短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ED設定
ギルド―凛々の明星。
凛々の明星構成メンバーであるユーリは自分宛てに届いた手紙の封を切り、紙を開いた。送り主は自分の愛する人。今は離れている。しかし、ユーリは会いたいとどこか心の片隅で思っていた。しかし、この字を夢主が自分のために書いてくれたと思うと二ヤケが止まらない。
【ユーリ・ローウェルへ
皆は息災か?
私は相変わらず、下町で暮らしている。凛々の明星の皆は一体何をしているんだ?しかしやる事があるからな。ギルドの仕事をしているのだろうな。
魔導器が無くなって、ザーフィアスの人間は最初戸惑っていたが、今では随分慣れて来たようだ。
さて、今回手紙を出したのは下町の事でだ。手紙が恐らく着くのは私がこの手紙を出してから2日後だろう。1週間後に、ユーリ・ローウェルやフレン・シーフォがお世話になったパン屋の女性が結婚なさる事になった。是非とも2人に来て欲しいとの事だ。祝いの言葉の1つでもあげてやるのが礼儀ではないか?2人とも忙しいかもしれないが絶対に来なさい。花嫁姿の女性はどなたも美しくて、素晴らしいぞ。
そういえば【箒星】のお女将さんから、見合いを勧められた。何でもいい男が居るとの事だ。
私もそろそろいい年齢となるだろう。子供はさておき一応身を固めて置いた方が良いと思っている。
エステリーゼ様やヨーデル殿下やソディア達にたまにお会いになるが皆良い顔はしないな。フレン・シーフォやユーリ・ローウェルは良い顔をしてくれるだろうか?それとも皆と同じように余り良い顔はしないか?
良い顔をしてくれる事を、私は期待している。笑って祝福の言葉の一つでも言ってくれるととても嬉しい。笑顔、とまでいかなくても良い。祝ってくれる事ほど嬉しい事はない。
【箒星】のお女将さんが、貸してくれたウェディングドレスを着た写真を送る。隣に写っているのが見合いの男だ。見覚えがあるだろう?
要らないと思ったら破いて捨ててくれ。
もしかしたら、彼が私の花婿かも知れないな。
それでは長々と書いてしまったな。
ちゃんと結婚式には2人して来るのだぞ。遅刻もなしだからな。
それでは会える日を楽しみにしている。
夢主より
P.S.
写真に写った男を殴りに行かないように 】
始めのニヤけ顔が徐々に般若の顔に変わって行き、最後には恐ろしい鬼の形相になってしまったユーリ。それを見てギョッとする仲間、カロル辺りは逃げ出す5秒前だ。
俺はこんなに会いたいって思ってんのにアンタは他の男と結婚するだぁ…?しかも殴りに行かないようにって、行くに決まってんだろ。大体、絶対見合いなんて嘘だろ。ってか夢主の隣がデュークって…、アイツ夢主に惚れてたのか?というよりはアイツってあんなキャラだったか!?
ってそうじゃない。
今は夢主の浮気みたいな行動についてだ。ふざけやがって…、俺だって会いたいのを我慢してたってのに。
ガタリッと音を立ててユーリが立ち上がる。手紙を心境とは全く違う扱いで丁寧にしまい、そして自分の愛刀を手に取る。今のユーリに目を合わせようモノならギガントモンスターも裸足で逃げ出す事間違い無しだ。機嫌が悪いというよりは、いっその事立て札で【近寄る注意】と書いてやりたい。
「ちょっと、帝都まで行って来るわ」
(夢主にちょっと会って来るわ)
言葉の裏を簡単に読めてしまうのは何故だろう?あぁ悲しきは自分の順応力の高さか…?カロルはキリキリ痛み出した胃を押さえながらピンポンダッシュをするかのようにその場から逃げ出した。
******
ユーリが夢主の部屋に着いたのはそれから1日後だった。近くまでバウルが送ってくれたからだ。夢主の部屋の扉の前に立ち、沸き上がる怒りと、これから自分が持って行こうとしている展開にニヤけ顔が止まらない。ドアノブに手を掛け、回してみる。何せ相手は元とはいえ騎士、しかもアレクセイと腕前は同じ。開いてないとは思うが一応確認だ。
「………開いてるし」
キィィ、と音を立てて扉が開く。何とも不用心な事だ、ユーリは呆れて溜息を吐き、そして部屋の中を見て目を見開いた。自分が未来に描きたくてたまらなかった花嫁が椅子に座って本を読んでいたからだ。これは夢じゃないか?
あの夢主が、花嫁姿って…。
「来たか」
夢主はユーリに気付いて本を閉じると、顔を上げてユーリを見た。
夢主も恥ずかしいのか照れくさいのかそっぽをむいて、しかし覚悟を決めたのかユーリを再び見る。ユーリは部屋に入って扉を後ろの手で閉めて改めて夢主を見る。夢主は花嫁姿の女性はどなたも美しい、と手紙で綴っていたが自分が惚れた女だとより一層らしい。
「夢主…、アンタその格好……」
「……似合わないか?」
夢主は立ち上がって首を傾げてドレスの裾を持ち上げた。余りの美しさにユーリはここまで来た目的を忘れかけていたがハッと思い出した。
「似合わないも何も、自分の女が他の男のためのウェディングドレス着て「似合う?」なんて聞かれても、」
「………あぁ、あれか」
あれはお女将さんが考えた、ユーリ・ローウェルをここまで来させるための嘘だ。
夢主は真顔で言った。………嘘?つまり何か?デュークと結婚するって奴は嘘なのか?
「まぁ、パン屋の女性が結婚なさる話は本当だがな」
すっかり忘れてた内容を思い出してユーリは納得した。
「何で俺をここまで来させるためにあんな手紙書いたんだよ」
寿命が軽く3年縮まったじゃねぇか、と言ってユーリは夢主のベッドに腰掛けると夢主は頬を紅潮させてボソリッと呟いたが、その言葉ははっきりとユーリに届いていた。
「私がユーリ・ローウェルに、会いたいって、思ったからだ…」
何だって?あの無表情でなかなか感情を面に出さない夢主が、照れくさそうに会いたかったって…。
しかもウェディングドレスって…。
「これは、お女将さんが、いつか着る事になったらと言って、くれたんだ」
こんな女娶る男など居ないから、そんな日、永遠に来ないというのにな。と夢主は寂しそうに言って、恥ずかしそうに照れたように笑い立ち上がった。傷の多い身体、その身体に流れる血、そして可愛くない性格に、悲しい過去。全てマイナスの要素だ。このような女を誰が綺麗だと美しいと言えようか。
ユーリの表情を夢主は伺う事ができなかった。余りにも怖くて。
「すまないな、本当はお女将さんが、…ッ!?」
用件を話そうとしたが夢主は自分のベッドに押し倒された。どうやら油断しすぎたらしい。夢主は溜息を吐いて起き上がろうと力を込めようとした。
「なら、俺がもらう」
誰にも渡すもんか、
こんな
こんな最高の女。
そう言ってユーリは夢主の頬を撫でると夢主は言われるとは思っていなかったのか目を見開いていた。
しかし言葉を理解したのか、顔を赤くして小さく「待ってる」と言った。
激中途半端…。