バクテン!!
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「あ、築館君。おかえり」
近所の神社でバイトのため箒で掃除していると、その神社の息子で知り合いの築館君が帰ってきた。
中学は一緒だったけど高校は違う私達。何でも築館君は話だと、男子新体操部を友人と作って寮生活をしているらしい。
だから、こうやって実家であるここに帰ってくるのは珍しい。
築館君はいつものように笑うと、ただいまと言った。
「今日は一人?」
前は七ヶ浜君と女川君と一緒に来てたけど、二人の姿は見当たらない。私はゴミをまとめると、そう聞いた。築館君は困ったように笑った。
「今日は監督が一回家に帰るようにって言ったから。二人も家に帰ったんじゃないかな」
「そっかぁ」
そう言って私は箒と塵取りとまとめたゴミを持って、片付けるために歩き出した。築館君が隣にやってきて一緒に歩く。
「監督さんが言わないと、築館君達家に帰らなそうだもんね」
そう笑いかけると、築館君はそんなことないさと言った。
「それにしても、」
「うん?」
そう言って築館君を見上げる。
ついこの間まで中学生だった筈なのに。同じだけの時間が経過してるのに、私はあまり成長しないのに、築館君は身長も高くなって、顔も幼さがとれて男性って感じになっていた。
モテそうだなぁ。
「築館君、モテるでしょ?」
「えぇ?」
「私の見立てだと一人や二人いてもおかしくはないと思ってるんだけど」
「一人や二人って…。二人いたら浮気だろ?」
「まぁ、そうだね」
「……、君は俺をどういう目で見てるんだよ」
「言葉の例えだよ」
そう言って、ゴミ捨て場所に行くとゴミを置いた。
よし、あとは〜っと…。
「それなら、君もだろ…」
「ん?何か言った?」
「いや。巫女服バイトも馴れてきたんだなって」
そう、私は今巫女服である。
この巫女服に憧れてここでバイトしていると言っても過言ではない。可愛いんだよね、巫女服って。あと身が引き締まる思いがする。
「季節で何が行事があると臨時で雇うことはあっても、こうやって臨時じゃなく雇ってもらえてホントありがたいよ」
「君は昔から、巫女服に憧れてたからな」
そうだねぇ。
昔、おみくじを引きに来たときに対応してくれた巫女さんがあまりに印象的だったからこの人みたいになりたいなって思ったのが強いなぁ。
「あ、神主さんに築館君が返ってきたこと伝えなきゃ。築館君荷物持っていくよ?」
「自分で持っていくから大丈夫」
「分かった」
そう言って、私は神主さんである築館君のお父さんに築館君が帰ってきたことを伝えに行った。
そして、バイトあがってもいいと言われ着替えて帰路につくために神社を出ようとすると後ろから声をかけられた。
「築館君、どうしたの?」
「送っていくよ。もう暗いし」
「いいよ。いつもの道だし」
「ダメ。何かあってからじゃ遅いんだからな」
そう言われると、私は反論出来ず。お言葉に甘えて送ってもらうことにした。
東北のいくつかの学校と合同練習をしたこと、とても強いと有名なシロ高という学校から刺激を得たこと、普段の生活の事…。
たくさん、たくさん話をした。
そこから分かったことは、築館君は本当に新体操が好きなんだなぁということ。
いいなぁ。
私も、なんかそうやって一生懸命になれることがあればいいのに。
なんて思ったけど、今更無くて…。だからこうやってバイトに勤しんでいるわけで。
自分がちょっと、ほんのちょっとだけ惨めに感じた。
大体、築館君は男子新体操部をしたくて今の学校に行ったんだもんね。私は近いからって選んだ理由とは全然違う。なにかのために一生懸命になれるのは良いことだね、うん。
「あーあ」
「どうした?」
「……、築館君が大好きな男子新体操、見てみたいなぁと思ってさー」
そうすればきっと、築館君が好きな男子新体操の魅力とか分かるかもなのにね、なんて言いながら歩く。
けど、隣を見たら築館君が居なかった。歩を止めて振り返ると、築館君が止まってる。
「どしたの?」
そう声をかける。
何だか、暗くてはっきり見えないが築館君が情けない顔をしている気がした。
「俺たち、まだ部員三人でさ。大会とか出れないんだ」
「……?うん」
「来年」
ずんずんと築館君が大股で距離を詰めてくる。それに私はつい、たじろいでしまったが手を掴まれてしまって後ろに下がれなかった。
「来年、絶対部員を四人にして、大会に出るから。そしたら俺の演技、見に来てくれないか…?!」
そのあまりの勢いに私はキョトンとしてしまったが、築館君の必死そうな顔に「うん」と言って頷いていた。その答えを聞いた築館君はふにゃりと笑うと約束な、と言った。
そして、来年。
約束通り部員が四人になった築館君が大会に出て、私がその演技に感動することになるのを、築館君が負けた試合で締まらないけど…と言って気持ちを伝えてくれるのを、今の私はまだ知らない。
