skdy
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
目は口ほどに物を言う、なんてことわざがある。
ただ言葉を理解出来てもそれを読み取れる人と、読み取れない人に別れることわざでもあると思う。
私は、前者。
……だと思う。
心なんて読めないし、空気を読むことも何となくでしか出来ないけど、相手の視線や態度、表情から何となく気持ちを察することは得意だ。
「おい!ルー!!」
例えば、隣のクラスの朝倉シン君。
今日も(知り合いらしい)中等部最高学年の陸少糖、ルーちゃんや坂本先輩達と一緒に帰るのか、学校の玄関を一緒に出て行く姿を私は教室から眺めていた。
朝倉君は、読み取れない人、いわゆる後者だろう。
彼は太陽のような男子で、自分より他人の事を優先して考えられる優しい暖かい人で、その人柄に惹かれる人は沢山いる。なのに気付かないから多分後者。
ルーちゃん
学年は違うけど虎丸尚ちゃん。
赤尾晶ちゃん。
アタリちゃん。
先輩の南雲先輩や坂本先輩達も…。
彼らの目は朝倉君を信頼しているという目もしている人もいれば優しい目を向ける人もいる。その優しい目が恋人に向けられるようなものかといえば不明だけど。
何故私が変に朝倉君を意識しているか。
それは今日の昼休みに友人達が何気なく放った言葉のせいだ。
「朝倉って、アンタの事好きだよね」
「は、ぇ?」
今日のお弁当も美味しいなぁなんて食べてたら友人がそう言い放った。危うく卵焼きを落としかけてしまう。危ない危ない…。
ってそうじゃない。
「なんで?」
友人が何故そう感じたのか分からない。
確かに朝倉君とは委員会が一緒だ。だけどそれだけで同じクラスというわけでもない。何せ彼は勉強の出来るタイプの授業をサボったりする、いわゆる不良と呼ばれるやつだ。委員会の時だって隣の席だけどよく机に突っ伏して寝てる事も多い。(時々お菓子くれるけど)
落としかけた卵焼きを口に運び、咀嚼していると呆れたように友人達ははぁ~?と声を出した。
「アンタね、朝倉があんな風に絡むのアンタぐらいだからね!」
……えぇ…?
朝倉君があんな風に絡むの…、って言われても…。
今日は、確か…、たまたま授業で使う教材を取りに行ったら、部屋の前に朝倉君がいて。
「手伝う」
「え、良いよ。朝倉君、隣のクラスだし…」
「いいんだよ、さっさと行くぞ」
教材持って出て来たら、朝倉君がまだいて。
素っ気なく言われたかと思ったら、奪い取るように教材を半分以上持って行かれた。慌てて追いかけて教室に戻ると、男子が「朝倉、クラス間違えたか?」なんて笑いながら言っていた。
「手伝いだ、手伝い」
そんな男子達を一蹴するように朝倉君はそう言うとじゃあな、と言って去って行ってしまった。
この一連やり取りが、あんな風ってこと?
「……?あれで?まさか」
朝倉君はさっきも言ったが女子の競争率は学校一モテる(と言われているけど実際は不明な)南雲先輩の次に激しい。
そんなわけがない。
大体、こんな凡庸でそこいらの何処にでもいるモブみたいな私に朝倉君が好きになるわけがない。そう続けると友人達は更に大きな溜息を吐いて、私の頭をペシンと叩いた。
「アンタね、いつもの洞察力どうしたよ?」
「なに?他の人のことじゃないと発揮されないタイプ?」
ずいずいと責めて来る友人達に私は叩かれたところを撫でながら何も言えなくなる。
「アンタが見抜いた生徒は数知れずなのに。まさか自分のことになると疎くなるとはね…」
「見抜くなんて…」
大体数だってそれほどじゃない。
例えば、学年一のマドンナちゃんはよく南雲先輩と話をしていると有名で、付き合うのも秒読みか、みたいな事になってた。でも、実際は南雲先輩と話をしている時と、坂本先輩と話をしている時にかなりの差があったから、すぐにマドンナちゃんが坂本先輩狙いと分かった。(そして速攻フラレてた)
南雲先輩は赤尾先輩とデキてるみたいな噂も聞いたけど、あれは完全に白。あの絡み方や、話の仕方からしてまず赤尾先輩が南雲先輩を男として見てなさそう。南雲先輩も以下同文。(その事を言ったら、先輩達は目を見開いていたし、その真実を広めてくれ!と声を大にして言われた)(よっぽど困ってたんだなぁ…)
有名なところはそれぐらいだし。
他はやれあの子は私のこと嫌ってる(実は嫌ってるんじゃなくて距離の取り方がわからず困っていただけ)、やれあの子は俺のこと好き(君じゃなくて君の隣にいる男子が好き)みたいな事ばかり。
そんな事があったからちょっと朝倉君を意識したけど。そんな事しなくても良かったみたい。明らかに朝倉君は私をそんな目で見てない。大体あの後は絡みに来なかったし。ホームルームが終わると坂本先輩達やルーちゃん達と一緒に帰ったし。朝倉君は私に何の興味もない事が分かった。
少しホッとした。
だって、そうでしょ?
自分のことになると疎くなるんじゃない。認めたくないだけ。
だってもし、朝倉君が友人の言葉通りだったら、きっと私は、いつか捨てられる。
そんな人に好かれるほど特別な人間じゃないから
それに、私は洞察力が人よりちょっと優れている。
朝倉君が本気じゃないことだって、遊び半分で言ってきていることだって分かってしまう。
それに、
「好きで、見抜いてるわけじゃないよ……」
私の声はクラスメイト達の声にあっという間にかき消された。
見抜かなきゃ。
見抜かなきゃ。
笑われる。
バカにされる。
目を閉じれば、瞼の裏には私を指さして笑う人達。中学時代、いわゆるカースト上位の人間に絡まれたことがある。いわゆる告白ゲームというやつだ。好きではない男子からの告白に私は真面目に答えて断った。それを見てカースト上位の人間達は笑っていた。
それ以来人の目が怖かった。
あの時見抜いていれば、あんな事にはならなかっただろう。
私は臆病なのだろう。
「帰んねぇの」
突然声をかけられて驚いて跳ねた。心臓が激しく鼓動を打ってる。声がした方を見れば同じクラスの勢羽君がそばに立ってた。
勢羽君はあまり表情とかで示す人間じゃないけど、行動で示すタイプ。あまり女子と関わらない彼が、私に声をかけてきている。周りを見るともうクラスメイト達は居なくなってた。友人達も今日は彼氏とデートと言っていたから居なくなっている。
いつもなら、ここでたとえ女子が一人残っていようが無視をして勢羽君は帰ると思う。でも、今日は声をかけてきた。…………いや、変な深堀りは止めよう。声を掛けてくれたのは厚意として受け止めよう。
「もう帰るよ。声かけてくれてありがとう、勢羽君」
そう言って勢羽君を見上げながら立ち上がる。勢羽君の表情は変わらない。
無表情。
勢羽君自体が感情を表に出すような人間じゃないからなぁ…。
なんて思いながら、鞄を持ち勢羽君にじゃあね、と挨拶し、教室を出た。随分長く教室でぼんやりしたいのだろう。空は薄暗くなっている。
溜息を吐いて、階段を降り、玄関に辿り着く。
靴を履き替え、ふと玄関の外を見ると少し傷んだ金糸の後ろ髪が見えた。
「朝倉君……?」
服は私服になっているところを見ると、一回帰ったのだろう。誰かと待ち合わせでもしているのだろうか?
ルーちゃんとか?
アタリちゃんかも…?
……まぁ、私には関係ない事だ。
鞄を肩にかけて、玄関を出る。そしてそのまま、朝倉君の横を通り過ぎる。
筈だった。
手を掴まれた。
それに驚いて振り返ると、朝倉君が少し慌てたような顔をしていたけど、私と視線が合うとあー…と言って視線を逸らした。
「朝倉君、どうしたの…?」
いつもならズバッと言う朝倉君が、どこか言いづらそうに言い淀んでいる。どうしたんだろう…?
朝倉君の様子言い淀んでいる姿を見ていると、中学時代のあの時が少しフラッシュバックする。
あぁ、朝倉君も、そういう事をするのかな…。朝倉君はそんな事しないと思っていたから、少し悲しくなった。
何処にでもいるモブAなら、こういう事をして傷付けても良、
「違う!」
突然、朝倉君が叫んだ。
それに私は驚いた。朝倉君は私の肩を掴むと玄関に押し付けてきた。
え、え……?
私、なんか言った…?
意識しない内に言葉が出てた…?
頭の上をクエスチョンマークが飛び交う。
朝倉君は顔を俯かせていたけど、顔を上げる。
頬を赤らめて、キッと私を見る。
「お前の事、モブだなんて見たことねぇよ…!」
え、
「俺はお前の事、そこら辺にいる女と一緒にしたことなんて一度もねぇからな…!」
え、え、
「俺、お前の事……!」
******
なるほど。
朝倉君は心が読めるらしい。
だから、突然大きな声で叫んだのか…。いや、確かにタイミング的にはそんなんじゃないかなぁ、とは思ったけど。でもそうカミングアウトされると、納得だなぁ。
「……、変とか思わねぇのかよ」
「…………?何で?」
隣を歩く朝倉君はどこか落ち込んでいるような、表情が暗い。
「そりゃあいきなり心が読めます、なんて言ったら普通の奴なら疑ってかかるだろ」
そう言ったのは私を挟んで朝倉君とは反対隣にいる勢羽君だった。
あの後、朝倉が何かを伝えようとしたら、
「クソエスパー、まだイチャついてたのかよ」
勢羽君がやって来た。
それによって勢いを削がれた朝倉君は勢羽君に怒ったかと思ったら、次には落ち込んでいた。
「エスパーってなんの事?」
「コイツ、心読めんの」
「バッ、勢羽!てめぇ言うんじゃねえ!!」
それには流石に目を丸くしてしまった。
帰りながら更に説明してくれた勢羽君や、未だに落ち込んでいる朝倉君に送ってもらいながら私は心が読めるのかぁ、なんてぼんやりと思った。
確かに、朝倉君は私が困ってる時とかよく助けに来てくれたし。なるほど、タイミングが良いんじゃなくて、心を読んで私を助けてくれてたのか。
「何度も助けられてるから。疑うというよりは納得、かな」
そう言いながら朝倉君を見ると、朝倉君と目が合った。どうやら私を見ていたらしい。
「いつもありがとう、朝倉君」
「別に……」
ごにょごにょとその後何か言っていたけど小さすぎて聞こえなかった。
「じゃあ私、家こっちだから」
「家まで送るぜ?」
「もうすぐそこだから大丈夫だよ」
分かれ道で私は自分の家の方を指さし、そっちの方へ行く。勢羽君はじゃあな、と言って歩き出した。朝倉君はどこか名残惜しそうに私を見て、歩き出そうとする。
「朝倉君」
朝倉君に声を掛ける。
「また、明日ね」
明日、一緒に帰ろうね。
心の中でそっと伝える。
朝倉君はそれを読んだのか、少し顔を赤らめて、大股でこちらにやって来る。そして私の目の前まで来ると恐る恐るだけど、私を抱き締めた。
「明日絶対伝えるからな…!」
もう、伝わってるよ。
「うん、言葉も待ってるね」
その広い背中に手を回して、私はそう伝えた。
