黒バス
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今日も楽しい1日。あぁ、楽しい楽しい!
彼女はスキップして街中を歩く。両手を黒いコートに突っ込みながら。彼女は情報屋。だが決して新宿にいる中二病でもなければ人ラブ!なんて叫んだりする情報屋ではない。知り合いではあるがあの情報屋を彼女は嫌っている。
話を元に戻そう。
何故彼女がスキップをしながら街中を歩いているか。それは欲しくて欲しくてたまらなかった情報を得られたから。そして目の前を歩く蜂蜜色の髪。
「みっきー、久しぶりだな」
みっきー、もとい宮地清志。
そう呼ばれて振り返ればニコニコ笑う彼女と目が合った。2人は高校の時知り合い、そして犬猿の仲である。ただしキレるのはいつも宮地で彼女は何故怒る?と言いながら逃げている。「てめぇ、何回言わせりゃ気が済むんだ?轢かれたいのか?轢かれたいんだよなぁ?」
「まさか、人間の人生まだまだこれからじゃない。大体みっきー、そんな事したら殺人罪で即行逮捕だな、これだけ人居るし?目撃者多数で哀れみっきー、とうとう警察にお世話になるんだ。それはそれで私は楽しそうで良いけど」
「殴る」
ビュンッ。
宮地の拳が空を切る。彼女が咄嗟に避けたのだ。これまた宮地という男、池袋の自動喧嘩人形ではないが人並み外れた怪力の持ち主である。そんな宮地の拳が当たれば全治数ヶ月では済まないだろう。あぁこいつらまた始めやがった、通行人が我先にと逃げ出す。
「何が嫌なんだみっきー」
「そのあだ名止めろ!」「何故?名前の頭文字を繋げただけじゃないか?なぁ、みっきー」
「俺の名前は!!」
宮地清志だ!!
そう言って再び振りかぶり殴る。それを彼女はひらりひらりと身軽にかわす。そしていつもの乱闘戦(ただし一方的な)。
それを終えて彼女が住処としているマンションに帰ってくると、仕事を片付けた。時刻は限りなく夕方に近い。あぁ、お腹減ったななんて考えているとインターフォンが鳴った。
確かにお得意さんは彼女の部屋を訪れることはあるが、必ずアポをとってから来る。つまり、敵か。しかし敵がわざわざインターフォンなんて鳴らすだろうか、なんて思いながらカメラで外を見ると彼女は嫌そうに顔を歪め、玄関に向かった。
ドアを開けばなおのこと。
「何ですか、おじさん」
遠い遠い遠縁の叔父。
顔を見ればろくな事を言わない男だったと彼女は覚えてる。
そして気付いた。叔父のそばにいる、小学生ぐらいの男の子が2人。顔は俯いていてよく見えない、が髪の色は分かった。
緑と黒。
どうやら、この男は"ろくな事を言わない"だけでなく"ろくな事をしでかさない"らしい。仕方なく部屋に入れて話を聞けばなおのこと、いやむしろ呆れてしまった。
訳あって数年前から、2人を血縁達が面倒を見ることになった。俺は半年面倒を見た。だから今度はお前は引き取れ。
要約するとそういうことだった。しかも隣に子供を座らせたまま。チラッと子供を見る。服は少しボロボロ、髪はぐしゃぐしゃ、頬は少し赤くなって、少し痩けている。まともに衣食を与えてない上に暴力を振るっているのは目に見えた。
叔父はそれだけ言うとさっさと出て行ってしまった。今までバレてなかったのに、と思いハッと思い出した。新宿にいる情報屋を。あれは変態で中二病だがなかなか頭が切れるから、なんて思いながら未だにソファに座ったままの2人を見た。あの男は彼女の居場所を知ってしまったら彼女が自分より稼いでいるのを見通して変な難癖を付けて金をたかるだろう。まぁ、その時はお得意さんに"処理"を頼もうか、この世はgive-and-takeなのだから。
「名前は?」
ビクッと2人の体が跳ねた。そして恐る恐るといったように彼女を見る。彼女は2人の前にしゃがみ、顔を見た。
「たかお…かずなり…」
「………みどりま、しんたろう」
高尾?
緑間?
数年前、自動車事故で高尾夫婦と緑間夫婦が亡くなったという記事を読んだことがあった。なるほど、訳あっての訳はそういうことか。なんて思いながら2人の頭をぐりぐりと撫でた。
「私はメイデン。お姉ちゃんとか姉さんとか呼んでくれ。よろしく」
そう言うと2人はガバッと顔を上げたが、すぐに何かに気づきシュンッとした。彼女は首を傾げた。
「どうした?」
「どうせ、またすぐに他の人間にまわすのだろ」
今までの奴らのように。そこまで言わなかったが緑間はそう言いたかったのかもしれないと彼女は感じた。両親が居なくなって、親戚にたらい回しにされてそれがずっと続いてたのだろう。
それが、2人の中で当たり前となり"諦め"を根付かせたのだろう。
「何だ、早く出て行きたいのか?」
ぐりぐりと頭を撫でると緑間は顔を上げて手を振り払うとキッと睨んだ。
「そんなの俺達に聞いたっていつも勝手に決めるのはお前らなのだよ!!」
「俺達のいけん、なんもきいてくれないくせに…!」
ギラギラとした目で高尾も彼女を睨む。うーん、と彼女は悩み天井を見上げた。確かに、彼女の血縁達はろくな人間がいなかった。彼女本人もこんな仕事をしているため自分がろくな奴じゃないと自覚しているが。しかし自分の事を棚に上げたとしても血縁達を軽蔑してしまうほど、ろくな奴じゃないと感じている。
「あんな人間達と一緒にされるのは嬉しくないな」虫酸が走るほど。
「まぁ何はともあれ、2人はまず風呂だな」
ガシッと2人を俵抱きにして両腕に抱える。何せ少し臭う。ちゃんと洗ってやらねばならない。それに新しい服も。
「は、はなせ!はなせよ!!」
「はなすのだよこのっ…!」
「夕飯は何が良い?デリバリーでも良いが?」
「「はなしきけ!!」」
「そういえばこの間漬けたキムチがあったな。それで何か作ろう、デザートはぜんざいかお汁粉な。勿論白玉入りだ」
ガチャとリビングから出た。
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