バクテン!!
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「月雪」
「………」
「月雪」
「………」
前を歩く月雪は機嫌が悪いのか先程から私の声を無視している。
久しぶりに会った月雪は相変わらず自由で、爛漫で。まさに自由奔放という言葉が具現化したような人間だ。
アオ高とシロ高との合宿。
私と美里が通うアオ高と月雪が通うシロ高との合宿。七ヶ浜も築館も女川も特に何も言わなかったから伝えていなかったが。美里と私、そして月雪は中学の時に会っていた。正確には私が去年美里と月雪の試合を観たり、アオ高の試合を見に来ていたときに知り合った。その時は私服だったから私がアオ高の人間だと二人は知らなかったようだ。美里も入学し、男子新体操部に入部して会ってから驚いていた。
そして連休を使ってシロ高との合宿。
「やぁ、マネージャーさん」
「久しぶりだな」
二、三年生が顔合わせしていると陸奥洋二郎と高瀬亨が声をかけてきた。
「あぁ、久しぶりだな。二人共」
そう答えると、二人は相変わらずだなと言った。
そういえば、シロ高の人数が足りないな…。いくら数えても五人しかいない。
「ところで、シロ高はこれで全員か…?一人足りないように見えるが…」
そう聞くと二人の顔が少し強張った。
………、何かあるなこれは。
と思ったが特にツッコまずに話をしていると、双葉の声が聞こえてきた。七ヶ浜の話だと双葉は今日倒立の練習をしていたらしいが。
声がした方を見ると、ジャージ姿の双葉と隣を歩く月雪の姿。なるほど、月雪はシロ高に行ったのか。まぁ、月雪は実力はあったからな。
なんて思ってると向こうも私に気づいたのか、目が溢れてしまいそうなほど大きく見開いた。
ねぇ、お姉さん。
もし、一緒の学校になったら……。
美里は知らない、私と月雪との秘密。
去年。月雪が中学で私が高校二年のときの話。
月雪と過ごした時間は短かったが、それでも月雪は私にとても懐いてくれた。
告白紛いのことをしてくるぐらいに。
美里が席を外している間に、月雪はいつもの飄々とした感じでこう言った。
「もし、一緒の学校になったらもっと一緒にいようね」
本人はどういうつもりで言ったのかは分からない。
だが、私は一緒の学校になれたらな、とはぐらかした。
そして、美里の話から月雪はシロ高に進学し一緒になることはなかった。
大きく目を見開いた月雪の顔が歪む。
そこへ監督達がやってきて、大学の体育館で演技をした。その後、私や栗駒ちゃんは家に帰る予定だったが、私は月雪に腕を掴まれ寮への道のりを二人だけで歩くことになった。他のメンバーは月雪を止めようとしたが、私がそれを止めた。
そして冒頭へと至る。
「月雪」
「………」
ようやく月雪は足を止めた。
「酷いよ」
月雪の口からはそんな言葉が溢れた。
「あぁ」
「一緒になれないって分かってたくせに…!」
「あぁ」
「期待持たせるような事言って…!!」
月雪が振り返る。目には大粒の涙が溜まっていた。
「僕はッ、本気だったのに…ッ」
「あぁ」
知ってる。
月雪は興味の持った、好きな人間にしか懐かない。興味のない人間は記憶の片隅にも置いてもらえない。そんな月雪に興味を持ってもらえた私。
月雪は唇を噛み締めていた。
「一緒にッ、いたかったのに!!」
「……あぁ」
すまない、そう言って月雪の頭をぽんぽんと撫でてやると悔しいのか、悲しいのか表情を歪め、月雪は私に抱きついてきた。月雪より少し背の高い私は、月雪を抱き締めることしかできなかった。
