花弁
名前設定
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高杉よりも背が高い子
資料室に向かうと、背伸びをしたまた子と遭遇した名前。
「名前先輩、あれ取れるっスか?」
「えっと⋯これ?それ?」
「それっス!」
高い位置にある棚からものを取ってあげた名前に対して、助かるっス!と笑顔を向けるまた子につられて名前も笑顔になる。
女性では珍しく高身長な名前は同性からこういった頼まれ事をされる時が少なくなかったが、けして嫌という訳ではなくむしろ頼られることを嬉しく思っていた。
「どこだったかな⋯」
部屋を後にするまた子を見送り、目的の資料を探しながら棚の上から下までを探し続けている名前。
「あったあった、これだ」
見やすく整頓された棚のおかげでそこまで時間をかけることなく資料を見つけた名前は、少し離れたところに設けられている机まで行くのが面倒に思い、下段側にあった資料の入る箱を取り出すとその場にしゃがみながら資料に目を通していた。
すると、静かな足音と共に名前の隣に近寄ってきた人物が一人。
「何してる」
落ち着いた声で名前へ声をかけたのは、名前が属する鬼兵隊の総督である高杉だった。
「え?⋯あっ、お疲れ様です!」
隣に来た人物が高杉だとわかるなり姿勢を正すことはなくともはっきりとした声で労いの言葉をかけた名前は「近々商談をする相手方をもう少し知りたくて⋯」と手に持つ資料を軽く揺らしながら隣にいる高杉を見上げた。
「あぁ、万斉のあれか」
「そうですね!私は付き添うだけですけど、覚えられることは覚えておこうかなと」
そう言いながら既に目線は手元の資料に戻っており、そこに記された内容を頭に入れるため資料に目を走らせていた名前。
いつもは目線を軽く上に向けなければ顔を見ることの出来ない位置にいる名前が、目の前でしゃがみ随分と低い位置にいる。
高杉はなにか資料を手に取ることも無く、懐に手を忍ばせ棚に寄りかかりながらそのあまり見かけることの無い光景を見つめていた。
「⋯晋助さんは何かお探しですか?手伝いましょうか?」
特に何をするでもなく隣から見つめられ続けていた名前は少し疑問に思いつつ高杉に言葉をかけるも、気にするなと言われてしまった。
「気難しい人達なんですかね相手方」
資料を読み進めるほど名前が思っていたほどすんなり話が運ぶような人物像ではなく、隣にいる高杉へと声をかけた。
「万斉に任せておけばいい」
うまい飯でも食ってろ、といつも通りの声音で返事をする高杉。
高杉が万斉へどれほどの信頼を寄せているか名前は勿論知っていた。だからこそ力になれずとも任されたからには失礼がないようにと資料室へ足を運びいろいろと調べていたのだ。
だが今、食べているだけでいいと言われたような気がした名前はますます深まる謎が気になり再び高杉へ声をかけた。
「⋯なんでわたしなんですか?」
「何がだ」
「付き添いです、万斉さんだけでもいいのになって」
随分と薄くなった手元の資料を膝の上に置いて目線を高杉へと移した名前は答えを待った。
「花がある方がいい事もある」
さほど間をあけることなく返された言葉は名前が思っていたようなものではなかったが「女性がいた方が⋯ですか?」と曖昧に尋ねると、笑顔と共に肯定を意味する短い返事が返ってくるだけだった。
それから暫くして資料を読み終わり丁寧に棚へ箱を戻した名前は立ち上がると、腕を上へ伸ばし凝った体を解した。
「ためになったか」
結局名前がそうするまで居続けた高杉は、いつものようにほんの少し上にある目を見つめながら声をかけた。
「はい、いろいろ知れ⋯て⋯⋯」
伸ばした腕を下げながら高杉を見つめる名前の語尾はしりすぼみになっていった。
目をぱちぱちとさせながら目線は高杉の目元より僅かに上、頭の上へと向けている名前は躊躇いながらゆっくりと目線の先へ手を伸ばした。
「⋯あの、少し失礼しますね」
触れていいかの許可を尋ねるより断りを入れ行動するようになったのは誰の教えか。高杉の頭の上へ伸ばした手を引くと、指先には小さな薄桃色の花弁が摘まれていた。
怪訝な顔でその花弁を見つめる高杉と、少し楽しそうな表情を浮かべながら微笑んでいる名前。
「どこでつけてきたんですか⋯って、あの!」
名前が声をかけている途中で既に資料室の出入口へと向かい歩き出していた高杉は名前の声に足を止めることはなく、振り返らずにそのまま資料室を後にした。
残された名前は指先にある小さく綺麗な花弁を服の内側にあるポケットにしまいながら、いい事あるといいな、と先程の高杉の言葉を思い出しながら言葉の意味は違えど願掛けのような気持ちを抱いていた。
22.8.17
リクエスト〝高杉より背が高い女の子とのほのぼの〟
高杉相手のほのぼのがあまりに難しくて苦戦しました。苦戦した割に全然ほのぼのとしてないかもしれませんが、初めて商談へ付き添う子を見守っている描写などを入れてみました。ありがとうございました!
資料室に向かうと、背伸びをしたまた子と遭遇した名前。
「名前先輩、あれ取れるっスか?」
「えっと⋯これ?それ?」
「それっス!」
高い位置にある棚からものを取ってあげた名前に対して、助かるっス!と笑顔を向けるまた子につられて名前も笑顔になる。
女性では珍しく高身長な名前は同性からこういった頼まれ事をされる時が少なくなかったが、けして嫌という訳ではなくむしろ頼られることを嬉しく思っていた。
「どこだったかな⋯」
部屋を後にするまた子を見送り、目的の資料を探しながら棚の上から下までを探し続けている名前。
「あったあった、これだ」
見やすく整頓された棚のおかげでそこまで時間をかけることなく資料を見つけた名前は、少し離れたところに設けられている机まで行くのが面倒に思い、下段側にあった資料の入る箱を取り出すとその場にしゃがみながら資料に目を通していた。
すると、静かな足音と共に名前の隣に近寄ってきた人物が一人。
「何してる」
落ち着いた声で名前へ声をかけたのは、名前が属する鬼兵隊の総督である高杉だった。
「え?⋯あっ、お疲れ様です!」
隣に来た人物が高杉だとわかるなり姿勢を正すことはなくともはっきりとした声で労いの言葉をかけた名前は「近々商談をする相手方をもう少し知りたくて⋯」と手に持つ資料を軽く揺らしながら隣にいる高杉を見上げた。
「あぁ、万斉のあれか」
「そうですね!私は付き添うだけですけど、覚えられることは覚えておこうかなと」
そう言いながら既に目線は手元の資料に戻っており、そこに記された内容を頭に入れるため資料に目を走らせていた名前。
いつもは目線を軽く上に向けなければ顔を見ることの出来ない位置にいる名前が、目の前でしゃがみ随分と低い位置にいる。
高杉はなにか資料を手に取ることも無く、懐に手を忍ばせ棚に寄りかかりながらそのあまり見かけることの無い光景を見つめていた。
「⋯晋助さんは何かお探しですか?手伝いましょうか?」
特に何をするでもなく隣から見つめられ続けていた名前は少し疑問に思いつつ高杉に言葉をかけるも、気にするなと言われてしまった。
「気難しい人達なんですかね相手方」
資料を読み進めるほど名前が思っていたほどすんなり話が運ぶような人物像ではなく、隣にいる高杉へと声をかけた。
「万斉に任せておけばいい」
うまい飯でも食ってろ、といつも通りの声音で返事をする高杉。
高杉が万斉へどれほどの信頼を寄せているか名前は勿論知っていた。だからこそ力になれずとも任されたからには失礼がないようにと資料室へ足を運びいろいろと調べていたのだ。
だが今、食べているだけでいいと言われたような気がした名前はますます深まる謎が気になり再び高杉へ声をかけた。
「⋯なんでわたしなんですか?」
「何がだ」
「付き添いです、万斉さんだけでもいいのになって」
随分と薄くなった手元の資料を膝の上に置いて目線を高杉へと移した名前は答えを待った。
「花がある方がいい事もある」
さほど間をあけることなく返された言葉は名前が思っていたようなものではなかったが「女性がいた方が⋯ですか?」と曖昧に尋ねると、笑顔と共に肯定を意味する短い返事が返ってくるだけだった。
それから暫くして資料を読み終わり丁寧に棚へ箱を戻した名前は立ち上がると、腕を上へ伸ばし凝った体を解した。
「ためになったか」
結局名前がそうするまで居続けた高杉は、いつものようにほんの少し上にある目を見つめながら声をかけた。
「はい、いろいろ知れ⋯て⋯⋯」
伸ばした腕を下げながら高杉を見つめる名前の語尾はしりすぼみになっていった。
目をぱちぱちとさせながら目線は高杉の目元より僅かに上、頭の上へと向けている名前は躊躇いながらゆっくりと目線の先へ手を伸ばした。
「⋯あの、少し失礼しますね」
触れていいかの許可を尋ねるより断りを入れ行動するようになったのは誰の教えか。高杉の頭の上へ伸ばした手を引くと、指先には小さな薄桃色の花弁が摘まれていた。
怪訝な顔でその花弁を見つめる高杉と、少し楽しそうな表情を浮かべながら微笑んでいる名前。
「どこでつけてきたんですか⋯って、あの!」
名前が声をかけている途中で既に資料室の出入口へと向かい歩き出していた高杉は名前の声に足を止めることはなく、振り返らずにそのまま資料室を後にした。
残された名前は指先にある小さく綺麗な花弁を服の内側にあるポケットにしまいながら、いい事あるといいな、と先程の高杉の言葉を思い出しながら言葉の意味は違えど願掛けのような気持ちを抱いていた。
22.8.17
リクエスト〝高杉より背が高い女の子とのほのぼの〟
高杉相手のほのぼのがあまりに難しくて苦戦しました。苦戦した割に全然ほのぼのとしてないかもしれませんが、初めて商談へ付き添う子を見守っている描写などを入れてみました。ありがとうございました!
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