短編
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「たまには女の子の買い物をしましょう?」
そう言ってジュディスは夢主を連れ出した。可愛い服に、可愛い飾り物。そんな店の中にいる夢主は少し浮いているように見えた。それは夢主が男のように見えるからだろう。そのためジュディスと一緒にいると美男美女のカップルに見える。だが夢主は可愛いリボンや服を見たまま動けない。
可愛いモノは好き。甘いものも好き。でも、自分は男っぽいから、そんなものを好きと言っても変な目で見られるし、自分に似合わないっていうのは百も承知だ。そう言われるのは、怖いし、自分で見て似合わないって思うのはもっと怖いから、要らない。試しに一つ持ってたら客か店員か分からない女の子達が「彼女にかな!?」と興奮しながら言っていた。そうして溜息を吐くと元のあった場所に戻した。あぁ、可愛いから後でこっそり買おうと思ったのに、と後悔した。
「夢主、どうかしら?」
そんな夢主にジュディスが持って来たのは、ワンピース。今居る町は日差しが強く、海が近いため服を買ったら、麦わら帽子をサービスしてくれる。
そのワンピースには麦わら帽子がとてもよく似合うのだろう。夢主はノロノロと見せられたワンピースを見る。夢主はそのワンピースとジュディスを見比べる。露出度の高い服を着こなす彼女には、とても似合いそうな服だ。そう思うと何だか後悔していた気持ちが一気に吹っ飛び、温かい気持ちになった。
「あぁ、似合うんじゃないか」
そう返してやればジュディスはキョトンッとして視線を落として夢主の胸を見ている。夢主もつられるように自分の胸を見たが、相変わらずのサイズだ。しいていうなればサラシを巻いているサイズだ。
何故サラシかといえば、帝都でエステルに仕えていた時、下着を買いに行く暇も無く、しかし膨らんでいくそれには無視も出来ず、仕方なくサラシを巻いたのだ。おかげで揺れる事もなく、戦うには随分と良い。但し、締め付けられて痛いのが難点だが。
「夢主、もしかしてサラシ…?」
「あぁ…。それがどうした…?」
「いけないわッ!!」
手に持っていたワンピースを投げそうな勢いでジュディスが言う。夢主はそれに気圧され軽く後ずさった。だがジュディスはワンピースを持ったまま夢主の肩をミシミシと鷲掴んだ。その細い腕にこんな力がどこに眠っているのか知りたいと思う。だが本当に彼女の愛用の槍が無くてよかった。彼女の愛用の槍があったら勢いのあまり間違いなく刺されていたに違いない。
「せっかく形が良くて程よい大きさの胸にそんな無粋なもの巻いたら…!下着は身体の成長に凄く影響するのよ。あぁ気付いて良かった。確かにサラシも萌えるけど、ちゃんと下着は付けて!店員さん!可愛いランジェリーあります?…え?どんなのが良い?何でも!とにかくすぐにお願い!」
あれよあれよという間にジュディスは店員を呼び、夢主が呆然としている間にランジェリーがある店の一角に連れて行かれた。もちろん客も店員も驚いていた。何せカッコいいと見ていた異性がまさかの同性だったのだから。
夢主は初めて見る大量のランジェリーに目を回しそうになった。がジュディスに「これなんてどう?」と渡された下着を見て顔を真っ赤にしたり、真っ青にしたりと忙しそうだった。何せ見た目は可愛いと思ってもそれは自分が付けるのだ。着けるにしても心情は好奇心1割、恐怖9割というところだろうか。
下着で終われば良いものの、ジュディスが目をつけていた服やら飾りやらを付けられ、着せ替え人形にされた。ジュディスはまるで新しい玩具を手に入れたかのようにとても楽しそうだった。ジュディスが満足する頃には荷物は山になるわ、目が回るわ、と夢主は泣きたくなった。
「……もう、帰ろう」
「まだダメよ、夢主を可愛く変身させたいんだから」
「しかし、ユーリ・ローウェル達が宿で待っているのではないか…?」
重くはないが随分と量の増えた荷物をぶら下げながら夢主が言う。街に着いて買い物に出掛けたのは昼頃。現在は日が沈み掛けている。皆が心配していそうな時間だ。それがわかったのかジュディスは「そうね…」と名残惜しそうに言った。夢主としては精神的にも肉体的にも疲れたのだ。早く帰って寝てしまいたいのが本心だ。
「帰ろう、ジュディス」
そう言って荷物を持たない片手をジュディスに差し出すと、ジュディスは驚いたようだったがクスクス笑った。夢主は何故笑われているのか分からず首を傾げている。しかしジュディスは何でもないと言って夢主の差し出されていた手を取り、手を繋いだ。
随分昔を思い出した気がする。名前を呼び、私と手を繋いで一緒に帰る、そんな記憶。懐かしくて、何だか胸がくすぐったくなるような優しい記憶。
私が振り返ったら夢主も振り返った。
「何か買い忘れたか?」
ふふっ、買い物に疲れてたのにアナタは優しいのね。だけど私が見たいのは私たちの影。
手を繋ぎまるでずっと一緒と言っているよう。あぁ、幸せ。アナタと手を繋いで、一緒にいられるんですもの。今度は買い物じゃなくて散歩とか話しながら歩くとか、手を放さない事をしましょう?
ジュディスがキュッと手に力を入れると夢主も力を入れて返した。
「今日はジュディスの食べたいものを作ろう」
2人は宿への帰路を歩き出した。楽しそうにジュディスが笑い、夢主はそんなジュディスを見て嬉しそうに微笑んでいた。
そして帰宅すると皆に怒られ、羨ましがられと忙しかったのは、また別の話。
ジュディスは夢主が人間としても女としても大好きなら良いな。