短編
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ユーリ一行は絶句した。目の前にいるのは仕方なさそうに溜息を吐いているが、相変わらず無表情な夢主。ここはダングレストの酒場。
最近ユーリを除く皆がウェイトレスの服やら何やらを着ていて、それじゃあ夢主はどうなんでしょうか、とエステルの質問によって酒場でバイトをする事になった夢主。
だが何となくこうなる事は予測が付いていた。夢主と両思いになったユーリも何となくだが予測が付いていた。
「何で執事服なんです!?」
エステルが大声でツッコミを入れた。そう夢主が着ているのはミニスカウェイトレスの服でも無く、色気漂う服でも無く、まさかの執事服。しかもその服が似合ってしまう夢主。おかげで客のほとんどは女性だ。夢主を見ては顔を赤めている。
「まぁ、それよりご注文をどうぞ」
……何となくだがパーティーメンバーは分かった。背が高く物腰が柔らかく、そしてほとんど表情を崩さないため、そんなつれない態度がカッコいい!と…もしかしたら彼女達は思っているのかもしれない。
「私!店長に直談判をして来ます!」
どうやら自分が望んだ服ではないためにエステルはかなりのご立腹だ。おかげで彼女の背後に火を噴こうとしている龍の姿が見える。あぁ、店長よ。明日の朝日は多分拝めないな。そんなエステルを見送り夢主はパーティーメンバーの注文を聞くと厨房に入ったり、お客に呼ばれたりと大忙しだ。
そんな忙しない夢主の姿を必死に目で追い掛けるのは他でもないユーリだ。そんなユーリを見てジュディスは笑う。
「良かったわね。女の子の格好じゃなくて」
ジュディスに言われた言葉がユーリの本心だった。女性らしい格好などしない夢主の姿を、他の人間に晒したくはなかった。だがしかし、これはこれで結構妬いてしまう。ユーリはぶっきらぼうな返事をして夢主から目を離した。
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夢主目当ての女性客のおかげで随分と儲ったのか夢主が持ち帰った売り上げを見て皆喜んだ。しかしエステルはやはり不服なのか「明日も行って下さい」と言っていた。どうやら店長に脅しという名のお願いが通じたようで、明日は服を変えるようだ。夢主も楽しかったようで表情を少し緩めていた。
「夢主」
「どうした、ユーリ・ローウェル」
皆が寝て夢主も寝ようと部屋に入ろうとすると、ユーリが呼び止めた。そしてユーリは誰も居ない事を確認すると、夢主の手を握った。決してお世辞にも綺麗な手、とは言えない。しかし、その手が自分達を守ったり、辛い過去の産物というなら、そんな手さえも愛しい。夢主はただ手が握られたというだけなのに、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「ひ、ぇっ」
引きつるような夢主の声。それはユーリが夢主の手の甲にある傷に口付けをしたから。傍から見ればそれはユーリが夢主の手の甲にキスをしたように見えるだろう。夢主は茹蛸のように顔を赤くして、口をパクパクさせた。何度かこういった行為は見て来たが、まさか自分がされるとは思わなかったのだろう。振り払おうにも恥ずかしくてか、ユーリの垂れ流しのフェロモンにやられたのか力が入らなかった。
「ゆ、ユーリ・ローウェル…!」
放してくれと言おうとするとユーリは顔を上げて「名前」と言う。
「名前だけで呼べよ」
ユーリは名前で呼んで欲しいと常々思っていた。せっかく夢主の"特別"になれたのに、今まで通りの呼び方で、ユーリは不安になっていたのだ。しかし夢主は困ったような顔をして、ユーリを見る。
ユーリも夢主に対してかなりわがままだと自分でも分かっている。しかし年下の自分は不安だらけなのだ。夢主に見合った男になれているのか。夢主に好きと本当に思われているのか。
夢主は誰にも博愛主義だ。だからこそそれが良くもあり、不安にもなる。
「あ…、う…」
恥ずかしそうに口をパクパクさせる夢主。気を急ぎすぎたみたいだ、ユーリはそう思うと「冗談だ」と言って夢主の手を放して頭を撫でてやった。大切にしてやりたい。そう思うとなかなか手が出せない。しかし限界だと思う自分も居るのは事実だ。
夢主はユーリを無表情ながらもムッとした表情で見て「おやすみ」と言って部屋の中に入った。ユーリはその場から動けなかった。
もしかしたら不安になる必要は無いかもしれない。思えば夢主は自分にしか見せない感情や表情があるから。不安になら無くても良いんだ。自分にそう言い聞かせると、ユーリも割り振られた部屋に入って行った。
*******
夢主は渡された服を見て、更に着て目を点にした。いや、確かに…でも…。そんな事を悩んでいると(でも無表情)、店主が夢主の姿を見た。
「おっ、似合ってるじゃない。でも、もっとスマイルスマイル!」
「スマイル…」
試しに店主に向かって笑って見ると「おぉ!」と叫ばれた。
「いいよ!今の表情!今日はきっと男のお客さんが多くなると思うよ?」
何だかそれは嫌な予感がしてならないが、夢主は曖昧な返事で返した。
時は変わって。
今日も夢主は酒場でバイトというわけで、エステルが夢主の衣装が変わっている事を確認するために皆して今日も酒場に行った。しかし、今日は昨日とは違い女性客は少なく男性客が所狭しと座って居る。
「いらっしゃいませー」
夢主の声が聞こえた。そして声がした方を見て皆、唖然とする。
まさに言うなれば、人妻だろうか。
ジュディスのように露出度の高い服を着て居るわけでもない。リタやエステルのような可愛らしいオプションがあるわけではない。
ただ、ハイネックセーターを着てロングスカートを穿いて、エプロンを付けてるだけ。
人妻のように見せているのは夢主の、誰にも見せた事のないような柔らかい笑みのせいだろうか。
客の男の下心の含んだ視線が夢主に注がれている。そう思うだけでメンバー全員の心中は大荒れだ。ユーリの心中は特に酷い。もしここが店でなければさっさと秘奥義を決めて、あの男達を抹殺しているところだ。
それにしても自分にも見せた事のないようなあの表情を他の男に見せているのか。そう思うと不安が溢れてたまらなかった。
「に…、似合わないか……?」
不安そうな目で、声で問い掛けて来る夢主。それを見て分かって。無理やり笑ってるんだ、と。いわゆる作り笑顔なんだなと。そう分かると何だか安心した。自分達だけなんだと思えた。夢主が心から笑える相手は。
「そんな事ありません!すっごく似合ってますよ!」
エステルが興奮しながら言うと夢主は優しく笑った。まるでそれは親が子を愛しむような表情だ。そして「こちらへどうぞ」と言って柔らかい仕草でパーティーを席に案内した。
「メニューが決まったら呼んでくれ。すぐに来るから」
それに給料だけど今回も高そうだ、そう言ってワンスマイル残して行くと夢主は配膳するために離れた。あぁ、ヤバい。何かしてるわけじゃないのに色気がある。ユーリは口許を押さえながら、懸命に働く夢主の姿を見ていた。
そして、ユーリの視線に気付いたのか夢主はユーリを見て、満面の笑みを浮かべて、
「ユーリ」
と口パクで呼んだ。
きっとこの笑みを自分だけに向けさせられるのも、あんな格好は自分の前だけにさせられるのも、近い未来であって欲しいな。ユーリはボンヤリと思った。
gdgdでまとまり無くてすいません…!ユーリは夢主さんが大好きという事を書きたかったんです!