バクテン!!
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フラレた。
いや、直接フラレたわけじゃないけど。
好きな人がいた。真っ直ぐで、優しくて、真摯で。
そんな彼に私は惹かれていた。マネージャーをしながら軽口を言い合えるような仲になっていて、私にもチャンスあるんじゃないかな、なんてバカな事を考えていた。
そしてそれは、突如とした事で自分が愚かで、馬鹿だったということを思い知らされた。
それは、部活前。つまり、清掃時間のこと。掃除当番じゃない人は部活に行ったり、下校したりしている時間。私は清掃当番で、最後の仕上げにゴミを運んでいるところだった。
ちょっと部活前に準備をしたいから近道をしていこうなんて思って近道をして、角を曲がろうとしたら、声がした。
「すまん」
高瀬君の声だった。
それに驚いて足が止まる。恐る恐る少し角から顔を覗かせると、高瀬君と可愛らしい女子生徒が二人でいた。慌てて顔を引っ込めた。
心臓が、激しく鐘を叩く。血の気が引いているのが分かった。高瀬君、告白されてる。え、でも謝ってるってことは断ってるって事だよね。
なんて思い、女子生徒には悪いがほっと一息吐いていた。
「今は新体操に集中したい。恋愛はする気はない」
キッパリとした高瀬君の言葉。ドスンッと胸に高瀬君の言葉が突き刺さって、頭をガツンと殴られた気分だった。恋愛する気はないという事は、私が告白しても同じだろう。
つまり、私のこの気持ちは蓋をして無かったことにしていくしかないんだ。
鼻の奥が熱くなって、目の前が少し歪んだ。
告白もせず、フラレた。
その事実が悲しかった。
そんなことがあった日。部活も終わって記録を書いていると、陸奥君が手伝うよと言って一緒に残ってくれた。そんな疲れてるのに悪いよ、と言ったけど女子を一人で帰せないよ、と言われ記録を書くのを手伝って貰ってから一緒に帰ることになった。
副部長とあって陸奥君とも結構話す仲だ。そんな彼は記録も一段落してあとやる事はー…と頭の中で整理していた時、こう言った。
「僕じゃ、ダメかな?」
「え、」
何の事かと思った。
視線を向ける。
陸奥君はいつもの笑みを浮かべながら今度は私と視線が合ったのを確認すると、優しく笑いながらもう一度言った。
「僕じゃ、ダメかな?」
フラレた事が、バレた?
というか、高瀬君を好きだって思ってた事がバレてた…?
それを思うと内心血の気が引いたが、違うと自分に言い聞かせ何が?と言うと陸奥君はふっと鼻で笑った。
「とぼけなくていいよ。高瀬が好きだったんでしょう?」
ドクンっと心臓が跳ねた。
「君の今日の状態からして何かあったなぁとは思ってた。高瀬からもさっき告白されて今は新体操に集中したいから断ったって言ってたから」
「陸奥君、」
「その事聞いたんじゃない?」
そんなにいつもと態度が違っていただろうか?
私はそんなにいつもと違っていただろうか?
そんな事より、
「高瀬君は、」
恥ずかしいのと、
悲しいのと、
全部混ざってどんな顔をしているのか自分では分からないけど、酷い顔をしていたに違いない。
「気付いてた…?」
私のその言葉に陸奥君はキュッと口元を引き締めた。まるで、何かを言いかけてそれを思いとどまったような…。
「高瀬は気付いてないよ。…心配はしてたけど」
「…そ、う……」
ほっと肩を落として安堵した。
良かったバレていなくて。
「…いつから気付いてたの…?」
「いつからだったかな…。もう、忘れたよ…」
そう言って陸奥君は私に手を伸ばしてくると、頬を撫でた。
「僕は、君が好きだ」
先程の最初の言葉から、何となくそんなではないかとは思っていたけど、いざ言葉にされると顔が熱くなった。でも、瞼の裏にはまだ高瀬君がいた。忘れられない恋心、早く蓋をしなくちゃいけないのに。
「傷心のところ申し訳ないけど」
「陸奥君」
「ん?」
「忘れさせて、くれる…?」
好きな人がいた。真っ直ぐで、優しくて、真摯で。
そんな彼に私は惹かれていた。
そんな彼を、彼への恋心を、想いを…。
「……」
陸奥君は何も言わず立ち上がって私に近付いてくると、優しく抱き締めてくれた。ボロボロとあの時は少ししか流せなかった涙がまるで決壊したように溢れて、溢れた。
私は、涙で汚れてしまうことを謝っていると、陸奥君はそれぐらい高瀬を思ってたんでしょ、これぐらい受け止めるよと言ってギュッと抱き締めてくれた。
そして一緒に帰っている時に私は陸奥君にお礼を言うと、陸奥君は手を繋いでくれた。
実は入部当初から陸奥君は私が好きだったことをこの時の私はまだ知らない。
