rkrn長編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「先生!どういう事なんですか!」
勘右衛門が吠える。竹谷と久々知が抑えるが、勘右衛門は暴れる。
「何で…!なんで梓季先輩が!」
「落ち着けって勘ちゃん!」
「なんで落ち着いてられるんだよ!」
ごめんね。
悲しそうな、梓季の声。久し振りに見た梓季は大人びていて、それでも寂しそうな顔だった。会いたくて、会いたくてたまらなかったあの人はこんなに近くにいたのに自分は気付かなくて、そして自分が。
梓季を傷付けた。
「勘右衛門、あれは梓季が望んだ事だ」
教えられた、梓季先輩の覚悟。
この学園が大好きだから、自分の名前を捨てて、顔も隠して、ずっと勘右衛門達を守り続けてきていたのだ。いつもあんなにそばにいて話したりもしたのに、勘右衛門が自分を責める。
「だが、覚悟を違えたのだから梓季が次に顔を見せに来たら別れだな」
その言葉は勘右衛門だけでなく、その場に居る者達の胸に突き刺さっ[_FS_AU_SEP_]た。
****⑪****
意識がゆっくりと浮上して、生暖かい何かに頬をベロベロ舐められて居るのだと気付いた。目を開ければ狼が私の顔を覗き込んでいる。力無く笑うとポンッと頭を撫でた。
ここは愁の巣穴で、あぁ…、そうだった。
全てを思い出し、重たく息を吐いた。巣穴の外には愁や愁の子供がいる。起き上がって自分の顔を舐めていた狼と一緒に外に出ると、愁は近付いて来て尖った鼻を頬に押しつけフサフサとした毛を擦り付ける。獣の匂い。そして、微かに火薬のにおい。
「戦…?」
「あぁ…」
愁が憎たらしげにある方角を見ながら答えた。近くで戦、下手したら忍術学園にも被害が、………、あぁ、そうだった…。私はもう、あそこで笑い合う資格も、生徒を支える資格も、無いんだった…。生きる目的が無くなったとは、まさにこの事をいうんだな…。そう考えたら目の奥と鼻の奥が熱くなって、目の前がぼやけた。
あの日から、顔を隠す事を止めた。
それは、もう狼として生きて行けなくなったから。だからだ。ならば、あの時に[_FS_AU_SEP_]死んだ筈の梓季も、もう…。
「見回りを頼む…、何かあったら連絡して…」
そう指示を出せば弾かれたように狼達は駆け出して行った、が愁だけはそこから動かなかった。ただじぃ…と私を見つめている。なんだ、と問えば近付いて来てベロリと舐められた。
「泣くな」
「……ごめんね…」
好きだった。
本当に、好きだったんだ。
守りたかった。
そばにいて、ひっそりと想っていたかった。
私は番犬だから、せめて尾浜が学園を卒業するまで、そばに居たかった。
想いが通じなくても良い。ただ、あの、私には無邪気に見えたあの笑顔を守りたかった。
『山田先生…、どういうことですかこれは…』
震える声。
悔しさなのか、怒りなのかは分からない。ただ、私には良い感情ではないというのだけは分かった。あぁ、私には、梓季じゃあ守らせてくれないんだ。そばに居させてくれないんだ、そう感じた。
涙を零すように、想いも零れ落ちて枯れ果てれば、どれだけ楽なんだろう。でもいくら涙を流しても、逆に想いは大きくなるばかり。[_FS_AU_SEP_]辛いよ。尾浜。この想いを、捨てたいよ。大切だと、好きなんだと想うこの想いを。
「やれやれ、忍が涙を流してどうするの」
「!?」
嫌な、声。
声がした方を見ると黒に近い色の、忍装束が見えた。
タノガレドキの忍と、忍組頭。
咄嗟にクナイを構える。愁もそちらを見て唸り声を上げる。
「何もしやしないよ。ちょっと伊作くんの頼みで来たんだ」
伊作…?善法寺伊作か…、なんでまた…。いや、あのオリエンテーリングの時に得た名前をただ利用しているだけなのかもしれない。構えを解かずに睨む。だが、忍組頭…雑渡昆奈門はそんな事お構いなしに話を進める。
「伊作くんから。お話出来ませんか、だって」
出来ない。
そんな事分かっているじゃないか。次に私があの学園を訪れたら、私は自分の命を断たねばならない。話なんてしている暇などない。
そんな私の考えが分かったのか雑渡昆奈門はまぁ無理だよねと言った。
愁が、今にも雑渡昆奈門達を噛み殺すために脚に力を入れているのが見える。
「じゃあ私[_FS_AU_SEP_]の用件」
……雑渡昆奈門の、用件……?その言葉に眉を顰めて、今日は顔を隠していない事を思い出す。雑渡昆奈門は嬉しそうに私の顔を見つめながら言った。
後ろに、2人。
肘鉄からの攻撃が、背後に居た敵に当たる。しかも大当たり。腹を抱えた敵は大きく跳んで雑渡昆奈門の後ろに着地した。雑渡昆奈門は何かを考えるような仕草をして、目元を三日月のようにすると笑った。
「タソガレドキにおいで」
確かに、そう言った。
何度も勧誘されたが、今回は何だかいつもと違って聞こえた。まるで逃げ道を全て断たれてしまったかのようなそんな感じ。
「忍術学園に戻れば自害するんでしょ?そんな勿体ない、ならウチで働きなよ」
「却下。大体、」
「あの子の事、忘れさせてあげるよ」
身体が震えた。
さっきまで確かにこの想いを捨てたいと願っていたのに。忘れさせてあげると言われて、その言葉に恐怖を抱いた。
「人前に出るのが辛いなら囲ってあげよう。愛されたいと願うなら、愛してあげる」
怖い。
ただ、そう感じた。
身体が震えて、想いが悲鳴[_FS_AU_SEP_]を上げる。もしかしたら本当は雑渡昆奈門に囲まれたら、幸せなのかもしれない。辛くないし、何より忍から離れられる事で人の死から目を逸らせる事が出来るのかもしれない。
甘美で、魅力的で、優しい誘惑。
だが、それはただの逃げ道でしかなくて。
「……、私の命は、あの学園のものだ…」
私が求めている人は雑渡昆奈門ではなく、尾浜だから。
「だから、その誘いには乗れない」
「うん、知ってる」
………ん?
なんで雑渡昆奈門が答えるんだ…?
「大体、忍が忍の事簡単に信じちゃダメでしょ」
……ムカつく。
「やっぱり、雑渡昆奈門なんて嫌いだ」
そう言うとニッコリ微笑まれた。
「お生憎様、私は君がお気に入りなんだよ」
雑渡昆奈門の後ろにいる部下が哀れんだような目を向けて来た。そんな目で私を見るな。
「まぁ、その命要らなくなったら拾ってあげるよ」
じゃあね、と言って雑渡昆奈門達は居なくなった。…、何しに来たんだ……、一体……。
「追うか?」
「いや、必要ないよ」
害を与えたわけではないから[_FS_AU_SEP_]な。それより、
「愁、行こう」
さぁ、行こう忍術学園へ。
(愁は嫌そうな顔をした)(その前に準備をしないとな)(最後に一つ、華を咲かせるとするか)
勘右衛門が吠える。竹谷と久々知が抑えるが、勘右衛門は暴れる。
「何で…!なんで梓季先輩が!」
「落ち着けって勘ちゃん!」
「なんで落ち着いてられるんだよ!」
ごめんね。
悲しそうな、梓季の声。久し振りに見た梓季は大人びていて、それでも寂しそうな顔だった。会いたくて、会いたくてたまらなかったあの人はこんなに近くにいたのに自分は気付かなくて、そして自分が。
梓季を傷付けた。
「勘右衛門、あれは梓季が望んだ事だ」
教えられた、梓季先輩の覚悟。
この学園が大好きだから、自分の名前を捨てて、顔も隠して、ずっと勘右衛門達を守り続けてきていたのだ。いつもあんなにそばにいて話したりもしたのに、勘右衛門が自分を責める。
「だが、覚悟を違えたのだから梓季が次に顔を見せに来たら別れだな」
その言葉は勘右衛門だけでなく、その場に居る者達の胸に突き刺さっ[_FS_AU_SEP_]た。
****⑪****
意識がゆっくりと浮上して、生暖かい何かに頬をベロベロ舐められて居るのだと気付いた。目を開ければ狼が私の顔を覗き込んでいる。力無く笑うとポンッと頭を撫でた。
ここは愁の巣穴で、あぁ…、そうだった。
全てを思い出し、重たく息を吐いた。巣穴の外には愁や愁の子供がいる。起き上がって自分の顔を舐めていた狼と一緒に外に出ると、愁は近付いて来て尖った鼻を頬に押しつけフサフサとした毛を擦り付ける。獣の匂い。そして、微かに火薬のにおい。
「戦…?」
「あぁ…」
愁が憎たらしげにある方角を見ながら答えた。近くで戦、下手したら忍術学園にも被害が、………、あぁ、そうだった…。私はもう、あそこで笑い合う資格も、生徒を支える資格も、無いんだった…。生きる目的が無くなったとは、まさにこの事をいうんだな…。そう考えたら目の奥と鼻の奥が熱くなって、目の前がぼやけた。
あの日から、顔を隠す事を止めた。
それは、もう狼として生きて行けなくなったから。だからだ。ならば、あの時に[_FS_AU_SEP_]死んだ筈の梓季も、もう…。
「見回りを頼む…、何かあったら連絡して…」
そう指示を出せば弾かれたように狼達は駆け出して行った、が愁だけはそこから動かなかった。ただじぃ…と私を見つめている。なんだ、と問えば近付いて来てベロリと舐められた。
「泣くな」
「……ごめんね…」
好きだった。
本当に、好きだったんだ。
守りたかった。
そばにいて、ひっそりと想っていたかった。
私は番犬だから、せめて尾浜が学園を卒業するまで、そばに居たかった。
想いが通じなくても良い。ただ、あの、私には無邪気に見えたあの笑顔を守りたかった。
『山田先生…、どういうことですかこれは…』
震える声。
悔しさなのか、怒りなのかは分からない。ただ、私には良い感情ではないというのだけは分かった。あぁ、私には、梓季じゃあ守らせてくれないんだ。そばに居させてくれないんだ、そう感じた。
涙を零すように、想いも零れ落ちて枯れ果てれば、どれだけ楽なんだろう。でもいくら涙を流しても、逆に想いは大きくなるばかり。[_FS_AU_SEP_]辛いよ。尾浜。この想いを、捨てたいよ。大切だと、好きなんだと想うこの想いを。
「やれやれ、忍が涙を流してどうするの」
「!?」
嫌な、声。
声がした方を見ると黒に近い色の、忍装束が見えた。
タノガレドキの忍と、忍組頭。
咄嗟にクナイを構える。愁もそちらを見て唸り声を上げる。
「何もしやしないよ。ちょっと伊作くんの頼みで来たんだ」
伊作…?善法寺伊作か…、なんでまた…。いや、あのオリエンテーリングの時に得た名前をただ利用しているだけなのかもしれない。構えを解かずに睨む。だが、忍組頭…雑渡昆奈門はそんな事お構いなしに話を進める。
「伊作くんから。お話出来ませんか、だって」
出来ない。
そんな事分かっているじゃないか。次に私があの学園を訪れたら、私は自分の命を断たねばならない。話なんてしている暇などない。
そんな私の考えが分かったのか雑渡昆奈門はまぁ無理だよねと言った。
愁が、今にも雑渡昆奈門達を噛み殺すために脚に力を入れているのが見える。
「じゃあ私[_FS_AU_SEP_]の用件」
……雑渡昆奈門の、用件……?その言葉に眉を顰めて、今日は顔を隠していない事を思い出す。雑渡昆奈門は嬉しそうに私の顔を見つめながら言った。
後ろに、2人。
肘鉄からの攻撃が、背後に居た敵に当たる。しかも大当たり。腹を抱えた敵は大きく跳んで雑渡昆奈門の後ろに着地した。雑渡昆奈門は何かを考えるような仕草をして、目元を三日月のようにすると笑った。
「タソガレドキにおいで」
確かに、そう言った。
何度も勧誘されたが、今回は何だかいつもと違って聞こえた。まるで逃げ道を全て断たれてしまったかのようなそんな感じ。
「忍術学園に戻れば自害するんでしょ?そんな勿体ない、ならウチで働きなよ」
「却下。大体、」
「あの子の事、忘れさせてあげるよ」
身体が震えた。
さっきまで確かにこの想いを捨てたいと願っていたのに。忘れさせてあげると言われて、その言葉に恐怖を抱いた。
「人前に出るのが辛いなら囲ってあげよう。愛されたいと願うなら、愛してあげる」
怖い。
ただ、そう感じた。
身体が震えて、想いが悲鳴[_FS_AU_SEP_]を上げる。もしかしたら本当は雑渡昆奈門に囲まれたら、幸せなのかもしれない。辛くないし、何より忍から離れられる事で人の死から目を逸らせる事が出来るのかもしれない。
甘美で、魅力的で、優しい誘惑。
だが、それはただの逃げ道でしかなくて。
「……、私の命は、あの学園のものだ…」
私が求めている人は雑渡昆奈門ではなく、尾浜だから。
「だから、その誘いには乗れない」
「うん、知ってる」
………ん?
なんで雑渡昆奈門が答えるんだ…?
「大体、忍が忍の事簡単に信じちゃダメでしょ」
……ムカつく。
「やっぱり、雑渡昆奈門なんて嫌いだ」
そう言うとニッコリ微笑まれた。
「お生憎様、私は君がお気に入りなんだよ」
雑渡昆奈門の後ろにいる部下が哀れんだような目を向けて来た。そんな目で私を見るな。
「まぁ、その命要らなくなったら拾ってあげるよ」
じゃあね、と言って雑渡昆奈門達は居なくなった。…、何しに来たんだ……、一体……。
「追うか?」
「いや、必要ないよ」
害を与えたわけではないから[_FS_AU_SEP_]な。それより、
「愁、行こう」
さぁ、行こう忍術学園へ。
(愁は嫌そうな顔をした)(その前に準備をしないとな)(最後に一つ、華を咲かせるとするか)