お礼画面

※長編固定夢主

ユーリ・ローウェルが、怒ってる。
何故怒っているか、私には分からない。
今日は、いつものように朝食を食べ、目的の街まで移動していた。途中何度か戦闘をして、目的の街ではないが食料や物資の補充のため街に寄り、そして今現在。野宿している。
せっかく街に寄ったんだから宿に泊まろうとカロル・カペルが言ったが、どこも満室。なら、諦めて今日は野宿して、明日近くにある温泉郷ユウマンジュに行こうとなったのだ。
そこまではいい。
私も異論はなかった。目的の街まで急ぐようなものでもない。近くにユウマンジュがあるなら、女性陣も久しぶりに温泉に浸かりたいと言っていたし。
夕食を食べ終え片付けをして、皆が明日を楽しみに眠っていく。

「見張りは僕が、」

「ありがとう。だが、昨日もフレン・シーフォはしていただろう。今日は休みなさい」

「ですが…」

フレン・シーフォは生真面目だからなぁ。
多分引き下がらないだろう。

「ならば、眠る前に周囲を見回って欲しい。何かあってからでは遅いからな」

「了解しました…!」

そう言って、フレン・シーフォはペコッと頭を下げてどこか嬉しそうに周囲の見回りに行ってくれた。そんなフレン・シーフォの背中を見送り、私は焚き火に目を向けた。

つもりだった。

焚き火を挟んだ反対側にユーリ・ローウェルがジトリとした目で私を見ていた。その目と目が合ったのだ。目が合うとユーリ・ローウェルは眉間にしわを寄せて、怒っていると無言で訴えてきた。
何故、怒っているのだろう。
分からなくて首を傾げそうになった。心当たりがあるわけではない。

「ユーリ・ローウェル。見張りは私がやるから眠っても良いぞ」

「………………、フレンに甘すぎ」

………………は?

「あと、自分だってここ最近ずっと見回りとかしてるだろ」

確かに、野宿の際は見回りや見張り番を率先して買って出ていた。大体、エステリーゼ様やリタ・モルディオは一軍として戦っている分疲労も多いだろう。ジュディスやユーリ・ローウェルも同じ。
レイヴンやパティ・フルール、カロル・カペル、私は二軍だが、レイヴンや私以外野宿に慣れているわけでもないし。レイヴンは早々に眠ってしまったし。そうなると、私と野営経験のあるフレン・シーフォが引き受けるのが必然だろう。

なのに、なんで怒る?
それに……。

「フレン・シーフォを甘やかしていないぞ?」

「生真面目なフレンが引き下がらないって分かってて見回りを頼んだんだろ。しかも寝る前に」

「ここ最近、見張り番をしていたからな。いくら二軍とはいえすぐに動けるようにしておかないと」

寝不足で戦えなかったなんて洒落にもならないからな。
そう言葉を続けると、ユーリ・ローウェルはアンタは?と言った。

私?

「アンタだって二軍。でもすぐに動けるようにしておかないとマズイんじゃないのか」

「私は皆と違って、長く野宿生活していた経験があるからな。平気だ」

「…………なるほどな…」

「……?」

「なら、言葉を変えてやる」

甘えろ。
ユーリ・ローウェルは私を指さしながらそう言った。こら、ユーリ・ローウェル。人を指さしてはいけないと教わらなかったのか。全く……。って、ユーリ・ローウェルは今なんて言った?甘えろ?

「甘えてるだろう?フレン・シーフォに見回りをお願いしているのだから」

「あんなの、フレンが満足するように言っただけだろ。そうじゃない」

ユーリ・ローウェルの言いたいことが、よく分からない…。

「大体、フレンだけじゃない。皆に甘すぎだ」

「えぇ…?」

「食事の時も手伝ったり、戦闘の時も庇ったり、見張り番を買って出たり、雑用だって率先してこなすし…」

「それのどこが悪いんだ…?」

「負担が全部アンタにいってるって言ってんだ」

イライラした様子でユーリ・ローウェルが言う。
別に、イヤイヤやってるわけでもないし、率先して自分が負担に感じない程度の負担なら、全然私は…。

「心配なんだろ、ユーリ」

見回りから帰ってきたのかフレン・シーフォが優しくそう言った。心配…?誰を…?

「フレン…」

「すいません。ユーリは、いつも言葉が足りないから…」

「おい」

「ユーリは貴女様が色んな事を受け入れて、負担を請け負って、潰れてしまうんじゃないかと心配しているんですよ」

…なるほど、それでか。
納得した。

「ユーリ・ローウェル、心配してくれていたのか」

「…、まぁ……」

「ありがとう」

そう言うとユーリ・ローウェルは少し目を見開いて、次には別に…と言った。

「フレン・シーフォも、教えてくれてありがとう」

「いえ」

そう言ってフレン・シーフォは少し休みますと言葉を続けた。

「あぁ、おやすみ」

そう言って、フレン・シーフォを見送る。
そしてまた前を向けば、ジトッとした目で私を見るユーリ・ローウェル。それを見ると、今度は少し笑みが溢れそうになった。

「ユーリ・ローウェル、先に寝てくれ。交代になったら起こす」

「………一人で朝まで見張りすんなよ」

「分かった」

そう言ってユーリ・ローウェルも納得したのか眠りに就いた。
パチパチと焚き火の燃える音が、暗闇に響き、そんな暗闇を照らしていた。

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