短編
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夢主は鏡の前に立ち、自分の衣装を見て軽く落ち込みそうになった。
その原因は昨日の夜の事だ…。
昨日、夢主は知らず内に溜息を吐いていた。目の前には、コスチュームを変えた仲間達。何だかいつの間にかファッションショーと化しそうなその場の雰囲気に、夢主はフイッと視線を逸らした。
ユーリは【タンクトッパー】
エステルは【ひみつの魔女っ娘MX】
ラピードは【半獣少年の衣まとう犬】
カロルは【高き頂きを制す黄金戦士】
リタは【ミシカ博士号】
レイヴンは【凄腕ヒットマン】
ジュディスは【伝説のギャンブラー】
フレンは【紳士のたしなみ】
パティは【華やかウォーカー】
ファッションショーというよりはコスプレ会場のようだ。夢主は何だか頭が痛くなって来て額に指を添える。
「夢主!どうです?似合ってます?」
満面の笑顔で似合っているかと聞いて来るエステル。幼い頃から見守って来たまるで妹のような主人が、今ではこんなに大きくなったんだ、と改めて思い夢主は微笑ましくなってうっすらと微笑んだ。
「はい、似合っていますよ」
そう答えるとエステルはパッと嬉しそうに笑った。それと同時に夢主の顔からも表情が消える。そこで皆はハッと気付いた。
何故夢主はコスチュームを変えてないのかと。
思えば夢主が持っているコスチュームは、初期衣装とダングレストの酒場で働いた時の衣装しかない。(酒場衣装はスカートが動きにくいと却下されて以来来てくれない…)つまり今までずっと夢主は、初期衣装のままという事だ。それにエステルも気付いたのか、ハッとして夢主を見上げた。
夢主は何処となくキョトンッとしている。
「夢主は何で着替えないんです?」
その問いに夢主はビクッと身体を震わせ、相変わらずの無表情でしどろもどろしている。
「…私は、そのような服は似合いませんから」
何とか出した反論の言葉は何とも自分らしい反論で夢主は内心で自嘲気味に笑った。14の頃から甲冑やら、民の頃もあまり露出を控えていたため、肌を出す事自体夢主は苦手だ。酷く落ち着かなくなる。
肌を出すぐらいなら、とアレクセイに薦められた騎士の制服も断って、出来るだけ布面積が大きく露出面積が無いものを頼んだぐらいだ。
というかあの制服は…、何があろうと絶対着てたまるものか。
あの時のアレクセイの顔は随分と渋っていたものだと夢主は思い出していると何やら不穏な雰囲気を感じた。
どうやらパーティーメンバーが夢主が何やら嫌な奴を思い出していると読み取ったようで、真っ黒なオーラを出している。夢主はそんな皆を見て、呆然としている。
「……どうしたんだ」
「夢主、明日まで待ってろ」
俺たちが夢主のための服を道具屋に頼んで作ってもらう。とユーリが言うと皆同じ気持ちなのかうんうんと頷いた。だが素材が勿体ないと言おうとしたが、皆が既に協力していて夢主の反論も言葉一つ聞いてはくれなかった。そして不安を抱えながら夢主は一夜を過ごし、朝を迎えるとエステルが代表で衣装を届けに来てくれたのだ。
……確か、衣装の考案は女の子達と言っていて…、素材は男達が探したと言っていたな…。それにしてもこの網みたいな服は一体何なんだ。しかもエステリーゼ様にはサラシは絶対に取るようにと言われたし…。
夢主は渡された服を見る。自分ではあまり着ない色の服だ。恐る恐るそれを広げると、夢主は自分の中に激しい雷が落ちるのを感じた。しかし外では仲間が夢主が出て来るのを心待ちにしている。そんな自分のプライドと仲間の努力の板挟みに遭い、夢主は仲間のためにその衣装を着た。
そうして、冒頭に至る。
簡単に言えば"くのいち"衣装だった。但し、着物のような服の丈はとても短い。それこそ太股が見えてしまっている。それらの小物も夢主の色気を引き立てている。
チラッと自分の脱いだ服を見る。甘い誘惑に駆られ着替えてしまおうか、と思うが仲間が自分のために作ってくれた服だし、と優柔不断になる。(どうやら下心があるという事に気付いてないようだ)
……せ、せめてサラシだけでも巻いてしまおう…。
そう思いサラシに手を伸ばした瞬間、扉を開けられる、夢主にとっては地獄への扉が開くような音が聞こえた。
*******
「夢主様、大丈夫ですか?」
相変わらず最後尾を歩く夢主にフレンが手を伸ばす。何だかこの服を着てから皆の扱いがいつも以上におかしい気がする。今までずっと1軍だったというのにいきなり2軍に落とされ、そうしてこんな紳士的な扱いを男だけではなく女からも受ける。
「あ、あぁ…。すまない」
手を伸ばして来るフレンの手を夢主は恐る恐るとって歩くペースを早める。だが2軍で夢主は良かったと思う。戦いのように大きく動いてしまったら丈の短い布の下にある下着が見えてしまうからだ。そんな事になっては本気で死んでしまいたいと思う。
「いえ、…あ。夢主様、脚に…」
どうやら鎌鼬にあったようで少し切れている。夢主は何でもないと言おうとする前にフレンが抱き上げた。
「ぅ、わッ」
「あ、すいません。驚かせてしまいましたね」
「おーい、フレン。なに夢主を独り占めにしてんだよ」
そんな声がして前方を見るとユーリが何とも不機嫌そうな顔で2人を見ている。エステルはユーリとフレンが睨み合っている間に夢主に近寄って来ると傷ついた怪我を治す。夢主は慌ててフレンの腕から逃げ出した。
「夢主、大丈夫です?」
「はい、ありがとうございます」
「少し脚を出しすぎたんじゃないの?」
エステルはいつの間にか夢主の腰に触れているがこれは無意識だと自分に言い聞かせる。リタはしげしげと夢主を上から下までジッと見つめる。
「夢主、少し露出がありすぎたかしら?でもせっかく綺麗な肌なんだから、出しても全然問題なさそうね」
ジュディスが夢主の太股や、腕や胸元に触れてくる。
いや、そういう問題ではないのだが…。そう言う前にパティが夢主の胸に抱き付いて来た。
「ッ!」
「夢主、可愛いのじゃ!」
激しいボディタッチに夢主は今にも逃げ出したい気分に駆られる。
「おっさんも!おっさんも混ぜ、「インディグネイション!」
リタの秘奥義が炸裂する。夢主は何だか悪い気がしながらも皆から逃げた。するとラピードが近付いて来る。くぅん、とラピードが一つ鳴くと夢主は屈んだ。ラピードは待っていたというかのように夢主の頬を舐めた。
どうやらラピードはここで休みをとりたいようだ。そう理解した夢主はそこに座るとラピードは隣りに陣取り、丸くなって欠伸を掻いた。
チラッと見るとまだまだ皆言い争っていたり話し合っていたりしている。夢主は早く着替えたいと思いながら溜息を吐いて、ラピードの頭を撫でた。
翌日。
夢主はもう着替えてしまって皆にブーイングを食らっていた。理由としては皆が仲良くしているようにというのが1つと、何やら貞操の危機を感じたからのようだ。