バクテン!!
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「ごめんね、築館君」
隣でビニール袋を持つ築館君にそう言ったら、築館君は笑った。
「いつも俺達を支えてくれてる君に何かあったら大変だからね」
ガサッとビニール袋が音を立てた。
マネージャーとして、ドリンクを作るのは大切な仕事だ。本来ならいつも使っているドリンクを作るパウダーが、この間在庫を確認したときにはまだ大丈夫だと思ってたけど、部員が増えたためか消費する量が増えた。そのため、明日分のパウダーが足りなくなって部活帰りに私が買って帰ろうとしたら、その事を栗駒ちゃんから聞いたのだろう築館君が付き合ってくれた、というわけだ。
「何かあったらって、いつもお世話になってるスポーツ店にパウダー買いにいくだけだし…」
そう言うけど、築館君はビニール袋を揺らしながら困ったように笑った。私、そんな変なこと言った?
「君は案外ぼんやりしてるところあるから」
「う……」
「今日も体育の時間とか、走りながらぼんやりしてるみたいだったし」
いや、あれは昼食前の体育が悪い。
もう疲れてへとへとでお腹も減ってて、空を見上げたら雲がちょうどこの間飲んだずんだシェイクみたいな形をしてたから、つい見入っちゃってただけでぼんやりしてたわけじゃ…。
「で、でも事故に遭いそうになれば私だって…!」
「え、」
その返答は予想してなかったのか、築館君はきょとんとして、少し照れたように笑った。
「俺が心配してるのは、ナンパの方だよ」
「な、ナンパ…!?」
それには私が驚いた。
ナンパってあれだよね。ねえ彼女今時間空いてる?ちょっとお茶しない?みたいなドラマとか漫画でよく見るやつ…。
私が?ナンパされる…?
いやいやいやいや…!
「ナンパは可愛い子がされることであって、私は無いから。それこそ栗駒ちゃんみたいな可愛い子がされるんだよ」
そう言ったけど、築館君は信じていない様子。不思議そうな顔をしながら小首を傾げられた。
「君は十分可愛いけど」
まぁた、うちの副キャプテンは天然さんだなぁ…。
というか、築館君は性格がイケメンだからなぁ。女の子=皆ナンパされるみたいな思考の持ち主なんだろう。優しいような、残酷なような…。
「そんなこと言うなら、七ヶ浜君から聞いたよ?この間3人で出掛けたら、築館君だけナンパされたんだって?」
そう言うと築館君は七ヶ浜…、とド低音で恨みがましげに言った。何でも、築館君の好きな緑の物が置いてる専門店に入って眺めていたら、いつの間にか同じ趣味みたいな年上の女の人と話をしていたらしい。流石築館君。年上キラーなのかな。
「いや、別にあれは…」
築館君はその時の事を思い出した様子で何だか苦そうな顔をしていた。別にそんな言い訳しなくても良いのに。
「そうだ。築館君」
「何だ?」
「皆には内緒ね」
「?あぁ…?」
*******
体育の時間の後からずっとずんだシェイクが飲みたかったんだよねぇ。買い食いはあんまりよくないって言われてるし、築館君このあと寮でご飯が待ってるんだろうけど、今日付き合ってくれたお礼ということで…。
ずんだシェイクを二つ買って築館君と待ち合わせした場所に向かおうとしたら。
「あの、すいません」
声をかけられた。振り返ると私服を着た男性。その手にはスマホ。そして男性はスマホを見せてくる。そこには地図アプリが映っていた。感じ的に観光客かな?
「ここに行きたいんですけど…」
そう言って見せられたのはここら辺でも有名な飲食店。あー、このお店美味しいんだよねぇ。でもちょっと入り込んでるから分かりにくいんだよねぇ。
「えっと、この道を、」
「メイデン!」
グイッと強い力で後ろに引っ張られた。 振り返ると血相変えた築館君が私を引き寄せていた。
「っ、築館君…?!」
「俺の彼女に、何か用ですか」
少し低めに、警戒したような声色で築館君はそう言った。私も観光客のこの人も驚いて、キョトンとした。そして、観光客がおずおずと口を開いた。
「あ、あの…、道を…」
「………道?」
「あー、あの店早く行かないと混んじゃいますもんね」
私は目的の店の方角に視線を向けた。
「この道を真っ直ぐ行って商店街を抜けるちょっと前に目印の看板が右側に見えてくると思うので、多分それで行けると思いますよ」
「ありがとうございます!」
そう言って観光客は教えた方に慌てて走っていった。
私は観光客を見送り、私を引き寄せた築館君は呆然としながら私たちのやり取りを見ていた。えっと、取り敢えず…。
「はい、築館君。ずんだシェイク」
少し汗をかいたカップを渡すと築館君はよく分かっていない様子でカップを受け取った。
「今の人は…」
「え、観光客、かな…。ほら、テレビでよく紹介されてる有名なお店が近くにあるから。でもちょっと分かりにくいみたいで、教えて欲しいって言われたの」
そう言うと、築館君ははぁ…と深く息を吐いて、掴んでくる力が緩んだ。
「帰ってこないから見に来たら、知らない人と話してるから、ナンパされたんだって…」
あ…、…心配してくれたんだ…。
「ありがとう。ごめんね、心配かけて…」
でも、一つ気になってることがあるんだよねぇ…。
「俺の、彼女って…」
そう俯きながら言うと顔が少し熱くなる。
彼女、というワードは築館君の大切な人ということで…。いやいや、まさかそんな私には恐れ多い…。
築館君からは返事がない。
え、何で?そう思いながらチラッと築館君を見ると築館君も私と同じく顔を赤らめていて、私の視線に気づいたのか手で隠そうとした。
ごめん、男子新体操部の皆。
帰るの、もう少し遅くなるかも。
