rkrn長編
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昔の、私がまだ生徒だった時の記憶の夢。6年生の諜報の実技の帰り道だった。裏々山辺りだっただろうか?夕方、諜報を終えて、あとは報告だけ。
「うわぁー…ん…!」
……泣き声。
遠くはない。声がした方に駆け出した。この頃私はまだ進路を決め切れていなかった。勧誘して来る城も幾つかあったが、決めれなかった。わけの分からない殿のために仕えたくなかったというのが本音だった。だから私はずっと学園に居られる方法をずっと悩んでいた。
「うわぁあん…!」
「…伊作先輩、泣かないで下さい」
声がした所には1年と2年の忍たまが蹲っていた。泣いているのは2年。不運で有名な善法寺伊作と、誰だ。あの1年生は。……狸みたいな子だな。善法寺伊作は去年くのたまの洗礼にあっているのを助けた記憶があるからな。多分、あっちは覚えてないだろうけど。
「ご、ごめんね…!」
「………これだからは組は嫌いなんです…」
……なかなかな性格の1年生だな。だが、表情からは分かりにくいが自分を抱き締める手を見ると多分1年生も不安なのだろう。
「こんなところで1年生と2年生が何してるの?」
声を掛けると警戒されたが、善法寺は私を見ると警戒を解いて飛び付いて来た。…銀色の髪は特徴的だったから覚えていたか。
「梓季せんぱぁい!うわぁああああん!」
しゃがんで抱き締めて背中を撫でてやると、ひっくひっくとしゃっくりを繰り返す。1年生は溜息を吐いて立ち上がると私に近付いて来た。
「いつからここに?」
「結構前から」
「そう…。迷ったの?」
「はい」
「よく、我慢したね…」
頭を撫でてやれば1年生は照れくさそうに笑った。話を聞くと何でも合同授業でここまで来たが皆とはぐれてしまいしかも善法寺が足を軽く捻ってしまい動けなかったそうだ。
善法寺を背負い、1年生とは手を繋いで歩いた。忍狼を何匹か呼ぼうかと思ったが、善法寺は眠ってしまったし。何より1年生が嬉しそうだったから止めた。
「シナ先生」
「あら、どうしたの梓季」
「迷っていたので拾いました」
「そう。分かったわ」
あの1年生の名前を私は最後まで知ることはなかった。
****③****
「………はい?」
今日はくの一教室で合同見学があると聞いた。私の忍狼を見せて、忍者に使える獣の授業をするらしい。納得して部屋に籠っていたら忍たまの全学年の実技担当と教科担当の先生方がやってきた。そして第一声が忍たまにも忍狼を見せて欲しいと言って来た。
「あの、5、6年生はもうとっくに知っているんじゃ……」
大体私の忍狼じゃなくても学園長先生の忍犬ヘムヘムがいるし…。
「あの子たちにもそう言ったんだが…」
『先生ー、確かにヘムヘムは僕たちの言葉も分かって凄いですけどー…』
『忍者の獣って感じがしませーん』
あぁああ…、こりゃあヘムヘムの心を抉ったな…。大体私の忍狼だって犬科なのだから意味はないと…。
「頼む!この通り!!」
「……分かりました。くの一が終わったら来て下さい」
そこまで頭を下げられたら、分かったとしか言えない。さらしで胸を潰し、女特有の括れを無くし、偽物の肩幅を作り、顔を隠す布を巻いて私は外出届けを書いて裏々山に駆け出した。
―――――
くのたまが帰ったあと呼んでいた数匹の忍狼達は帰ってしまった。私の忍狼は1匹だったが子供を作ってしまい、今やその子供も私の忍狼となってしまった。そう考えると、彼らから見ると私は……お婆さん?
………なかなか切ない…。
声と賑やかな足音。遠足じゃないんだがなぁ、と思っていると見慣れない狼が2匹やってきた。もしかして子供なのか…?そう思っていると気配が50m先で止まった。どうやら忍たま達が到着したらしい。何やら不安げな雰囲気が漂って来る。
私はその場に座り狼が近付くのを待った。どの動物も相手を信用するための行動がある。犬は相手の尻のにおいを嗅ぐ事で挨拶になることと同じように。
狼はそれに匹敵する行動は、狼に口の中を舐めさせる事。いわゆるベロチューという奴だ。
尖った鼻で顔を覆う布をつつかれる。少しずらして口を出して開けばペロペロと口の中を舐められた。……毎度ながら獣臭い。だが、これをしないと仲間になるどころじゃないからなぁ。もう1匹も舐めて来る。…ベトベトだ。口を隠し直して狼を撫でてやると、擦り寄って来た。するとノシノシとした足音。私ほどの高さがあり、全長も普通の狼より大きい、私の忍狼―名を愁という。名前から分かるように雄の狼だ。
立ち上がって近寄って来る愁に手を伸ばせば尖った鼻で私の掌をつついて舐めて来た。
微かに忍たま達の歓声が聞こえる。
私の忍狼達には各城に1番近い山で見張らせて居るから情報が入ると愁から私に伝えられる。愁は私の耳元で囁いた。
タソガレドキが竹を伐採していると。
それと同時に感じた視線。辿っていけば木々との間に小さく見えた赤い忍装束。サングラスをつけてる。ドケタケの忍者…、か?愁達も私の見て居る者に気付いたのかグルルと喉を鳴らす。
「国境まで、追い払え」
そっと囁けば彼らは空を切り駆け出して行った。忍たま達は何が起こったのか分かって居ない、と思う。目をキョトンとさせているから。私は報告のために駆け出した。
―――――
いつものように5年生の長屋の屋根のに向かうと、尾浜達5年生が何やら話してた。近付くと尾浜は私に気付いたのか顔を上げて笑った。その目は輝いている。
【何かあったのか】
そう問うとカッコ良かったと尾浜は言った。あぁ、愁達の事かとすぐに思い当たった。生物委員が確かに狼を拾った事があったがあれは人に懐いていたからな。狼というより犬に近いものだったし。
「ただ、なぁ…」
鉢屋が言った。
ただ、なんだ?
「口の中を舐められるのはどうも……」
【食われるよりマシだろう?】
「た、確かに…。でも舐められるのは…!」
不破が悩み始めた。
やれやれ、彼の悩み癖はあまりいいモノじゃないぞ。
あぁ、そういえば…。
【尾浜】
「なに?」
【明日からは会えない】
「………何で!?」
声を荒げた尾浜に少し驚いたが、話を進めた。
【忍務だ】
「あ……、」
彼らも改めて私との距離に気付いたのだろう。彼らは忍者の"卵"。私は本物の忍者。彼らにも忍務は与えられるが、私とは質が違う忍務。仕方がないのだ。尾浜は俯いている。そこからは表情が読めない。
【……そんなに落ち込むな】
さらさらとそう書いて尾浜に見えるようにすればガバッと顔を上げて強気な目を見せた。
「落ち込んでなんか…!」
「嘘吐け。勘右衛門、お前最近狼の事ばかりを話すじゃないか」
「三郎はうるさい!」
そう言って外方を向く尾浜。何だか可愛く感じた。だが、忍務をおざなりには出来ない。尾浜が向いた方に回り込むと小指を出した。
【指切りげんまん】
「……また無事に帰るっていう?」
【あぁ】
暫く尾浜は私の小指を見ていたがスイッと出してくれた。
「約束だからな」
【あぁ、分かった】
「あのーお2人さん、」
「私たちもいる事忘れるなよー」
尾浜の頭を撫でてやると竹谷と久々知がジトリとした目で見て来た。
「おい!狼!てめぇ勝負しやがれ!!」
声がした。
下を覗き込むと潮江と食満がいた。やれやれ…、血気盛んだな。
(約束を結んだ小指が熱くて、)(溶けてしまいそうで、)(その熱が愛しかった)