バクテン!!
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築館君は変わってると思う。
いや、別に築館君をディスってる訳じゃない。私の率直な意見だ。
頭は良いし、性格も良い。更に男子新体操部だから運動神経だって抜群だから(苔や緑の事になるとちょっと雄弁になるけど)女子にモテる。
なのに、当の本人は全くそんなこと気にしてない様子。そして今、私と一緒にクラス当番で日誌を書いてる。
家が神社って、言ってたっけ…?
字、綺麗だなぁ。姿勢も良いし、シャーペンの持ち方一つとっても綺麗。まるでお手本みたい。
向かいに座りながらチラッと築館君を盗み見る。当の本人は視線を日誌に落としているから全く気づかない様子。さっき話した通り築館君はモテる。故に女子の競争率は高い。
イケイケ系の女子じゃなくて、虎視眈々と狙っている物静かだけど、確実に落とそうとしている、まるでアサシンみたいなアサシン系女子に(いや、アサシン系女子ってなんだよ…。大分ゲームに感化されてるな私…)。でも、そんな女子たちの好意に築館君は今のところ一度たりとも首を縦に振ったことはない。よく同じ部活の女川君に勿体ない…と言われているのを私は何度か目撃している。その度に築館君は困ったような顔をしていた。
色素の薄い築館君の髪が、夕日に照らされて綺麗だ。
「どうしたんだ。俺を見てぼんやりして」
築館君の視線は日誌に向けられているのに、まるで私の視線に気付いているみたいに築館君は言った。それに私はビクッと体が跳ねて、心臓がキュッとした。盗み見てたのが、バレてる…。申し訳ないような罪悪感と、盗み見ていたのがバレて居心地の悪いような、そんな感情が入り混じる。
「築館君の髪が、」
「うん」
「夕日に照らされてさ、」
「あぁ」
「綺麗だなぁって、思って…」
見惚れてた、までは言わなかったけど。ちょっとバツが悪そうに視線を逸らしながらそう言うけど、築館君からは返事はない。
バカにしてるかな?
それとも面白いと思っているのだろうか。
恐る恐る築館くんを見ると、築館君は私の方を見て嬉しそうに笑っていた。それに私の心臓は強く跳ねた。さすがイケメン、嬉しそうに笑ってるだけで破壊力抜群だ。
「俺よりも、君の方が綺麗だよ」
まるで口説くように築館君は言った。それに私の顔は熱くなる。
落ち着け私!築館君の社交辞令だから!女子にそんなこと言われたら自分も言わなきゃ、みたいな社交辞令だから…!
自分にそう必死に言い聞かせ、心を落ち着かせる。
「そんな事平然と言えるなんて、築館君がモテるわけだね…!」
「俺が?まさか」
スパッと築館君は否定して、また日誌を書き始めた。
いやいやいやいや、築館君?私数多の女子に(数多は言い過ぎかな…?)告白された後の姿を、何回見てきたと思ってるのさ。
ジトリとした目で築館君を見るが築館君は困ったように笑い「本当だよ」と言った。そして少し視線を落とした。
「好きな子にモテなきゃ意味無いだろ」
どこさ寂しそうに、悔しそうに築館君は言った。
………………、おぉ。格好良いこと言うねぇ。でも、それはモテない男子に言ったら断罪されるから気を付けた方が良いよ、ってあれ?ってか、ちょっと待って…!
「築館君、好きな子いるの?」
「そりゃあ、俺も男なわけだし。好きな子ぐらいいるよ」
へらりと笑いながら築館君は言った。築館君が好きな子がここにいたら、確実に悲しみで崩れ落ちていたに違いない…。
あの築館君に好きな子が居るんだよ!?
一体誰なんだろ?気になるけど、そこまで踏み込んで良い仲でもないし…。
「そっかぁ」
…はっ!もしかして、一つ学年下のあの子かな!?男子新体操部のマネージャーの子!可愛いもんなぁ…。背も小さくて、でもしっかりしてて…。うん、築館君にお似合いだ!
「築館君を好きな子が聞いたら卒倒しちゃうね」
そう言って今度は私が日誌に目を落とした。築館君の事だから誤字とか無いだろうけど一応見ておかないとね…。
「君は、」
「ん?」
文字を追っていると、築館君が言葉を発した。それに私は顔を上げる。
「君は卒倒してくれる?」
「え、」
凄く真面目な顔をした築館君がまっすぐな目で私を射ぬいていた。
えーっと。
何故卒倒?
築館君を好きな子が聞いたら卒倒しちゃうね、ってさっきの言葉から来たの?
「卒倒は、しないかなぁ…。驚きはしたけど」
「そう、か…」
少ししょんぼりして築館君は視線を落とした。
え、なにその反応。私に卒倒して欲しかったの?しかも、いつにないぐらい感情を表に出すほどに?
「でも、応援してるよ!」
「あぁ、ありがとう…」
落ち込んでる…!なんか、落ち込んでる…!
え、何で?!卒倒しない女子がいてそんなに嫌だった?!応援してるって言ったけど、あんまり嬉しそうじゃない上に更に落ち込んでるし…!
「じゃあ、卒倒してもらえるようこれからはガンガン行くから」
……ん?なんかあんまり築館君らしくない言葉が聞こえた気が…。築館君は既にシャーペンを筆箱にしまおうとしていた。
というか。
「何で私の卒倒にこだわってるの?」
別に私じゃなくても、築館君を好きな子ならいくらでも卒倒してくれそうなのに。
「好きな子が自分を好きで卒倒してくれるなら、俺は嬉しいよ」
じゃあ俺は日誌を提出して行くよ、と言って築館君は行ってしまった。
私はしばらく築館君の言葉を反芻して、鞄を持って駆け出した。
