rkrn長編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初めてあの人にあったのは、1年生の時。ちょうどくのたまの制裁にあった頃、俺は2年生との実習で裏々山に行った。でも、ペアになったのは善法寺先輩で…、案の定、迷子になった。善法寺先輩は足を挫いて動けなくなって、俺も動けなくなって…。暗くなってくるし、どうしたらいいのか分からなくて、泣きたくても善法寺先輩が泣いちゃったから俺も泣くわけにいかないし。泣かないように腕を力一杯掴んでたら、声が聞こえた。
「こんなところで1年生と2年生が何してるの?」
そのくのたまの先輩に善法寺先輩は泣きついてた。みっともないなぁ。って、思った。だってくのたまは俺たちをいじめたじゃん。そう思ったら頭を撫でられた。
「よく、我慢したね…」
でもその笑顔はとても優しくて、先輩は俺と善法寺先輩を運んでくれた。こうやって手を繋いだのは初めてだった。母上は俺を好いていなかったから。たくさん話をした。先輩は梓季といって凄く優しい人で、銀色の髪で紅い目。綺麗な人だった。俺が見てきた中で1番綺麗な人。
2回目に会った時はくのたまの逆鱗に触れたとき。逃げ込んだ先に梓季先輩がいた。
また善法寺先輩が抱きついた。ムッてした。
3回目に会ったのは俺が会いに行ったから。木の下で眠ってた。
涙を流してた。
ねぇ梓季先輩。俺、あの時拭ってあげられなかったけど、今なら拭いてあげられる。だから教えて、今どこにいるんですか?
****⑥****
「――――………」
雨が降っていた。
ポタリ、血が落ちた。
最近学園を調べるどこぞの忍が彷徨いていたから、潰した。覆面をしていて顔が見えなかった。ズズズッ、肉に短剣が食い込む感覚。顔から覆面が落ちた瞬間、その顔が見えた。
私と同期の、くの一。
でもその顔は清々しくて、誰かの名前を呼んでありがとうと言って倒れた。私と唯一生き残った、卒業試験を乗り越えたくの一。忍びの世界はこういうものだと分かっていたはずなのに。今までだって、きっと覚えてないけど同期の忍者を斬ったと思う。でも、こうもまざまざと…、見せつけられて。
どうして、あの時も今日もみんな私にありがとうと言う?私は、あの時皆を斬った。あの男も。お前もどうして…!
「どうしたの、狼?」
びくりと身体が跳ねた。
見てみると尾浜が隣にいた。そういえば、ここは忍術学園であれがあったのは昨日だった。まだ、身体が震えてる。筆を持ちたくても、手もかすかに震えて文字がガタガタだ。笑ってしまう。忍者なのに、友を殺したというだけで震えるとは。忍者に向いてないなぁ…。
「狼…、何かあったのか…?」
ガタガタ震える手で、書いた紙を差し出すと眉を顰められた。やっぱり、みっともないかな。友を、殺しただけで震えるのは。失望しただろう。自分が憧れていた忍がこんな事で落ち込むなんて。
「…………」
ガタガタ震える手を握られた。手を絡めて、ギュッと握られる。暖かい。生きてるとはこんなにも暖かい。鼻の奥が熱くなる。
「狼の手、冷たいな…」
ここで大きな声で叫べればいいのに。大きな声で泣ければいいのに。そうしたら、きっとこの胸を押しつぶそうとしている鉛を無くせるかもしれないのに。それを出来なくしたのは、紛れもなく自分なのに。
「………」
感情を殺せればいいのに。
そうすれば、残虐なままで居られたのに。こんな苦しい思いをせずにすんだのに。あぁ、そういえば愁も忍なんて向いてないと言っていたな。私は優しすぎるから、と。優しいはずがない。優しければ人を仲間を殺すことなんてしなかった。涙を流すことが出来た。
「あ、狼、ごめん。明日三郎達と出かける約束してたんだ」
スルリと手が抜かれた。
あぁ、そうだな。
「じゃあ、また明日」
私は彼らの影でなくてはいけない。尾浜は明日のために早く寝なくちゃいけない。それを止める権利を私は、持たない。止めて側にいて欲しいと言って、側にいてもらう権利も力も私にはない。
ひらり、尾浜は降りていった。
でも願っても良いというのなら、言葉にして届けても良いのなら、
「行かないで、そばにいて」
風にも簡単にさらわれてしまうような声で、願い事を言った。届くはずもないのに。そうだ、死んでしまったアイツを埋めた場所に行って歌ってあげるよう。鎮魂歌を。迷わずに、来世へ行けるように。命を奪ってしまった私に出来るのはそれしかないから。
「狼!」
いきなり上がってきた尾浜。寝たんじゃなかったのか。
「明日の出かける時間、遅くしてもらった」
え……。
「三郎達と出かけるのも大事だけど、俺は狼との時間も凄く大切だから!」
ああ…。
どうして…!
どうして涙が出る!
どうして尾浜に抱きついた!
どうして私はあの時…、狼になってしまったんだ!!
「狼…?」
守ろうと誓って狼になったのに、今はその誓いがとても苦しい。誰か助けて…。
「大丈夫…、俺はずっと、そばにいるから」
(今まで大きかった背中が)(今日だけとても小さくて寂しく見えた)(まるで、)
あの人みたいだった。