バクテン!!
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アオ高男子新体操部の食事は部員達が当番制で作っている。しかし、金曜日の夕食のみマネージャーであるメイデンがリクエストした料理を作ってくれる時がある。もちろん材料はメイデン持ち。それは悪いと皆が言ったがメイデンは気にしないで良いと言った。
それはメイデンの親戚達は野菜農家や畜産などに携わっている人が多く、よく食べきれないから食べてくれと送ってくるからである。もちろんメイデンの家でもありがたく使わせてもらっているが食べきれないことも多い。その食べきれないものを使って料理をさせてほしいと言っている事を志田監督に説明すると納得してくれた。
そして今日は金曜日。
メイデンに確認を取ったら今日は作りに行けるということで、部員達は大喜びである。
今日、リクエストしたのは亘理である。
事前にリクエストしたのは、
「唐揚げ?」
「うす」
みんな大好き鶏の唐揚げ。
亘理の事だから餃子と言ってくるかと思っていたが、ラーメン屋でもつまみとかサイドメニューとかで鶏の唐揚げあるからたまに食べたくなるもんね、とメイデンは内心納得した。
朝、寮に寄って下味を漬けた大きなボールにたくさん入った鶏肉を冷蔵庫に入れ学校に行った。
そして、授業と部活を終えてメイデンはひと足早く寮に行く。
しっかり味の付いた肉に片栗粉をまぶし、フライパンに油を注いで熱する。しばらくして箸を入れるとプクプクと小さな泡が出てきた。
「よしっ」
気合を入れるために声を出した。
何せ大きなボールに味付けした肉の量は本当に多い。以前違う料理の際に量を控えめにしたら量が足りなくなるという事態になった。男子高校生の胃袋を甘く舐めてはいけない。見た目よりも量が問題だ。
ジュッ、と音を立てて油に鶏肉が次々沈められる。ジュワジュワと細い気泡を立てながら鶏肉が揚げられていく。
メイデンも、もちろん唐揚げは大好きだ。こうやって料理をさせてもらうようになって、美味しいと言ってもらえるようになって、部活の仲間に喜んでもらえてなお嬉しい。メイデンは知らぬ間に笑みを浮かべながら鶏肉を揚げていた。
そして、鶏肉の山があともう少しで無くなり、香りが充満し始めた頃玄関から「ただいま!」という声が聞こえてきた。
「うおっ!唐揚げの匂いだ!」
「今回のリクエストは亘理だったな」
「うすっ」
「今日はガッツリ食いたかったんだよな!」
「お腹減ったね、美里君」
「あぁ」
バタバタと足音を立てながら皆が自分たちの部屋に行く。玄関にまで匂いがいってたんだとメイデンは思った。そして元気な足音を聞きながらメイデンはふふっと笑い、揚がり終えた唐揚げを二度揚げするためにガスの火を強めた。
先程のジュワジュワとした音とは違い、カラカラといった音を立てて鶏肉が二度揚げされていく。表面がカリッとしたら次々上げていく。
「お疲れ様です」
背後から声。
振り返ると私服に着替え、エプロンをつけた美里がいた。
「あ、美里君。おかえり」
「手伝います」
美里は返事もそこそこ手を洗いながら手伝うと言ってくれた。メイデンは結婚したらいいお婿さんになりそうだなぁ、なんて親戚のおばさんみたいなことを考えながら、じゃあと言って揚げている間に作ったボールにはいったサラダを指さした。
「じゃあサラダを1人前ずつ、盛ってもらっても良いかな」
「分かりました」
………、あれ?
美里君って確かに寮生活してるけど週末家に返るって言ってなかったっけ?
隣でサラダを綺麗に盛り付けている美里をちらっと見たが、プライベートなことかもしれないと思いメイデンは聞かなかった。
「お、美里。早いな」
七ヶ浜の声。
振り返れば、私服に着替えた皆が台所の入り口で立っていた。
「ご飯もう炊けてるよ。唐揚げもあともうすぐで出来るからテーブル拭いてお皿とか出してね」
そう言うと分かったと七ヶ浜が率先して準備を始める。
「悪いなメイデン」
「気にしないで築館君、好きでやってることなんだから」
そう笑いかけると築館も笑って布巾を手に取った。
「なあ、メイデン。次はリクエスト俺だからな」
「次は女川君かぁ。頑張るね」
「美里君。運ぶの手伝うよ」
「あぁ」
テーブルを拭いて、そこにお茶碗や皿、箸などが置かれ、美里が盛り付けたサラダガールズ運ばれていく。
「あ、七ヶ浜君。笹かまサラダのトッピングで使っちゃった」
「なにッ!サラダに!?なるほど…、単体で食べるだけじゃなくてそういう使い方もあるか…」
そんな七ヶ浜にみんなが笑う。
笑い声。
笑い声。
すると、ぐぅ…と誰かの腹の虫が鳴いた。
「あー、なんか匂いだけでよだれ止まんないし、油で揚げてる音まで腹減ってくる…」
そう言って女川は椅子に座るとグダリとテーブルに突っ伏した。
「亘理君、揚がった唐揚げテーブルに持って行ってくれる?」
「了解っす!」
「待ってました!」
「現金だなぁ女川は」
すると玄関の方から扉が開く音が聞こえた。顔を出すと栗駒と志田監督が居た。メイデンがご飯を作る日のみ二人はこうやって寮にやってきてご飯を食べていくのだ。
皆、揃ったわけだ。
「うーん…」
あ、そうだ。
メイデンは、揚げ終えた唐揚げの三分の一を別にとりまた調理を開始した。いくら箸休めがあったところでただ唐揚げを食べ続けるだけでは飽きるだろう。そう思いメイデンは酢や醤油をボールに入れていき、何かをトントンと刻む。
後ろでは部員達が志田監督や栗駒に声をかけていた。
「おや、今日は唐揚げなんだね」
「外まで匂いが来てた。美味しそう」
「流石メイデンちゃん、料理上手だね」
そう言って二人も席につく。
だがメイデンがなかなか席につかない。
「メイデン?どうした?」
「あ、ごめんね。これ作ってて…」
そう言って小さなボールを見せてくる。中には白くて具だくさんのソース、タルタルソースが。そして、先程のボールに入れて作った甘酸っぱい香りのする液体にくぐらせた唐揚げの上に、タルタルソースを乗せる。部員達からはおぉー!!と声が上がった。
「唐揚げだけだと飽きちゃうかなって思って。こっちはむね肉だったからチキン南蛮作ってたの」
「流石っす!姐さん!」
「じゃあ、頂こうか」
志田監督の言葉に部員達は、はいと言って席についていただきますと言った。
唐揚げを箸でとり口に運ぶ。
カリッ。
サクッ。
唐揚げを頬張るとそんな音が聞こえてきた。そして、じゅわっと溢れる肉汁。ホクホクと中は熱く、溢れる肉汁も熱くてやけどしてしまいそうだが、食べる手は止まらない。
そしてご飯がすすむ。
そんな様子を見てメイデンは嬉しそうに笑うと唐揚げを頬張った。
うん、美味しい。
あまり時間がなかったから塩味と醤油味しか作れなかったけど、味もちゃんとついてるし良かった。チキン南蛮もちゃんと酢と砂糖の割合丁度良いし、冷蔵庫にあったらっきょうをタルタルソースに使ってみたけどとても合う。
自分の中で味の評価をしながらメイデンは良かったと思った。そして何よりこうやってみんなでご飯を食べるのが楽しくて、嬉しい。
あれだけ揚げた唐揚げが一つ残らず皆の胃袋に入ったのを確認したメイデンは、やっぱり男子高校生の胃袋はすごいと思うのであった。
洗い物を隣で手伝ってくれている美里はメイデンにご馳走様でしたと言った。
「いえいえ、お粗末様でした。それにありがとう、洗い物手伝ってくれて。双葉君もありがとう」
志田監督は栗駒と一緒に先程帰っていった。双葉はテーブルを拭いておりニ、三年生は今、風呂に入ったところだ。
「他の人が作ってくれる料理って、美味しいんですね」
「え?」
「今度、リクエストさせてください」
美里は手元から目を離さずそう言った。
それにメイデンはキョトンとしたがふっと笑った。
「あまりレベル高いのはだめだよ?」
「分かりました」
そして、次回からメイデンが作る料理を美里が必ず手伝う姿が目撃されるようになったそうな。
