rkrn長編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
1年生と2年生がくのたまの逆鱗に触れて、くの一教室に連れ込まれくのたま達に暴力されそうになったのを今でも覚えていた。それが文次郎や仙蔵、小平太(長次は巻き込まれたっけな)、俺に伊作。1年生は鉢屋と竹谷、尾浜だった。
くのたまの隙をついて逃げ出したがくのたまが追いかけて来て誰かの部屋に逃げ込んだら、その人はいた。
休みだったからよく覚えてる。その人は銀色の髪で、本を読み返していた。綺麗なくの一だった。低学年だった俺達は思わず見とれた(いや、多分今でも)。
「忍たまがくの一教室に何か用があったの?」
その人は本を閉じると俺達を見て問い掛けて来た。紅い目が血みたいで怖かった。でも、そのまなざしはとても優しかった。
「あ…、俺達……」
「ふぇ…!…ぅう…梓季せんぱぁい…!!」
伊作が泣き付いた。その瞬間俺は見逃さなかった。尾浜がムッとしたのを。幼かった俺にはよく分からなかったが今なら分かる。嫉妬だが、あれは姉を取られたというもののじゃない。愛する者を取られた時の嫉妬だ。
「どうしたの?また苛められたの?」
「ふぇえ…!」
抱き留めた梓季というくのたまは伊作の背中を撫でて胸に顔を埋める伊作を慰めてた。どうやら伊作はよくこの先輩に慰めてもらってるらしい。(ずるいじゃねえか!)
結局、ほとぼりが冷めるまでそのくのたまの部屋で過ごす事にした。良い匂いがした。俺達はいつの間にか昼寝をしていて、そのくのたまが布団を敷いてくれてその上で眠ってた。
それから何日か経ってから、先輩達が卒業試験の話をしてた。くのたまの6年生の生徒達と俺の委員会の…彼女持ちの委員長が顔を真っ青にしてた。後から聞いて俺達も顔を青ざめた。
くのたまの卒業試験は…、数人いる今まで友達だった仲間を殺して、くのたま6年生を2人まで減らすという内容。俺はそれを聞いてとても恐ろしい気持ちになったのを覚えてる。
でも試験が終わった後、食堂であの銀色の髪のくのたまを俺は見た。委員長の彼女は悲しい事に、…負けて亡くなったようだった。それでも委員長は泣いて銀色の髪のくのたまにありがとうと言っていた。理由は、見つけた遺体を全て持ち帰ったから。だから先生に怒られていた。
……俺が、もしその立場だったら…、同じ事をしたかもしれない。
「……ありがとう…」
ただ俺達に言ったあの言葉が今でも分からない。
****⑤****
夕日がさす河原を駆ける。先程様々な場所から情報を持ち帰るとそこには生徒達の姿は無く、何でも混合ダブルスサバイバルオリエンテーリングを行っていると学園長が言っていた。そして河原まで行くと土井先生が慌てて言った。
「5年生と6年生がタソガレドキに…!!」
それを聞いて駆け出した(筍を持って帰るのを手伝えーッ!と学園長に叫ばれた)(そんな事を私が知るか)。川を辿り河口に向かうとタソガレドキの陣が見えた。だが次にはうわぁあ!という叫び声。陣を飛び越えて中に入れば尾浜と竹谷と久々知が、包まれて、待て。それどこに持って行く気だ。まさか、殺す気、なの…。
ブチッと自分の何かが切れた。
手裏剣を放ち、苦無を持って一気に接近するとその首を取ろうとするが間に何かが飛び込んで来た。黒い忍装束だった。先生方では無い。片目だけを出した、顔は包帯を巻いた忍。忍組頭の、雑渡昆奈門。ギロリと睨めば楽しげな目でこちらを見ていた。
「やぁ、また会ったね」
声は楽しげなのに、力は暴力的で、拮抗しているようでプルプルと苦無と竹の棒が震えていた。
「殺気丸出しの忍は、失格だよ」
横から棒が振われる。それを飛んで避けると同時に暗殺用の八方手裏剣を投げる。棒で振われるが、隙が出来た。そこを斬りつけるが、頭巾を少し斬っただけ。
「ちっ……」
「凄いじゃないか」
互いに距離を取った。相手は相変わらずニコニコ。あ、舌打ちしちゃった…。声、分からないよ……ね…?ギュンッと一気に加速して接近する。今度は読んで来たようで突かれそうになるのを避けそのまま蹴りを入れる。バシンッと蹴りで返された。だが次の瞬間脚の武具に仕込んでいた刃が姿を現しその刃を振り下ろしたが竹の棒で受け止められる。しかしこちらの方が鋭利だ。スパッと棒を斬り、そのまま回し蹴りに入るが、私より雑渡の方が早い。間一髪その脚を受け止めた。危ない危ない…。そのまま脚を折ってやろうとしたが、逃げられた。
「やるねぇ。おじさん楽しいわ」
私は全く楽しくない。チラッと尾浜達が持って行かれた方を確認するが、目視は出来ない。
「学園の番犬。通称狼。本当の名も顔も外部には一切も漏れず。更に生徒にも明かした事のない顔と名。こちらからすると君が男か女さえも分からない」
「………」
「仕事では諜報を任せたらどこの軍の忍者よりも正確で大量の情報を集めて来る。とても腕の立つ忍者。更に今回の事で戦や暗殺も出来るという事が分かった」
「………」
「それに狙う部分が的確で正確だ。当たれば必ず死ぬような場所を突いて来る、……どう?タソガレドキに来ないかい?」
ヒュンッと苦無を雑渡の足下に投げる。却下と書いた紙をくくり付けて。相変わらず無口だねぇと言われた。うるさい、私の正体を何故敵に教えなくてはならない。腰部にぶら下げて居た短刀を引き抜いて構えた。相手は腐っても忍組頭、勝てるとは思わないが…、彼らを守らなきゃ…。
「トスをされたらいけどんどーん!!」
………いけどんどん…?!
2人で振り向くとそこには七松が、スパイクを打つために、……ってちょっと!!
―――――
やれやれ、生徒達帰って来たか。あの後、山田先生と厚木先生が来て情報を全て持っていらっしゃったからそのまま戻って筍を持って学園に帰って来たが…、生徒達、みんな筍ご飯を食べているな…。屋根の上から見ていると何かが登って来た。
尾浜だ…。
「はい、狼」
【なんだ】
茶碗を渡された。
「何って…、筍ご飯」
あぁ、そう言えば私、食べて無かったっけ…。
【ありがとう】
「どう致しまして」
ニコリと笑って尾浜は私の横に座った。モグモグと食べ始めた。
「あーあ…、俺…見たかったなぁ。狼の戦う姿」
【何故?】
「何故って…、プロの忍者とプロの忍者の戦いを見たいと思うさ!」
【そんなものか】
「そんなものだと思うけど?狼は凄いから」
俺の憧れだし、と尾浜は進めた。憧れ、か…。
「そうそう!1年生は俺の事を知らなかったみたいでさー、驚かれちゃったよ」
【そうか】
「俺、インパクト無いのかなぁ…」
【インパクト?】
「三郎ならマネっ子だし、雷蔵は優しいから後輩に慕われるし、兵助は豆腐だし、八左ヱ門は虫達とか生き物だし…」
【うん】
「俺には何にも無いからなのかなぁ…?」
あんまりに一生懸命悩むから、ポンと頭を撫でた。柔らかい髪の感触。尾浜は暫く固まってたが、すぐに復活して笑った。
「俺、狼に撫でられるの、好き」
【そうか】
「でも……、狼の手って綺麗だよね」
ガシッと掴まれた。
そしてまじまじと見られる。
「うーん…、確かにマメとかあるんだけど、」
まるで女の子見たいなんだよねぇ、
その言葉に危うく肩が跳ねるところだった。
「俺の手より小さいし。ほら」
手を合わせる。
確かに尾浜の方が大きい。
やっぱり、子供でも男なんだなぁと思えた。
「良い匂いするし」
【早く食べなさい】
(今は未だバレないで。分からないで)(分かったら君は多分、)(私を見て失望してしまうから)