バクテン!!
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亘理は一心不乱に本日の夕食で使う食材であるキャベツを千切りにしていた。
亘理光太郎はこう見えて彼女がいる。自分でも彼女以外の他の女子から怖がられていると思っているし、それが格好いいと思っていた。任侠映画で出てくる俳優たちのように見た目は格好よくないが、硬派でいることで、男気を抱いていることで、格好いいと思っていた。
そんな自分に可愛い彼女が出来た。
ドラマで出てくるような女優とか任侠映画で出てくるような女優のように凄く可愛いわけでも、とても美人な訳でもない。
しかし、亘理から見れば自分には十分すぎるほど可愛い彼女だ。
部活の関係で私は自分の部屋には彼女を呼べないがそれでも彼女はじゃあうちに来る?と誘ってくれたし、外でのデートでも自分のために一生懸命めかし込んでくる姿は本当に可愛らしい。
そして今日もずっと前から約束していたデート。いつも亘理の趣味を優先して任侠映画を観に行っていたりしていた。それでは彼女が面白くないのではないか、と先日女川よりアドバイスを受けて今日は彼女の行きたいところに行こうと心に決めていていた亘理。しかし、そんな亘理の事なんてお見通しだと言わんばかりに彼女は亘理でも楽しめて、かつ自分も楽しめるような場所にいくことを提案してくれた。自分には勿体ないほど出来た彼女だ。
自分も楽しんでいる横目で、同じく隣で楽しんでいる彼女を見る。端から見ればそこには男気とか、硬派とかそんな難しいものが格好いいなんて思っている男子はおらず年相応の男女が仲睦まじげに楽しんでいる姿で。
そして、楽しい時間を過ごした二人は少しお茶をしようといつも使っている喫茶店に向かっていた。だが、ぽつぽつ…と肌に落ちてくる水滴。見上げれば晴れているのに、雨が降ってきていた。彼女の手をとり、軒先に飛び込んだ。雷もなく、雨の勢いも強くはない。雲行きも怪しくはないが、晴れるか心配そうに亘理は軒先から空を見上げた。二人の間には沈黙が少し流れていた。何か話した方がいいのか、だとしても自分に何か良い話の種があるかどうか…と亘理は悩みながら彼女を見た。
彼女の服は少し濡れていて下着が透けていた。髪も肌も濡れていて、少し俯いている彼女が、とても扇情的だった。まるで、そういった映像を観ている気分になった。無意識の内に亘理はゆっくりと手を伸ばし、彼女に触れる。垂れていた髪をすいっ…と彼女の耳にかける。彼女がこちらを見て「どうしたの?」と言っている気がする。いや、実際に言っているのだろう。でも、亘理の耳には入っていかない。ドクドクと心臓がまるで耳元にあるような気分だった。雨で濡れた彼女の頬を撫でる。擽ったげに笑う彼女の表情は無垢なのに、とても色っぽかった。そして、眼は透けた下着や濡れた髪や肌よりも、柔らかそうな唇に目がいってしまっていた。そして、彼女の頬に手を当てると、いつの間にかスッと顔を近づけていた。
「うおぉぉおぉあぁあぁあああっ!!!」
その時を思い出し、亘理は羞恥のあまり頭を抱えながら奇声を発した。
それに食器を準備していた七ヶ浜や女川、築館は驚いて「どうした?!」と声を上げた。
やらかしてしまった…!自分は大いにやらかしてしまったのだ…!彼女にきッ、キスをしてしまったのだ…!しかも初キス。いや、自分の初キスは別にどうでもいいとして。問題は彼女の許可もとらずにいきなりキスをしてしまったことだ。雰囲気も、場所も全く考慮されてない初キス。
柔らかい唇にもっと触れていたいと思った。惹き付けられるままに貪りたいと思った。だが僅かに理性が戻ってきて少し顔を離して彼女を見ると。彼女は顔を真っ赤にして震えていた。
ヤバイ。やらかした。
まるで、氷水でも頭からぶっかけられたように血の気が引いた。
慌てて謝って、近くに見えたコンビニで傘を買って帰宅することにしたが、彼女はずっと顔を真っ赤にしていたし、亘理は亘理で顔を真っ青にしていた。そして分かれ道で別れ、帰宅して現在に至る。
取り敢えず七ヶ浜たち先輩を何とか誤魔化し、夕食を作り終え片付けも入浴も終わらせ、部屋に戻る。いつもならデート楽しかったな、とか任侠映画最高だな、とか色々考えているが今日は残念ながら彼女のあの表情と唇の感触が消えない。更に言えばあの時の扇情的な彼女の姿も脳裏に焼き付いている。
だが、どうしよう。
自分は無意識とはいえいきなり空気も読まずに唇を奪うという蛮行に出てしまった。硬派の風上にも置けない蛮行だ。また奇声を発してしまいそうになっていると、ブーッとスマホが震えた。何かと思い、見てみると彼女からの連絡だった。今日は楽しかった、とまた一緒に出掛けようというものだった。どうやらキスに関しては彼女は気にしていない様子。だがそれもそれで結構切ない…。
そんな風に思っていると今度は彼女から電話が来た。亘理は慌てて通話ボタンを押した。
「お、おう…!どうした…!」
「こ、こんばんは…!亘理くん…!」
声からして彼女もなんだか緊張しているようだった。
「あ、あの……ね…その…」
「どうした?」
「今日、き、」
キス、してきたから。
その言葉に頭を金槌でぶん殴られた気分になり、亘理はドスッと頭を枕に埋めた。空気も読まずにキスした男なんて最低、別れましょう!か?と一人マイナスの方に考えている亘理は彼女に謝った。
「悪い……その…」
だが彼女はそうじゃないの!と亘理の謝罪をやめさせるように言って、言葉を続けた。
「その、嬉しかったから…気にしないで…。それと…また、してくれると嬉しいな…」
最後は消え入りそうな声だったがしっかり亘理の耳に入っていた。彼女は逃げるようにじゃあね!と言って電話を切った。亘理の中ではしばらく彼女の言葉が反芻していた。そしてようやく言葉をすべて理解すると、チャペルのベルの音が聞こえた気がして、亘理はまた奇声を上げた。今度は歓喜の意味で。
今度は築館に怒られた。だが怒られているのににやけた表情の亘理がいた。
