ぱれっと
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時には波に攫われ、時には崖から落ち、時にはナイフを振りかざされ。
「…っ?!」
はっ、と我に帰ればそこは自室の暖かい布団の中。
壁の時計は午前4時を少し過ぎたところだった。
またか。
もう何日続いたか。
奏はここ数日続く悪夢に悩まされていた。
毎日のように夜中や明け方に目を覚まし、その後は眠る事が出来ず、成長期の彼女にとっては寝不足も良いところだった。
また起きちゃった。
そう小さく呟き、再び眠りにつくことを最早諦めきっている彼女は布団を後にした。
「ふぁ〜」
「大きな欠伸だな。」
「どっかのジローみたいだな。」
「どっかのジローって、このまだ半分寝てるジローしかいないじゃない。」
「…へ?なんか言った?」
幼馴染の岳人と亮と慈郎。
テニス部の朝練がない日は4人で登校するのが日課である。
ジローは何時ものように、半分寝た状態で、半分亮に引き摺られながら学校へ向かう。
…そうでもしないとジローはずっと家で寝ているだろう。
「で、実際どうしたんだよ奏。」
「んー、実はさ…」
不思議そうに尋ねる岳人に催され、彼女は毎晩のように怖い夢を見る事、寝不足な事を伝えた。
「ふーん、で大欠伸って訳か。」
「ふーん、じゃないわよー!結構真面目に悩んでるんだから!」
「ごめんて、奏。」
「でもなんで急にそんな悪夢ばっかり…。」
楽観的な岳人に少し頰を膨らませて怒れば、少し困ったような顔で謝罪の言葉が飛んできた。
そこに亮は、もはや自分で歩む事を辞めてしまったジローを先程よりも重そうに引き摺りながら疑問を投げかけてきた。
なんで、と聞かれてもキッカケは思いつかない。
強いて挙げるなら好きだったドラマが最終回を迎えてしまった位だろうか。
「うーん、特に心当たりは…。」
「んー、それじゃどうこう出来る感じじゃねえもんなぁ。」
うーん、と頭を悩ませているうちに、後ろから忍足くんと滝くんがやってきて話は終了。
再び、大きな欠伸をしながら学校へ向かったのだった。
「ねぇ奏〜」
「ん、どうしたの?」
教室に着くなり、未だ眠そうなジローに声をかけられた。
「奏、一限サボろーよ。」
「えっ、何さ突然。」
突然の不良発言にドギマギしていると、彼は半分閉じた瞳でにへらぁと笑みを向けてきた。
「寝不足なんでしょ?一緒に昼寝しようよ〜。」
昼寝という時間でもないが、眠たいのは事実で。
しかも一限は彼女の苦手な英語。
まるで呪文のように唱えられる英文は、彼女を夢の世界へ誘う事間違いなし。
奏は少し考え、どうせ居眠りして怒られる位なら、とSHRが終わってからなら良いとジローに返事をした。
でもきっと、昼寝をしたところで悪夢を見ることに変わりはない。
そんな事を悶々と考えているうちにSHRも終わり、彼女はジローと教室を抜け出したのだ。
「で、どこでサボるの?」
「今日はあったかいC〜…中庭がE〜かな?」
不意に彼に腕を引かれれば中庭の日差しが暖かいベンチまで半ば強制的に連行された。
腰を下ろせば太陽が彼の蜂蜜色の髪の毛をキラキラと照らす。
「安心して寝てEーよ。」
「まぁ、確かにジローといたら快眠そうだけどさ。」
「そうじゃないC〜…」
ジローは奏の横に腰を下ろすと膝の上をポンポンと叩いて手を広げた。
「…へ?」
「おいで〜!何時もしてもらってるから今日は俺の番!」
「膝…枕?」
「うん!」
天真爛漫な笑顔を向けてくる彼に逆らう気も起きず、奏は有り難く膝を借りることにした。
膝の上に寝転べば、クリーニングの終わった衣類の独特な良い匂いがする。
流石クリーニング屋の息子、と無駄な感心をした。
そして何処からともなく香る甘い匂い。
SHRの時に彼が咥えていた新作ポッキーの香りだろうか。
「へへ、おやすみ奏。」
「うん、おやすみジロー。」
目を閉じれば一層強く彼の匂いを感じる。
日差しの暖かさと彼の温もりは、彼女の瞼を重くさせ、直ぐに夢の世界へと連れ去ったーー
夢の世界感は妙なもので、何故か奏は幼い頃の姿でハイキングをしていた。
幼稚舎に上がるもっと前。
その頃お気に入りだった桃色の水筒を肩から掛け、1人山道を歩いている。
「おーい!早くこいよ!」
声の方角に目線をやれば、幼馴染の2人。
亮と岳人だ。
「亮ちゃん!がっくん!待ってて!」
なんだ、彼らと一緒に来ていたのかと彼らの元へ駆け出した瞬間感じる浮遊感。
(ああ、またか。)
瞬時に彼らは視界から消え、何処からか落ちた事を理解した。
何時もならこのまま落ちて、地面に叩きつけられる寸前で目を覚ます。
夢の中でも落ちるのは怖い、彼女は恐怖から身体を強張らせ目を閉じた。
その瞬間だった。
(…あれ?落ちるの、止まった…?)
瞼を開ければ、目の前にはジロー。
彼が腕を引いて引き留めてくれたのだ。
「ほら、言ったっしょ?安心しておやすみって。」
ニカッと笑みを向ける彼に思わず涙が溢れた。
「A〜?!なんでそこで泣いちゃうんだよ!どったの?どっか怪我しちゃった?!」
せっかく助けたのに、と言わんばかりに慌てた様子で心配をしてくるジロー。
「ふふっ、なんだかとっても嬉しくて。」
「なーんだ、良かった!奏は笑顔が一番だC!」
「うん、ありがとうジロー。」
「奏が笑ってくれて嬉Cー!」
気付けば目の前に広がる鮮やかな花達。
少し先では大好きな幼馴染が相変わらず私を呼んでいる。
「奏、行こう!」
「うん!」
ふんわりと香る花の蜜の香りと蜂蜜色に輝く彼の髪に心踊らせ、夢の続きへと歩み始めた。
はちみついろのゆめ
(あ、奏とジロー。)
(随分幸せそうな寝顔だな。)