skdy
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シン君の一番は、坂本さん。
いつだったか、どれだけ坂本さんを慕って憧れているかをイートインスペースで熱弁された。ガラス越しに坂本さんを見ると坂本さんは新聞を読んでいた。普段は無関心なように見えるけど、坂本さんはスイッチが入ると、とても格好いいらしい。
でも、私には…。
そこまで思ったけど少し頭を振って、雑念を振り払った。分かっている。私の好きな人にはきっとこの気持ちは届いてはいけない。
否、届くことはないのだ。
シン君は楽しそうに私に話しかけてくれている。きっと私はシン君にとって坂本さんの話が出来る数少ない友人(下手したらそれ以下)なのだろう。
「シンー!早く手伝うネ!」
そんな話をしていると品出しをしていたはずのルーちゃんが自動ドアから顔を出した。
「ったく、俺今休憩中なんだぞ…」
そう文句を言いながらもシン君は立ち上がった。そして申し訳なさそうに私に謝ると店に戻って行った。楽しそうにじゃれる二人を見て、胸がもやもやした。
きっと、シン君の中でルーちゃんもまた大切な人なんだろうなぁ。
私には座れないその席に、ルーちゃんは居る。嫉妬というよりは、もう諦めだった。だって、私にシン君はあんな表情見せてくれないから。
私にとって、格好いいのも、一番なのも、シン君だ。
でも、私はシン君の一番にはなれない。
私ばかりが、シン君に振り回される。
虚しくて、悲しくて。
そんな嫌な感情を吐き出すように、大きく溜息を吐くとスマホを取り出した。友人から合コンに参加してくれないかと言われていたのだ。一応返事は保留にしていたが、素早く了承の返事を送った。
チラッとシン君を見ると、シン君は何やらルーちゃんに耳打ちされて、顔を赤くしている。
お似合いな二人の間に私が割って入れるわけがない。
そう、自分に言い聞かせ、立ち上がってレジ袋を持った。
******
合コン、失敗だ。
合コンに参加すると、一人の男性がめちゃくちゃ絡んできた。
主に内容は自分の自慢話。
適当に相槌かましてたら気に入られたのか、抜け出さないかと言われた。気持ち悪いなぁ、なんて思いながら拒否して、自分のお代を置いて帰ろうと立ち上がる。足早に店を後にするけど、男が追いかけて来た。
あぁ、シン君を忘れたいと思って参加したのに、変なのに目をつけられるなんて…最悪だ。
溜息を吐いて逃げるように歩くけど、公園の前まで来ると腕を掴まれた。男は程よく酒が入っていて気が大きくなってるのか、自分に気があるんだろう?みたいな事を言ってくる。
拒否して振り払おうとするが、それが気に入らないようで男の怒りに触れたのか、パンッと乾いた音が響いた。
頬を叩かれたようだ。
驚いて涙が浮かぶけど悔しいけど、あぁ、罰が当たったんだと思い、こんな目に遭うのは仕方ないのかな、とも思ってしまう。
そして、男が私を引っ張って行こうとした。恐らくあのいかがわしいホテルに連れ込む気だろう。抵抗する気も失せた。
次の瞬間。
グイッとさらに強い力で肩を後ろから引かれた。男の手がその力に負けてほどける。トンッと背中に誰がいて、私を抱きとめてくれた。顔を見ようとしたら、頭を押さえられ胸に顔を埋めてしまう。
「ひっ、」
男のみっともない引きつったような悲鳴。そして、次には逃げ去って行ったのか足音が遠ざかって行った。
それに安心する。そして力が緩んで、助けてくれた人の顔を見上げる。
「シンくん………?」
驚いて、うまく呂律が回らなかった。シン君は私を見下ろしていた。
「あれ、誰だ」
ピリッとした空気が流れる。
いつもの太陽のような笑顔のシン君ではない。
瞳孔が開いて、怒っているのが分かる。それが恐ろしくて、視線をシン君の胸に向ける。
「合コンに参加して、」
「合コン?」
「絡まれて、困ってた」
絞り出すように感謝の言葉を言うと、シン君は叩かれた頬をそっと触れた。
「ッ……」
少し痛くて、声が漏れた。
「大丈夫か……?」
「大丈夫。少し痛かっただけ」
チラッとシン君を見上げると、いつもの優しい顔のシン君に戻っていた。見間違い…?
内心首を傾げていると、シン君は持っていたタオルを公園の水道で濡らして私の頬に押し当てた。そして、坂本商店に連れて行ってくれるとちょうど店番をしていた葵さんと坂本さんが私を見て手当てをしてくれた。
「坂本さん、俺ちょっと野暮用出来たんで行ってきます!すぐ戻るんで!!」
そう言ってシン君は私の頭をポンポンと撫でる。
あぁ、あなたの一番になれないと分かっている。
それでも、そんな優しい仕草に私は惹かれるんだ。
そう思いながら駆け出していくシン君を私は見送った。
******
優しい、陽だまりのような女。
欲しいと、隣りにいて欲しいと願った。
共通の話題なんて分からなくて、坂本さんの話をするのが精一杯。
「シン、あの人のこと好きなら何で言わないネ」
ニヤニヤ笑いながら言うルー。
チラッと先程まで話していた女を見ると少し悲しそうにスマホを眺めていた。
そして。
そして。
「ま、待て……!謝る…!謝るから、」
だから許してくれ?
鳩尾に一発重い拳を叩き込む。
坂本さんとの特訓をするため、俺だけ早めに公園に向かおうとしたら頬を叩かれる女が見えた。男は下卑た笑みを浮かべている。
そいつ誰、とか。
何で叩かれた、とか。
色々聞きたいことはあったけど、流れ込んできた男の思考を読んで目の前が真っ赤になりかける。
俺の女を、汚されてたまるか。
坂本さんや葵さんに彼女を預け、男を即探し出す。先ほどの男は恐ろしいものを見るような目で俺を見ていた。
あぁ、帰ったら告白しよう。
合コンなんて参加させてしまうほど、まだ余裕があったのか。もっと俺漬けにしないと。
思考を読んで、俺漬けにして、俺以外の男なんて目に入らないようにしないと。
「……汚ぇ…」
半殺しにした男の血が少し付いて、俺は吐き捨てるように言うとその場をあとにした。
