バクテン!!
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高瀬君と付き合い始めてかれこれ数ヶ月。
友人やその頃付き合い始めたクラスメイトは手を繋いだとか、抱き締められたとか、キスしたとか色々言ってるけど、私達は何もない。ビックリするぐらい何もない。
まぁ、私もあんまり変化のある生活は苦手だから今のままで全く平気なんだけど。
でも。
でも、正直言うと好奇心からなのかもしれないけど、少しぐらい変化が来てほしいと思ってもないわけでもない。
高瀬君と一緒に帰るのも陸奥くんだし、クラスが一緒じゃないからなかなか一緒にもいられない。部活の時も少し話すことはあるけど、その程度だ。
大きな変化がないことへの安心感もあるけど、私は高瀬君に興味を持ってもらえてないのではという寂しさもある。
「先輩」
「月雪君、どうしたの?」
学校は休みだけど、今日も今日とて部活。
ドリンクを準備し終えて、選手達が休憩している間、私達マネージャーは監督や選手とコミュニケーションを取ったり、演技を見直す選手がいれば手伝ったり、必要なものを取り行くため走ったりと忙しい。そんな中、一年レギュラーの月雪君が声を掛けてきた。
手を掴まれ、月雪君は私を引っ張って開け放たれた外へ続く扉に向かっていく。どうやらさっきまで降っていた雨は止んだらしい、綺麗な青空が見える。
「虹!」
そして、青空に浮かぶ綺麗な虹が見えた。
そんな無邪気な月雪君と、美しい虹にふっと笑みが漏れた。月雪君ってこういう天真爛漫というか無邪気というか、そういうところあるからなぁ。
「虹だね、綺麗だねぇ」
空なんて、久しぶりに見た…。
昔、虹の根本には宝物が埋まってるとかそんな噂話があったなぁ。まぁ、光の屈折なわけだからそんな話はただの嘘なんだけど。
「元気出た?」
「え、」
「元気、無さそうだったから」
月雪君はそう言いながら私の顔を覗き込んでくる。それに私は驚いた。月雪君って、なんというか人を振り回すの得意だからこうやって人に気を遣うのは不得意だと思っていた。
「気にかけてくれたの…?ありがとうねぇ」
私もまだまだだなぁ。
選手にこうやって気を使わせてしまうなんて…。
そう思いながら私は月雪君の頭を撫でると、月雪君はへへっと笑った。
「キャプテンとか、みんな気にしてたから」
キャプテン、その言葉に身体がほんの少し反応したけど月雪君には気付かれなかった。
その貴方のことで私は落ち込んでるんだけどなぁ…、と思ったけど何も言わなかった。
重荷にはなりたくなかったから。
「そっかぁ、じゃあ皆を撫で撫でしないとね」
「えー、僕だけでいいじゃん」
そう言って頬を膨らます月雪君に私は小さく笑った。
そんな様子を、高瀬君が睨むように見ていたなんてその時の私は知らなかった。
部活を終え、私は物品の片付けや部誌をようやく書き終えた。そして、ふと昼間見た虹を思い出し体育館の扉から外を見た。勿論もう虹は消えていて、夕焼け空ももう紫色に変わっていて、もうすぐ夜の帳が下りる頃なのだろう。
写真、撮ればよかったなぁ…。
なんて思いながらちょっと俯いて、仕方ないよねと自分に言い聞かせた。
「何やってんだ」
………、驚いていた。
「高瀬君」
確かにさっき監督に呼ばれてたから、戻ってきたのかな。確かに体育館の隅に誰かの荷物があるとは思ってたけど。そういえば陸奥君、部室にいるのかな。多分一緒に帰るんだろうから。
「陸奥君呼んでこようか?」
隣にやってきた高瀬君にそう言って離れようとすると、腕を掴まれた。
「陸奥なら帰った」
「え、」
なんで、と言いかけてしまった。だって、いつもは陸奥君と一緒に帰ってるのに…。
「お前と、居たかったから」
直球な、その言葉に胸がトクンッと高鳴って、胸の中で何かが膨らんだ。私は何と返したら正解なのか分からなくて、念を押すようにここにいろと言う高瀬君の言葉に頷いて、さっきみたいに外を眺めた。私の様子を見た高瀬君は手を離してくれた。
言葉は何もない。沈黙。
でも、言葉を急かされるような沈黙ではなかった。
「あ、星」
暗くなる空を見上げるのも久しぶりで、一等輝く星を見つけたらつい、声が出てしまった。あぁ、綺麗だなぁ。よく見れば小さく輝く星もちらほら見える。
「結構星が見えるんだね、」
高瀬君、とそう言葉が続くはずだった。
私が高瀬君を見上げると、高瀬君は優しく柔らかい笑みを浮かべながら私を見ていた。その表情は流石の私でも、私のことが好きだと言っているのが分かった。それが恥ずかしくて顔が熱くなって、視線を下に降ろしてしまった。早く強く鐘打つ胸に落ち着けと必死に言うが、ちっとも落ち着くことはなくて。
すると、フッと高瀬君が、笑った。
その声に私は見上げると、大きな掌が私の頬に触れてきた。
「林檎みたいに真っ赤で、可愛いな」
その大きな手に、触れられて、嬉しいやら恥ずかしいやら。いろいろな感情が混ざるけど、でも、最終的には愛おしさが勝って、恐る恐るその手に触れてみた。大きくて、力強いその手に触れて欲しいと、何度願っただろうか。
高瀬君はそんな私の様子を見て、ゴクンっと生唾を飲み込んでいた。
