彼は誰時の菫空
名前設定
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銀時と名前は幼馴染か兄妹か、そういった立ち位置に一番近い関係性だった。
松陽が銀時と出会った日に同じく出会い保護をしたのが名前。
母親だったであろう亡骸の傍で泣きじゃくっていた幼過ぎる名前を見かけた松陽は、荒れた無法の地へと子供を残して立ち去るような鬼ではなかった。
まるで兄妹のように育った二つの背は、いつしか四つに増えていた。
「なんで銀時に勝てないの!」
「いやー○○に負ける気だけはしねぇわ」
剣道をしている時に限らず、二人は常に賑やかで兄弟喧嘩のようなやり取りを繰り返していた。
「なら一緒に練習しよう、そうすればいずれ銀時にも勝てるぞ」
「小太郎はやだ!ヅラだもん!やだ!」
「おーおー口が悪ぃな、誰に似たんだかな?ヅラ」
「明らかにお前だろ銀時!それにヅラじゃな」
「うるせえなヅラ、ほらヅラが嫌なら俺としようぜ」
「晋助は銀時に勝てないじゃん!私は銀時に勝ちたいの!」
「⋯⋯」
「⋯だってよ晋助クン」
高杉を横目に肩を震わせ必死に笑いをこらえる銀時を遠慮なく竹刀で突き飛ばした高杉は、そのまま銀時へと走り出し二人はいつものように勝負を始めていた。
喧嘩ばかりのように見えても、銀時は名前を妹のように親しんでいたし、高杉や桂も同様に接していた。
バシバシと竹刀を交える二人を眺めながら頬を膨らませて少し寂しそうな顔をしている名前。
「名前はなぜ銀時に勝ちたいのだ?」
その顔に気付いた桂は名前の頭に軽く手を乗せ、最近やたらと銀時と比べたがる名前に疑問を投げかけた。
桂は名前の頭へ置いた手を軽く動かしながら撫でていると、それを嬉しく思った名前は軽く目を細め桂を見上げながら口を開いた。
「だって銀時つよいんだもん」
ほら、と指を向ける先では僅かではあるが確かに銀時の方が高杉を押しているようだった。
だが桂にはその答えがよくわからず、少し意地悪に再度言葉を投げかけた。
「銀時だけではない、高杉や俺だって名前よりは強いぞ」
撫でる手は止めずに名前を見つめると、うん、と奥の二人から目を離さずに言葉を続けた名前。
「銀時も晋助も小太郎も、みんな強いの知ってるよ。でもみんなより強い子がいたら怪我しちゃうでしょ?だから私も強くなるんだ」
みんなを守れるように。最後は笑顔で桂を見上げながら言葉を口にした名前を見て、桂の手は自然と動きを止めていた。
「⋯そうか、名前は優しいのだな」
少なくとも自分達よりも幼い女の子が強くなりたいと目指すのは何か違うような気がしたし、きっとそのような場面になったとしても自分を含めあの二人が名前に頑張らせるようなことはさせる訳が無いだろうと。
桂は、きっと自分達が名前を大切に思っているように名前も自分達のことを大切に思ってくれているとわかり嬉しさで胸が満たされた。
桂と名前の二人が眺めていた勝負は、結局そのまま銀時が勝ちを納めた。