彼は誰時の菫空
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「⋯っぶね」
ぶつかった男、このかぶき町で万事屋を営む坂田銀時はその衝撃で体制を崩すも近場にあった電柱に左手を伸ばしなんとかその体勢を保つと、目の前にいる自分がぶつかってしまった女性の腕へ右手を伸ばした。
「大丈夫か?悪ぃな急にぶつかっちまって」
間一髪ではあったが、女性が倒れることは無かった。
それでも自分の不注意でぶつかってしまい、その上危うく怪我を負わせてしまうところだった銀時は申し訳なさから言葉をかけた。
「あっいえ、大丈⋯」
女性の返事を聞きながら視線の先にある女性のものであろう鞄を拾い上げていると、女性の声が急に途切れた。
もしかしてどこか痛めていたか?と思って女性を見つめた銀時。
そして今度は、自分の手から鞄が離れそのまま小さな音を立てて地面に転がった。
***
「銀時⋯?」
「⋯お前⋯⋯」
どれだけの時間が過ぎてしまったかはわからないが、互いの視線を交わしながらほぼ同時に発せられた声は見事に重なった。
互いに何年も顔を見ていなかった名前と銀時。
行き先や生死に関しても何一つわからないまま二人は各々の時間を過ごしてきた。
最後に互いを見たのはいくつの時だったか。少なくとも今目の前にいる人物を見て言葉を失うくらいの年月は経っていた。
それでも互いの容姿は何年経とうと忘れることはなく、互いの目の前にいる人物はほぼ間違いなく自分が直感的に思い浮かべた人物であると、名前と銀時は確信していた。
「おま、は?え?」
重なった声に続く言葉は無く、ただ互いを見つめ続けていた二人であったが、次に言葉を継いだのは銀時だった。
「お前まじで名前か?あの名前か?いや俺の知ってる名前は一人しかいねぇんだけど」
お前まじで名前なの?と執拗く名前を確認する銀時。
「⋯びっくりした本当、銀時だ⋯」
「いや聞いてんだけど!?」
銀時の問に答える事無く、というより驚きで答えるほどの余裕がなかった名前は目を見開き銀時を見つめていたかと思えば、右手を軽く丸め口元にあてながら今度はその目を細めて微笑んだ。
「本当、元気そうでよかった、銀時」
銀時は、昔と何も変わっていないその表情を見て、この女は名前本人であると改めて確信した。
「⋯まぁ俺だし?お前が思ってるより図太いからな」
なんとなく目を合わせる事が出来ず、足元に落ちた名前の鞄を拾い上げ汚れなどないか確認をし再度名前へ渡した銀時。
名前は短い感謝の言葉と共に鞄を受け取ると、そういえば、と向かいの細道を指差しながら言葉を続けた。
「よかったの?あの猫」
「⋯よくねえなァアアア!!!」
銀時は名前にぶつかったそもそもの元凶である猫が過ぎ去った道を眺めながら声を荒らげた。
元は万事屋へ依頼された猫探しだった。
やっと見つけた、と追いかけていた途中で名前という別の捜しものを見つけてしまい猫のことなどすっかり忘れていた銀時。
「うわーまじかよ最悪だわ」
その場にしゃがみながら頭を抱えていた。
「大事なの?一緒に探す?私時間あるし」
「んやいいわあんなクソ猫、そのうちまた見つかんだろ」
銀時を心配し声をかける名前に、どうせ大した報酬でもなかったしなと、小言を言えば、なんの事かわからないといった表情で銀時を見つめる名前。
今自分はペット探しから浮気調査まで何でもやっている万事屋をしている事を名前へ伝えた銀時。
だがそれを聞いた名前は「⋯それって尚更探さないとじゃないの?!」と焦りの表情を浮かべ始めた。
が、それよりも優先すべき事があるだろと頭を搔きながら名前を見つめた銀時は名前へ言葉を続けた。
「んな事よりお前もっとあんだろ、今までどこにいたとかそういうやつ、普通あんだろ」
まず何から聞くべきなのか。
少なくとも笑顔で元気でやれよなんて言葉をかけて別れた訳では無い。
それどころか最悪もう生きていないかもしれないとさえ思っていた、そんな名前が何年も経って突然目の前に現れたのだ。
落ち着きを装いつつも内心は酷く混乱しつつある銀時の言葉に対し
「えっと⋯」
名前もまた、何から話すべきかわからなかった。
曖昧に微笑みながらウーンと考えてみても、どれだけ手短に話そうと立ち話で済むような話ではないことだけは確かだった名前。
その上今日中に終わらせようとしていた買い物もしてなければ、ついでに済まそうと思っていた朝食もまだ食べていない。
「⋯どこか行かない?お腹空いちゃった」
眉尻を下げ申し訳なさそうに微笑む名前。
それを見て、ああやっぱり何も変わってねえな、と安心した銀時は名前のおでこを軽く小突き「パフェ奢れよ、今まで心配かけた分な」と言いながら近くのファミレスへ向かい歩き出した。
ぶつかった男、このかぶき町で万事屋を営む坂田銀時はその衝撃で体制を崩すも近場にあった電柱に左手を伸ばしなんとかその体勢を保つと、目の前にいる自分がぶつかってしまった女性の腕へ右手を伸ばした。
「大丈夫か?悪ぃな急にぶつかっちまって」
間一髪ではあったが、女性が倒れることは無かった。
それでも自分の不注意でぶつかってしまい、その上危うく怪我を負わせてしまうところだった銀時は申し訳なさから言葉をかけた。
「あっいえ、大丈⋯」
女性の返事を聞きながら視線の先にある女性のものであろう鞄を拾い上げていると、女性の声が急に途切れた。
もしかしてどこか痛めていたか?と思って女性を見つめた銀時。
そして今度は、自分の手から鞄が離れそのまま小さな音を立てて地面に転がった。
***
「銀時⋯?」
「⋯お前⋯⋯」
どれだけの時間が過ぎてしまったかはわからないが、互いの視線を交わしながらほぼ同時に発せられた声は見事に重なった。
互いに何年も顔を見ていなかった名前と銀時。
行き先や生死に関しても何一つわからないまま二人は各々の時間を過ごしてきた。
最後に互いを見たのはいくつの時だったか。少なくとも今目の前にいる人物を見て言葉を失うくらいの年月は経っていた。
それでも互いの容姿は何年経とうと忘れることはなく、互いの目の前にいる人物はほぼ間違いなく自分が直感的に思い浮かべた人物であると、名前と銀時は確信していた。
「おま、は?え?」
重なった声に続く言葉は無く、ただ互いを見つめ続けていた二人であったが、次に言葉を継いだのは銀時だった。
「お前まじで名前か?あの名前か?いや俺の知ってる名前は一人しかいねぇんだけど」
お前まじで名前なの?と執拗く名前を確認する銀時。
「⋯びっくりした本当、銀時だ⋯」
「いや聞いてんだけど!?」
銀時の問に答える事無く、というより驚きで答えるほどの余裕がなかった名前は目を見開き銀時を見つめていたかと思えば、右手を軽く丸め口元にあてながら今度はその目を細めて微笑んだ。
「本当、元気そうでよかった、銀時」
銀時は、昔と何も変わっていないその表情を見て、この女は名前本人であると改めて確信した。
「⋯まぁ俺だし?お前が思ってるより図太いからな」
なんとなく目を合わせる事が出来ず、足元に落ちた名前の鞄を拾い上げ汚れなどないか確認をし再度名前へ渡した銀時。
名前は短い感謝の言葉と共に鞄を受け取ると、そういえば、と向かいの細道を指差しながら言葉を続けた。
「よかったの?あの猫」
「⋯よくねえなァアアア!!!」
銀時は名前にぶつかったそもそもの元凶である猫が過ぎ去った道を眺めながら声を荒らげた。
元は万事屋へ依頼された猫探しだった。
やっと見つけた、と追いかけていた途中で名前という別の捜しものを見つけてしまい猫のことなどすっかり忘れていた銀時。
「うわーまじかよ最悪だわ」
その場にしゃがみながら頭を抱えていた。
「大事なの?一緒に探す?私時間あるし」
「んやいいわあんなクソ猫、そのうちまた見つかんだろ」
銀時を心配し声をかける名前に、どうせ大した報酬でもなかったしなと、小言を言えば、なんの事かわからないといった表情で銀時を見つめる名前。
今自分はペット探しから浮気調査まで何でもやっている万事屋をしている事を名前へ伝えた銀時。
だがそれを聞いた名前は「⋯それって尚更探さないとじゃないの?!」と焦りの表情を浮かべ始めた。
が、それよりも優先すべき事があるだろと頭を搔きながら名前を見つめた銀時は名前へ言葉を続けた。
「んな事よりお前もっとあんだろ、今までどこにいたとかそういうやつ、普通あんだろ」
まず何から聞くべきなのか。
少なくとも笑顔で元気でやれよなんて言葉をかけて別れた訳では無い。
それどころか最悪もう生きていないかもしれないとさえ思っていた、そんな名前が何年も経って突然目の前に現れたのだ。
落ち着きを装いつつも内心は酷く混乱しつつある銀時の言葉に対し
「えっと⋯」
名前もまた、何から話すべきかわからなかった。
曖昧に微笑みながらウーンと考えてみても、どれだけ手短に話そうと立ち話で済むような話ではないことだけは確かだった名前。
その上今日中に終わらせようとしていた買い物もしてなければ、ついでに済まそうと思っていた朝食もまだ食べていない。
「⋯どこか行かない?お腹空いちゃった」
眉尻を下げ申し訳なさそうに微笑む名前。
それを見て、ああやっぱり何も変わってねえな、と安心した銀時は名前のおでこを軽く小突き「パフェ奢れよ、今まで心配かけた分な」と言いながら近くのファミレスへ向かい歩き出した。