バクテン!!
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私は今、現在の状態を飲み込めずにいた。
今さっき、いつも髪を束ねているゴムが切れてしまった。もう随分と長く使っていた奴で今日辺り新しいものを買いにいこうかと思っていたのに。別に先生達が厳しい事を言うわけではないけど。
やっぱりいつも結んでいる髪を下ろしていると落ち着かないわけで…。
困ったなぁ。購買に髪ゴムなんて売ってたかなぁ。なんて思っていると、私みたいな陰キャと仲良くしてくれてる陽キャの権化みたいなクラスメイトである女川君と目があった。
「あれ、どしたの?イメチェン?」
「女川君…、髪ゴムの予備持ってないかな…?ゴムが切れちゃって…」
「あー、ちょっと待ってな…」
そう言って女川君は自分の席に行って探しにいってくれた。女川君は陽キャだけど、分け隔てなく誰とでも仲良くなれる凄い人だ。女子にも人気だけど本人曰く「まーちょん最高!」らしいので、女子で恋愛感情を抱いてる子は居ないようだ。かくいう私も"私と仲良くしてくれる陽キャの男の子"としか見てない。大体こんな陰キャに好かれて嬉しい男子なんて居ないだろうし。仲の良い女友達は女川君に今、髪ゴム探してもらってる事を伝えるとニヤニヤしながら席に戻っていった。同じ陰キャだけど彼女はコイバナとか好きだからそれを勘づいたのかもしれない。
まぁ、コイバナとか全然関係ないけどね!
「おーい、あったぞー」
そう言いながら女川君は髪ゴムを持ってきてくれた。流石女川君、いつも髪を結んでるだけある!私はお礼を言いながら髪ゴムを受け取るために手を伸ばした、ら。
ひょいっ、と取り上げられた。
…………、え。
私はキョトンとしながら女川君を見上げると、女川君はニコニコ……いや、悪い笑みを浮かべている。え、どゆこと?
「タダではやれないなぁ」
「………、あ。そうだよね、お金、」
そうだよね。お金お金…。
鞄から財布を探そうと手を伸ばすと女川君が違ぁう!と声を上げた。
「髪、俺に結わして」
ニカッと女川君は笑った。
……、それこそ私がお金払わないといけないんじゃないかな…?
「そんな、悪いよ…」
「いいからいいから!ほら、前向いた!」
肩をポンッと叩かれて私は前を向かされる。よく見ると女川君は最初からそのつもりだったらしく櫛まで持ってきてる。
わ、私よりも女子力が高い…!
申し訳ない気持ちと、何だか負けたような気持ちになりながら前を向いていると優しい手つきで女川君は私の髪を梳いてくれる。
髪を弄られるのなんて小さい頃以来だ…。
手入れはまぁまぁしてるけど、あまり気にせず伸ばしていたから小さい頃はよくお母さんにいじってもらってたっけ。今はたまに毛先を揃えるために切るから長すぎないようにしてるけど。
「綺麗な髪だな」
「ありがとう」
女川君が優しく言ってくれる。
丁寧に優しく女川君は髪を梳いて、私が動きやすいようにひとまとめにしてくれる。
「女川君は、髪を束ねるの上手だね」
ごめんね…、陰キャでコミュ障だから会話がなかなか成り立たなくて…!せめて感想だけでもと思いながらそう言うと女川君は「んー?」と言いながらカラカラ笑った。
「そりゃあ女の子の髪だからな、いつもより丁寧に扱ってるつもり」
女の子の髪だから、かぁ。こんな私でも女の子って扱ってくれる辺り紳士だよねぇ。
……、まぁ、築館くんには負けるけど。
「おい、今失礼なこと思っただろ」
「うぐっ」
そう言うと女川君は全く…と言いながらも、声だけではっきりとは分からなかったけど優しく笑っていた、気がする。
ひとまとめにしてくれた髪を女川君は丁寧に髪ゴムで結ってくれた。
………終わったかな?
「おなが、」
「はい、待った。今、おまじない中」
おまじない……?
よく分からなくて、私は取り敢えず動かないようにそのままで待っていると、結われた髪を持ち上げられたような気がした。
「ーーーー」
小さな小さな、消え入るような真面目な声。
「え?」
女川君が何かを言ったような気がして、声を上げるが女川君は誤魔化すように「はい、終わり!」と言った。振り返るといつものニコニコ笑う女川君がいた。
「ほら、オマケ」
そう言って女川君は私の前髪をヘアピンで留めてくれた。
「あ、ありがとう…?」
「どういたしまして」
機嫌が良いのが女川君の声はルンルンだ。
私は知らない。
前を向いていたとき、女川君が愛おしそうな表情で私の髪を扱っていたなんて。
そしておまじないと言いながら私の髪に口付けていたなんて。
あの時女川君が消え入りそうな声で、私に愛を囁いていたなんて。
そして、知らん顔して実はこっそり見ていたクラスメイトが、
彼女の髪いじってないでさっさと告白でも何でもしてくっ付け女川!
そして末長く爆発しろ女川!!
と糖分過多になっていたなんて。
