彼は誰時の菫空
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「銀時大丈夫?もしもーし」
傍にしゃがんで軽く肩を揺らしてみると「ちょ、マジ無理⋯」と今にも死にそうな顔でこちらを向く銀時。
私も来ると聞いているはずなのに、忘れていたのか一瞬驚いた顔をした銀時はまたすぐに顔を背けてしまった。
いい大人なのに⋯と少し呆れながら「お弁当持ってきたよ」と伝えると、一瞬ぴくりと肩を揺らしたけれど私に背を向けたまま動こうとしない銀時。
「もう⋯」
一度銀時から離れて、近くで同じように横になっていた男性へと近付いて声をかけてみた。
「⋯あの、大丈夫ですか?お水とか飲まれます?」
「⋯⋯いや大丈夫だ」
頭を抑えている男性は体を支えながら上体を起こそうとしてた。
手を貸しながら男性の顔を覗いた私と、同じく私を見た男性が発した「あっ」という声が綺麗に重なった。
「⋯お前なんでここに」
「土方さんこそ⋯」
まさかこんなところで再会すると思っていなくて、顔を見つめたまま動けずにいると「お前いつからそいつと知り合いなわけ?」とつい先程まで死にそうだった銀時の声が隣から聞こえた。
見ると、腰を上げた銀時は頭に手を当てて怠そうな表情をしながらすぐ隣まで来てて、土方さんを支えている私の腕に手を伸ばすとやんわりとした力で私の手を剥がした。
「⋯この前ちょっと迷惑かけちゃって」
「っそ、ちょっとあっちにいる神楽連れてきてくんね?弁当って新八んとこだろ、先行ってるわ」
新八くんに伝えたように説明すると、するりと腕から手を離した銀時はボリボリと頭を搔きながらため息混じりに言葉を返して、そのまま新八くん達のいる方へのそのそ歩いてってしまった。
銀時があっちと指さした方を見つめると確かに神楽ちゃんがいて、まだ殴り合いのようなことを続けているようだった。
「あいつらまだやってんのかよ」
同じくその方向を見た土方さんから呆れたような疲れたような声が聞こえてきて、どうやら随分とあの状態のままらしい。
「⋯ちょっと行ってきます、その⋯飲み過ぎには気をつけてくださいね」
まだ僅かに顔を歪めている土方さんへ声をかけてから立ち上がると「いや俺も行く、用ができた」と遅れて立ち上がった土方さんと一緒に神楽ちゃんの元へと向かった。
神楽ちゃんへ近付くにつれてその異様な光景が徐々に明らかになり、自然と顔が引き攣る。
「⋯えっと⋯神楽ちゃん⋯⋯あの⋯」
明らかに私は、というか普通の人は立ち入らない方が身のためかなとわかるほどの雰囲気だった。
もちろん私の声は届いていないのか、二人は依然として殴り交しの攻防戦を続けてる。
「おい総悟いい加減にしろ!お前もだチャイナ娘!」
土方さんは声を張ると近くに落ちていた玩具のハンマーを手に取り、総悟と呼ばれた男性の頭めがけて思い切り振り下ろした。
けれど男性が身をかわしたことで頭に当たることはなく勢いよく空を切った。
「なんですかィ土方さん、今いいとこだったってのに」
「なんだヨお前偉そうに⋯って、名前!」
二人とも動きを止めると総悟と呼ばれたまだ幼さの残る整った顔立ちの男性は表情を崩すことなく振り返り、神楽ちゃんは私に気が付くとすぐに駆け寄り抱きついてきた。
「名前ー!会いたかったアル!」
「神楽ちゃん今日も元気だね、お弁当持ってきたよ?新八くんのとこ行こ?」
「弁当!名前のごはん美味しくて好きネ、あの天パと眼鏡より多く食べてやるヨ!」
私の手を取りながら笑顔を向ける神楽ちゃんはそのまま走り出して、私は躓きながらも土方さんへ軽く頭を下げて置いていかれぬようにと足を動かした。
***
「あの女知り合いですか?」
「⋯まあな」
へえ、と興味がなさそうな返答をしつつも神楽に手を引かれながら笑っている名前の横顔を見つめていた沖田。
懐から煙草を取り出し咥えた煙草に火をつけて、離れていく神楽と名前を見つめていた土方はふとあることを思い出し沖田へ問いかけた。
「ところで近藤さんどこだ」