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ロナルド君はとても人気者。
格好いいだけじゃなくて、優しいし。
最初は真っ赤になりながら噛み噛みで告白されたとき嬉しかったけど、思った。
なんで凡庸な私なんだろう?って。
ロナルド君の周りには可愛い女の子も魅力的な女の子もたくさんいるから。選びたい放題だろう。
それに最近は、私といるよりも好みの女の子と居るほうが楽しそうだ。
別れるのも、時間の問題かなぁ…。
アパートに帰り、ロナルド君からの連絡が無いのを確認する。きっとお別れはカウントダウンに入っているんだと思う。
涙が、溢れた。
そうだ。別れが分かっているなら、私からお別れしよう。その方がロナルド君に変に気負わせなくていいし、私を変に引きずらせることもない。
『え、あ…。そうか、俺も別れたいと思ってたんだ』
こんな感じできっと、ロナルド君は受け入れてくれるはず。いつも私に気を使ってくれるロナルド君に、最後は私から別れを告げて、気を使わなくていいんだよってことにしないと。
私は凡庸で、何にもないんだから。
誇れるものも、自慢できるものも。
何処にでもいるただのモブ。
そんなモブに手を差し伸べてくれたロナルド君。
嬉しかった。
モブから脇役ぐらいになれたのかな。
でも、それもおしまい。
脇役はただのモブに戻る。
ただ、それだけ。
そう自分に言い聞かせて、私服に着替えアパートを出た。ロナルド吸血鬼退治事務所に向かっていると、電光掲示板に吸血鬼警報が出ていた。
もしかしたらロナルド君、吸血鬼退治に出ているかも知れない。迷惑を、かけてしまうかも。
でも、ここで決心が揺らいで戻ったらロナルド君にまた気を使わせてしまうかもしれない。
そう思い私は、ロナルド君の事務所に向かった。
ヴァミマの近くを通り過ぎ、少し薄暗い道に入る。街頭が無いわけじゃないけど、街頭と街頭の間が開きすぎてて、薄暗い。
少し怖いけど、走り抜けよう…。
そう思いながら、少し早足でそこを駆け抜ける。大通りの灯りが近づいてくると少し安心した。そして、更に灯りを背負うようにこちらを見る真紅の衣装が見えて、少し胸が痛んだ。
ロナルド君、居た。パトロールしてたんだ。隣にドラルクさん居ない…。
大丈夫。大丈夫…。
別れを切り出そう。いつも通りにいけば大丈夫。
少し緊張して、手が震えた。
「ロナルドく、」
言葉は、最後まで言えなかった。
口元を鷲掴みされ、薄暗い道の冷たくて固い壁に押し付けられた。
痛くて、苦しくて、何が起こったのか分からなくて、恐怖で涙が浮かぶ。でもそれ以上に、私を壁に押し付けて銃口をこちらに向けるロナルド君が、怖かった。
「てめぇ、よくもぬけぬけとその顔で俺の前に現れたな…!」
え。
いつもは優しい蒼色が、ギラギラと怒りを孕みながら私を睨んでいた。
もしかして、さっき吸血鬼警報が出ていたから、私を吸血鬼と勘違いしてる…?
「んーッ!」
違うよ!私は吸血鬼じゃないよ!
そう言いたくて口元を鷲掴みしてる手を剥がそうとしたけど、全然剥がれない。どうしよう…!
「うるせぇっ!俺の前にその間抜け面晒しやがって…!」
え。
「いい加減うんざりだ」
違う。
この言葉は吸血鬼にじゃない…?
私って、分かってて言ってる…?
「消えろ」
『メイデンさん』
甘くて優しい声が耳の奥から溢れたのに、耳から入ったのは冷たくて鋭い声。手を剥がそうとしていた自分の指先が冷たく、震えていた。
そっかぁ…。
私、そんなに嫌われてたんだ…。
「てめぇ…。何泣いてやがる、命乞いは、」
「ロナルド君、向こうで吸血鬼捕まっ、って何やっているんだね!?」
大通りの光を背景に、ドラルクさんが慌ててやってきた。その後ろから他の退治人さんもやって来る。
「え、は……?だっ、て………ッ?!」
「何やってるんだロナルド!?一般人に!!」
私の口元を鷲掴みしていた手が緩んで、落ちる。私は顔を俯かせた。ロナルドはドラルクさんや他の退治人さんの姿を確認し、その言葉を聞いて目を見開いていた。
「ッッ!!メイデンさ、」
「ごめん…、間抜け面をずっと晒してて…、うんざり、してたんだね…」
顔を上げて、ロナルド君を見た。
真っ青な顔。この世の終わりみたいな表情。
大丈夫、ロナルド君が間違って一般人に手を出したなんて、雑誌とか記者には言わないから。
そんな顔しなくても、大丈夫だよ。
「もう、会わないから」
安心して?もう、消えるから。
そう言って私は来た道を全速力で帰った。
バタンッと玄関の扉を閉めて、鞄を投げ捨て布団にダイブする。
「そっか…そっかぁ……ッ!」
嫌われてたんだ。
あんな事言われるぐらい、思われるぐらい。
ロナルド君に。
「嫌われて、たんだ……ッ!!」
口に出すと、涙が止まらなくなった。
そうだよね、こんな凡庸な女嫌われて、当然だよね…。でも、今は泣いても良いかな…。凡庸だって、普通だって、傷付くんだ。
それでも、心の中でこう思っていた。
ロナルド君、大好きだったよ。
さようなら、私の好きな人。
