前は棚に商品を並べながら、最近気が付くと頭に浮かべてしまう人物のことを考えていた。
真面目そうな髪色で真選組の隊服に身を包んだ人物。
名前がその人物、土方十四郎を初めて見かけたのは最近働き始めたバイト先であるこのコンビニ。少し瞳孔が開き気味ではあるものの整った顔立ちを素直にかっこいいと思っていた。
次に見かけたのはファミレス。お昼を食べようと立ち寄ると少し離れた席でありえない量のマヨネーズをかけてご飯を食べていたのを目撃してしまった時は少し驚いたが、ソースが隠れるほど大量の粉チーズで覆われている自分の手元にあるパスタと似たようなものかと思った時もあった。
それからもバイトの日に何度か見かけたこともあったが、合計がいくらでお釣りがいくらだという言葉をかける以外では話したことも無く、たまに店に来る男前な人、として名前は他の客よりも印象が強く残る土方をよく考えるようになっていた。
「店長いるか」
名前は商品の陳列も終わりレジで仕事にあたっていると、先程まで考えていた土方が店に入って来るなり名前の元へ真っ直ぐに足を運び開口一番そう尋ねた。
「今日はまだですけど、どうかしましたか?」
「ちょっと外出れるか」
店長の不在を教えて何かあるか尋ねると一言告げ外に出た土方。もう一人の店員へ少し離れると伝えて土方と同じように外に出た名前は、目の前の光景に「え」と小さく声を漏らした。
土方が向かった先には真選組の隊服を着た男と、俯きながら泣いている子供。男は子供の腕を掴みながら何やら土方と話をしていた。
話を終えた土方は子供の腕を引きながら立ち尽くしてる名前に近付いた。
「おら、自分で言うんだろ」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら俯いた子供は小さく頷くと名前へ一歩足を踏み出して、ポケットから小さなお菓子を取り出した。
「⋯ごめ、ごめんなさい⋯⋯」
「これ⋯」
ただただ謝り続ける子供に目線を合わせるようにしゃがんだ名前は、手のひらに乗っている小さなお菓子を手に取ると子供と交互に目線を動かして全てを理解した。
「返してくれてありがとう」
万引きを理解した段階で店の中へ連れて行き親へ連絡をする事だって、今すぐ店長に連絡を取る事だって、勿論目の前にいる真選組に突き出すことだって出来た名前だったが、子供へ優しく声をかけると手を後ろへ流すように頭を優しく撫でた。
「どうしても欲しかったの?」
「⋯うん」
「そっかそっか、これ美味しいもんね」
私もこれすごい好きなんだよ。怒ることもせず優しく語りかける名前の様子に少しずつ顔を上げた子供と、その二人の様子を黙って見つめる土方。
「でもこれはお金を出して買わないと食べられないの」
「⋯ごめんなさい」
「だから次はしちゃだめだよ、私と約束しよ!」
はい!と小指を立てる形で手を前に出した名前をきょとんと見つめる子供は、目元の涙を乱暴に袖でぬぐうと自身の小さな小指を絡めた。
「ちょっと待っててね」
子供にそう告げた名前は姿勢を戻すと、土方との僅かな距離を埋めるように近付いた。
「あの、あの子許して貰えませんか?」
「⋯⋯ちゃんと店長に話通せよ」
「はい!ありがとうございます」
頭を下げた名前へ、店の事ぁ俺達には関係ねえしな、と土方は胸から煙草を取り出すと一本口に咥えた。
「あの子供、家まで送ってくが⋯それいくらだ」
「え?」
「さっきの菓子だろ」
煙草に火をつける前に名前へ尋ねた土方。名前は百円ちょっとの小さな駄菓子だと伝えると、ポケットから僅かに多い額の小銭を取り出すと名前へ差し出した。
「釣りが余ってんだ、丁度いいからあいつに渡してやってくれ」
土方の言葉を静かに聞いていた名前はその素直じゃない言葉と優しさのある行動に頬を緩めると、優しくその手を押し戻した。
「駄目ですよ!実は私このお菓子大好きで、丁度買おうと思ってたんです」
だからあの子送るの少し待っててください、そう伝えた名前は足早にコンビニの中へ戻っていく。その後ろ姿を見つめながら煙草に火をつけた土方は頭をボリボリと搔いた。
数分程経った頃に戻ってきた名前の手には先程のお菓子。
そのまま子供の目の前でまた目線を合わせるようにしゃがんだ名前は、そのお菓子を子供に手渡した。
「これ多く買っちゃったから一つあげるね」
「え⋯いいの?」
「うん!今度また買いに来てね」
優しく子供の頭を撫でた名前は、立ち上がると今度は土方の元へと再び近付いた。
「これ、銘柄合ってますか?」
そう言い土方へ煙草を一箱差し出した名前。
「お菓子のお釣りが余ってたので」
そう言い微笑む名前をしばらく見つめ、口の端を僅かに持ち上げ短く息を吐いた土方はその煙草を受け取って胸ポケットへとしまいこんだ。
「丁度買おうと思ってた」
「それなら良かったです」
助かる、そう一言告げた土方は子供を家まで送るらしく先程の子供と共に車に乗り込むともう一人の隊員と共にその場を離れていった。
たまに店に来る男前な人。土方のことをそう思っていた名前は、加えて素直じゃないけど優しさのある不器用な人、というイメージをこの一件で抱くようになった。
それから数日後、名前がレジに立っていると店を訪れた土方。
「いらっしゃいませ」
「あれ頼む」
「はい!今日は忙しいんですか?」
いつも煙草を買うだけ。たった数分程度のやり取りでも以前より会話が増えたことで互いのことを少しずつ知り始めた二人。
土方の意外な一面を見た名前はあの一件以来、以前よりも土方のことを思い浮かべる時間が増えている事にまだ気付いてはいないらしい。
2022.9.5
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