短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「回る景色!」
「はぁっ!」
夢主と、俺様――レイヴンはただ今2人で戦闘中。なんでも近道をしようという事で魔物が多く出るこの森を通る事になってる。そして戦闘中の理由としては、パーティーから少し離れたら2人して魔物に襲われたから。青年達も何かに真剣になってるみたいで増援に来ないし。全くおっさんを働かせないで欲しいもんよー。
それにしても数が多いなぁ…、さっさと殲滅して青年達のとこに行かなきゃなんないのに。……よし、ここは格好よくおっさんが決めてやろうじゃないの。
チラッと夢主を見たら、夢主は目の前の敵数体を一気にぶった切ってた。わお、怖い。無表情なのにやる事怖いから鬼神顔負けね。でも傷だらけ。ちゃんと守ってあげたいんだけどねー…、でも夢主ってば男前だから戦いも加勢しようとしても1人で片付けてるし。
仲間を庇うから怪我するし。でも殆どガードで間に合ってるし。青年や少年がいる時は後衛のフォローに付いてくれてるし。
「せっ!」
夢主が振り返りざまに魔物を一刀両断する。いやぁ、凄い。
……待てよ。
俺と夢主ってば息ピッタリじゃね?
俺様後衛だし、夢主は前衛だし。それによくお互いフォローしてるし。今なんて掛け声は無いけどアイコンタクトで、阿吽出来てるし。俺が前衛になったらなったで、夢主はフォローもしてくれるし、何より背中合わせが結構あるし。……今、誰か関係ねぇよって言った気がしたけど気にしない。
息ピッタリじゃない。
目の前に来た魔物を一刀両断にしながら考えてた。むしろ今考えなきゃ暇が無いし。パーティーに戻ったら、皆にど突かれ、ある意味魔物より怖いリタっちが魔法を使って追い回すし。(でも照れ隠しだから、おっさんはめげないわよ!)夢主は、最後尾を歩くから話もなかなか出来ないし。それに、例え隣に行きたくても、嬢ちゃんが真っ黒なオーラ出すから近寄れないし。更に言えば青年や少年が夢主に近寄らせないように俺様を捕まえてるし。
そういえば何だかあの頃が懐かしいわ。俺が夢主の隣で話をして、夢主は俺の話を聞いて楽しそうで。あー…、あの頃に帰りたいわ…。今じゃ…ね……、アレクセイの言いなりだもんね。しかもアレクセイも夢主に興味持ってるし。勘弁して欲しいわ全く。
「時雨!」
夢主迫っている敵に向かって即座に弓を構えて矢を放った。その矢は夢主に攻撃しようとしてた奴を仕留めた。やりっ、おっさんに敵なしよ。特に夢主の前ではね。
あ、夢主にそろそろ回復を…。矢を構えて、っと…。
さて技を使おうとしたら、言葉が言えなかった上に身体が固まった。いつも仲間にしてるように大声で言えばいいのに。「愛してるぜ!」って。でも矢を構えたまま動けない挙句に言えない。今更だけど…、おっさんこんな恥ずかしい事叫んでたのね!?初めて知ったわ!
いやいやそんな事考えてる場合じゃないって!俺様はどうでも良いけど夢主を回復させてあげなきゃ。夢主も気付いたみたいで無表情だけど目が「何をしている」って言って来てる。いやね、おっさんはお前さんを回復しようと。
「あ、あいし…」
おーーい!なんで言わないのよ俺!気にするんじゃないの、これは回復のためなんだから!深い意味は無いの!それに今はアイテムもあんまり無いから、回復はお互いの技と魔法!アイテムに頼れないんだから!だから言え!言って矢を放て!
あまりに夢主を意識し過ぎていた。だから俺は気付かなかった。頭に大きな衝撃が走った。目の前が歪む。あー、もしかしておっさんの方がピンチだったってやつ?身体が重くて動けねぇや…。暗くなって行く視界で夢主が、ギョッと驚いて対峙してる魔物をたくさんぶった切るのが見えた。ははっ、強過ぎだって。シュヴァーンでも勝てる気もしないわ。崩れて行く身体を夢主が駆け寄って俺の身体を受け止めたのはギリギリ見えたけど、そこから意識を飛ばした。
********
意識だけがフンワリと浮上する。この感覚は正直なところ苦手。
そしてなんか枕みたいなのがあるのに気付いた。あー、青年達が来てくれたのかねぇ。この枕は…あれかな。青年の連れてるワンコかな。気持ち良い…。寝返りを打ってそれに頬擦りした。ワンコってば気持ちよ過ぎ、今度からおっさんが枕にしちゃるわ。そんな事を思いながら抱き付いてみた。
………あれ、ワンコってこんなに毛が無かったっけ?
もっと毛がモサモサしてて、そういえばいつだったか抱き付いたら吠えて逃げられた記憶が…。…じゃあ、俺様が抱き付いてるこれは何?そう思って目を開けようと思ったけど、優しく頭を撫でられて、うぅ…気持ち良い。………撫でる!?
内心はかなり慌ててるのに、目は重くてゆっくり開けたら、……なんか見覚えのある色の服。そこから連想出来る人間は1人だけ。
「起きたのか」
「ぅおおぉうッ!?」
えっ!?はぁ!?えっ、何、俺って夢主に膝枕されてたの?!ガバッと起き上がって、座ったまま一気にバックしたら夢主は鼻の前で人差し指を立てて「しーっ」ってした。
我に帰って周りを見れば皆して昼寝中。しかも少年とパティちゃんが夢主の横取ってるし!
いやいやそうじゃない。俺って確か瀕死になって、その後から記憶無いんですけど!?
夢主は脇で寝てるチビッ子2人の頭を撫でる。…なんか、結婚した気分。うわー…、夢主と結婚したらこんな感じなのかしらね。暖かいわ。
「あの後、私が敵を殲滅させて、レイヴンを運びながらユーリ・ローウェル達と合流した」
夢主は俺が知りたがってた事を言ってくれた。
あの後、夢主は俺を守りながら戦って青年達と合流したらしい。で、その後慌てて森から抜けたみたい。そして一息入れるためにご飯食べて今皆で昼寝らしい。夢主は見張りで。そう考えると俺ってずっと寝てたの…?うっわ恥ずかしい…。
「あっちにサンドウィッチがあるから、食べたらどうだ?」
ライフボトルを使ったけど、って夢主が言葉が続けた。まぁ後で回復したら良いっか。あっちって夢主が指した方に行くと確かにあったサンドウィッチ。……生クリームタップリなクレープもあったけど。今回の食事当番は誰かよく分かった。青年ね。だってクレープにかけられたベリーソースで器用に"殺"って書いてあるもん。いやもしかしたら書いたのは嬢ちゃんかも。作ったのは青年で。
「レイヴンに、と。ユーリ・ローウェルとエステリーゼ様が。随分皆に大切にされているな」
どこが。
夢主に近付いただけで"殺"よ。どこが優しいのさ。
ジュディスちゃんとかパティちゃんとか夢主に好物作ってもらえた方が大切にされてるって感じあるし。どこが悲しくて嫌いなモノを、しかも呪いの言葉付きの一体どこが優しいのさ。試しにクレープを一口食べて見る。……うん、おっさんってば油断してた。
甘いだけだと思ってたけど、なんだろうこの言葉に出来ないこの味は。
味付けはリタっち…?少年…?パティちゃん…?ジュディスちゃん…?
「それにしても、随分と皆して色んなモノを混ぜていたが、美味いか?」
マズいです。
すっごくマズいです。甘い方がならマシです。
でもそんな事言ったら夢主が怒るしねぇ…。なんせ皆のお母さんですから。自分でも分かるぐらい引きつった笑顔で「美味いよ」と言ってやった。
皆が目が覚めた後、俺を見てクスクス笑ってた。なんでも夢主の俺の運び方が面白かったみたいだ。………なんせまさか夢主が俺をお姫様抱っこで運んで来るなんて…。おっさんのプライドズタボロよ。
夢主さんは慌てたからレイヴンをお姫様抱っこしてたって事で。