バクテン!!
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今日も無事に授業が終わったなぁなんて思いながら下校のため、靴を履き替えて生徒玄関を出ると後ろから「おーい」と声をかけられた。振り返ると、月雪君と幼馴染みの美里君がこちらに向かって歩いてきているところだった。
「今帰るとこ?」
月雪君と美里君はゆっくりと私に歩み寄って来ながらそう問いかけてくる。私はうんと頷いた。今はテスト準備期間で部活とかはお休みの期間。まぁ、部活に入っていない私にはあまり関係ないけどね。そういえば最近転校してきた月雪君は美里君に懐いた様子。……、美里君はあまり嬉しくない様子だけど。
「ねぇ、一緒に勉強しない?」
「しない」
「えー、みさぽんのケチー」
「ケチじゃない」
そう言いながら美里君は私を追い越していく。月雪君は「むー…」と頬を膨らませながら納得していないみたい。そんな様子を見ながら私は苦笑するしかない。
美里君、教えるの上手なのに勿体ない…。
ぼんやりとそんな事を考えていると「じゃあ、」と月雪君が声を弾ませながら言った。
「君はどうする?」
「え」
月雪君は美里君に懐いてる。だからこうやって私に話しかけるのも私が美里君の幼馴染みだからとか思っていたけど。そんなに声を弾ませながら聞いてくるような、そんな仲の良い関係ではないと思っていたけど。でもまぁ、月雪君ってパーソナルスペースが他の人とちょっと違うというか、悪い言い方をすると他人のテリトリーに容赦なく入っていくような、そんな人だからなぁ。
私は頬を掻きながら、困ったように笑った。
「私は美里君みたいに教えるの、上手じゃないからなぁ」
「良いんだよ別に、いっしょに勉強したいだけだから」
そう言いながら月雪君は笑う。多分、月雪君は友達と勉強をし合ったり、教え合うのを望んでいるというより"友達と勉強し合う雰囲気を味わいたい"というのが本音なんだろうなぁ。まぁ、教えるのはあまり上手じゃないけど、途中で月雪君が飽きたと言って中断する事になって困るほど勉強が出来ないわけでもないし…。
「良い、」
「ダメだ」
良いよ、そう返事をしようとしたら戻ってきたのか美里君が私の腕を掴んでピシャッとそう言った。それには月雪君も納得いかないのか「えー!」と声を上げた。
「何でみさぽんが決めるのー!?」
「真白」
美里君の声のトーンが、いつもと違った。
いつもより低くて、声色が固くて、まるで脅しているようにも感じた。
「ダメだ」
そう念を押すように言って、美里君は私の腕を引きながら歩き出してしまった。
「み、美里君…!」
「…………」
「月雪君…!またね…!!」
ずんずんと歩いていってしまう美里君を制止することが出来なかった。私は慌てて振り返って月雪君にそう言った。月雪君の顔は、笑っているのに、陰がかかっていた。
少し、怖かった。
「またね」
まるで、悪いことを考えていて、美里君に断られたけど、今の状態を楽しんでいるようにも、私には見えた。
月雪君が見えなくなってしばらく歩いたけど、美里君は手を離してくれない。ずんずんと足の歩調も変わらない。でも、私には、まるで月雪君から少しでも遠くへ、少しでも早く逃げているようにも感じた。
「美里君」
声をかけるが、美里君は足を止めてくれない。そろそろ美里君の歩調に足が追い付いていけなくなりそうだ。
「美里君…!」
今度はちょっと強めに呼んでみた。美里君にようやく声が届いたのか足を止めてくれた。でも、私の腕は離してくれないし、こっちも見てくれない。それが、少し寂しかった。
「悪い…」
そう言って美里君は手を放して、ゆっくりと私の方を向いた。悲しそうな、寂しそうな表情。
「大丈夫だよ」
「…………、」
何か言いたげに美里君は私を見るけど、言葉にならず、視線は少し俯いた。
「美里君…?」
「真白の前で、」
私と視線を合わせず、美里君は少し絞り出すような声で言葉を紡ぐ。
「あんまり無防備になるな」
月雪君の前であんまり無防備になるな?
……、私ってそんなに心配されるほど無防備だった…?
「う、うん…。ごめん…」
大丈夫だよ、と言いたかったけど、美里君の表情が何だか怒っているようにも見えていつのまにか謝っていた。美里君はハッと我に帰って「悪い…」と言った。
「真白は…、お前に興味があるんだ」
「私に?」
「俺の、幼馴染みだから」
何だか、美里君は幼馴染みという言葉をあまり言いたくなさげに言った。
あー…、やっぱりそうだよね。
私もそんな気がしてた。
そう言って美里君に笑いかけると美里君は私の表情を見て何だかホッとしたように見えた。
「ところで、月雪君って教科を一緒に勉強しようって言ってたんだろう…」
そう言うと美里君の表情が強張った。言いにくそうなそんな感じ。これは、美里君、何か知ってるな…。
でもまぁ、聞かない方が良さそう…。
「ねぇ、美里君。今回の英語の範囲で教えてほしいことあるんだけど」
「あ、あぁ…」
私は知らない。
私と合流する前に月雪君と美里君が私をめぐって牽制し合っていたなんて。
