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部室に着くなり【本日の主役】の襷を謙也に無理矢理つけられて、小春にユウジ特製のバースデーケーキのハットを同じく無理矢理被らされた、名実ともに本日の主役、財前光。
ウザイっすわ、と普段通りに悪態をつくものの、今日の先輩達はいつもの数倍…いや数百倍執念い。
遇らうことができず、誕生日プレゼントと言われ各々からまたもや無理矢理渡された荷物を渋々受け取り両手に抱えると、今度はいきなり荷物共々部室の外に追い出された。
「あとはよろしゅうな!」
白石の声が背中から聞こえたと思えば勢いよく戸を閉める音が続けて響いた。
「は?なんなんや先輩ら…」
誕生日に浮かれる歳でもないと思いつつも、こんな仕打ちを受ける日でもないだろうと腹立たしく思えば、プレゼントで塞がれた視界の先から、可愛らしいリボンが僅かに見えた。
「光くん。」
その声の主は顔を見なくてもわかる…先輩マネージャーの奏だ。
「奏先輩…なんすか。」
「ふふ、光くんモテモテやね。」
「はぁ…」
これをモテモテと称すなら、モテる事は遠慮して、年中モテたいとぼやいている謙也さんに譲ってやりたいものだ。
「大荷物やけど、私からもプレゼント渡してええかな?」
「…ええですよ。」
口ではクールぶっているが、心臓がドクンと大きく脈打っているのがわかる。
一旦先輩達に押し付けられたプレゼントを無造作に鞄に詰め込み、両手の自由を手に入れれば、奏から可愛いリボンのついたプレゼントを手渡された。
「…どうもっす。」
「ねぇ光くん、今日私ね、蔵達に背中押されてるんよ。」
「なんのことすか?」
少し頬を染めた奏は、財前の手をとると歩き出した。
「先輩どこ行くんすか。」
「……デート。」
「…は?」
「せやから!デート!」
デート?
奏先輩と俺がデート?
願ったり叶ったりやけどどないして?
すっかり顔を赤く染めた奏は、目を背けて、事情を語り出した。
「プレゼント、悩んでたら蔵と謙也にデートしてこい言われてん…。美味しい甘味処調べたから白玉善哉食べ行こうと思ってるんやけど…あかんかった?」
「へぇ…」
いつもウザイ先輩だが、偶には気が利いたこともしてくれるんだと少し見直した。
しかし、奏への気持ちが白石はともかく謙也にバレていたことは妙に腹立たしかった。
「なぁ、それって渋々?」
「そ、そないなこと…ないけど…。」
「ふーん。」
思わずニヤけ顔になる。
まぁそう言うことなら、甘んじて受け入れようと奏の手を握れば奏の顔は更に紅潮した。
「じゃ、プレゼントは奏先輩っちゅーことすね。」
「え、えっと…」
「それなら遠慮なく頂きますけど…あかんの?」
「あかんく、ない、です。」
顔を覗き込めば奏はキャパオーバーなのか視線は泳ぎ、上手く喋れていない様子だった。
かわい、そう耳元で呟けば完全勝利。
「ひ、光くん、ちちち近すぎ、やて…」
「誕生日プレゼントなんやろ?だったら我慢しといてください。」
「う、うう…光くんのイジワル…。」
「後でいくらでも文句は聞きますんで、今は善哉に案内してもらってええですか?」
「はいはい、わかりましたよ!」
真っ赤な顔で手を引く彼女が愛おしく、口元がだらしなくニヤけるのを必死に堪えていたせいか、暫く襷とハットを取り忘れていた事にも気づかなかった。
「光くん…誕生日おめでとう。」
「おおきに、奏先輩。」
これは、これまでの人生で最高の誕生日になる予感────
HAPPY BIRTHDAY HIKARU
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