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「僕は絶対にキミを悲しませたりも手放したりもしないよ」
真夜中。
南雲君の部屋。
ベッドに倒し込まれた私と、私の上に覆い被さるように馬乗りになってる南雲君。
その目は優しさを湛えているのに、昏く深く。黒曜石のような光を一切灯さない瞳が、私を絡めとるように見下ろしていた。
酒に侵された体は仕事の時のようないつもの比較的俊敏な動きも、抵抗のため手を伸ばすけど南雲君に簡単にベッドに押さえつけられてしまい、抵抗も出来ない。酔いと混乱に侵され鈍くなった頭で「何でこんな事に?」とぼんやりと問いかけた。
昨日。
JCC時代からの友人でORDERの坂本君から連絡が入った。南雲君とも連絡先は交換していた。南雲君は何処かいつも寂しそうというか、遠い目をして私を見ることがあった。何故なのか私は聞いたことはなかったし、南雲君から言われることもなかった。赤尾ちゃんに相談したこともあったが、お前罪な女だよなぁ…と言われた事がある。全くもって意味が分からなかった。話が逸れたが、坂本君から連絡が入った。
理由は坂本君自身が結婚するため。
ORDERになってから忙しいだろうに。それでもこうやって安否の連絡をくれるだけでも嬉しかった。もちろん友人として。
しかし、あのぶっきらぼうな坂本君が、結婚とは…。
喜ばしいけど、先を越されて何だが悔しいような複雑な気持ちになった。けれど、一応おめでとうと祝福のメッセージを送り、仕事に戻った。
そして仕事が終わり、帰宅すると今度は南雲君から連絡が来た。そこには「坂本君、結婚するんだって」というメッセージ。それに対して「そうみたいだね」と返信すると「明日時間ある?」なんてメッセージが投げられる。
「………………?」
坂本君からは殺し屋を辞めるとも連絡が来た。私達は殺し屋であり、一般人になる坂本君とあまり深く関わるのは良くないだろう。だから本当は一般人みたいに結婚祝いとして飲み会とかしたいけど、それも出来ない。その事をメッセージで端的に説明すると南雲君から「違うよ〜」と素早く返信が来た。
南雲君の意図が分からない。友人なのに、と少し寂しく感じた。
首を傾げて返信を打とうとするが、それよりも早く南雲君の連投が止まらない。そして、「2人で坂本君のお祝いと夢主の失恋慰め会しようよ〜」と来た。まぁ、確かに坂本君が関わらなければ前半は良いけど、後半の意味が分からない。
私、失恋なんてしてないけど………?
どういうことは分からなくて南雲君にどういう事か聞こうとしたが、それよりも早く南雲君から明日の飲み会の場所の連絡が来たためそれ以上何も聞けなかった。
そして翌日。
仕事を終えて、指定された個室のある居酒屋に行くと既に南雲君は来ていた。下戸なのに居酒屋に来なくても…、と思ったがせっかく予約してくれたので言葉を飲み込み、生ビールを注文した。
注文した料理や酒が来て、2人で話をしていると南雲君が爆弾を投下した。
「夢主ってさ、坂本君の事好きだったよねー」
…………は?
「私が、坂本君を好き…?」
確かに、学生時代は男子生徒の中で坂本君が(私の中では)一番仲良かった。でもそれはあくまで友人的なもので、恋愛には至っていない。坂本君も同じ気持ちだろう。南雲君に更に話を聞くと、私と坂本君は 両方思いだと思っていたらしい。
いやいやいやいや…。確かに坂本君とは、(赤尾ちゃんを除けば)他の女子生徒よりも話をしたり距離は近かったかもしれないけどさぁ…。
まさか、南雲君にまで勘違いされてるなんて…。
「え?違うの?」
「違うよ…?!」
私は懇切丁寧に、坂本君が他の女子に比べれば私に気を許してくれて懐いてくれたということであって、私達の間に愛だの恋だのは存在しないことを南雲君に説明したが、南雲君はあまり興味なさげに相槌を打つだけ。
あ、これは信じてないな。
「だから、」
「まぁまぁ、坂本君の事はめでたいわけだし。本人いないけど、お祝いしようよ」
そんな風に南雲くんに言われ、私はそれ以上何も言えなくなり南雲君に勧められるがまま酒を飲んだ。
否、飲み過ぎた。
意識が若干混濁し、体に力が入らないほどまで飲んでしまった。こんなになるほど飲んだつもりはないけれど。南雲君の肩を借りて、店を出ると呼んでくれていたのだろうタクシーに乗り込む。
あぁ、アパートの住所言わないと…。
「ーーーー」
隣に乗り込んできた南雲君がタクシーの運転手に何か言うと、運転手が返事をして車が動き出す。
あれ、私……南雲君にアパートの事言ってあったっけ…?頭と体がふわふわする…。思考が回らない…。
すると、グッと大きな手が私の肩を抱き寄せてきた。トンッと大きな体にもたれかかる。見上げれば、車の中で薄暗いのに窓から入る明かりではっきりと優しく微笑む南雲君の顔が見えた。南雲君はいつも寂しそうで、遠い目をしていたから、こんな優しそうな顔を初めてみた。あぁ、だから女子生徒達や女の人達からモテるんだなぁ、なんて思いながら少し俯いて南雲君にもたれ掛かっていた。
何か南雲君が言ったような気がした。
******
そして、ふと意識が戻り程よい振動を感じる。どうやら眠っていたらしい。瞼を開けると真っ暗な見たことのないマンションの部屋、少なくとも私のアパートではない。視界に時計が目に入り真夜中を指していた。少し浮遊感があるのは抱き上げられているかららしい。恐らく南雲君が私を抱き上げて歩いているのだろう。ここでラブホとかだったら酔った私でも全力で私は抵抗していただろう。だが、酒によって思考も体も言うことを聞かない今、大丈夫だろうと思い込んでいた。
優しく体をベッドに降ろされる。
「なぐもくん、ごめん…、めいわく、かけて………」
いまいち呂律が回らない中、必死に言葉を紡ぐ。南雲君はコートを脱ぎ捨てると、ベッドサイドに跪いた。
大きな冷たい手が私の頬に触れる。愛おしむように、優しく撫でてくる。
「………、強がらなくて良いよ」
「………………?」
何が、と言おうとした。
「坂本君が、好きなんだよね」
あれ…?
私、違うって散々言わなかったっけ…?
ちゃんと説明、しないと…。
「ち、」
「僕の方が夢主の事、先に、ずっと好きなのに…」
………………え。
ギリッと音がするほど南雲君が俯いて歯を噛み締める。
「なぐも、く………?」
声を掛けるが「大丈夫」と被せるように言われた。
顔を上げるとそこには、優しい顔をしているのに、光が一切灯らない目をした南雲君がいる。するりと頬を撫でられ、肩を押されると私の身体は簡単にベッドに押し倒れてしまった。
そして南雲君は私の上に馬乗りになる。
嬉しそうに、満足そうに笑っていた。
「僕は絶対にキミを悲しませたりも手放したりもしないよ」
まるで恋人にでも言うかのように優しく甘い声でそう言った。馬乗りになったまま、顔だけをわずかに傾け、耳元に吐息がかかるほど近づく。そして、「だって、キミのそばにいられるのは、僕だけがいいんだから」と、囁くように言った。瞳の輝きが一切ない様子を保ちつつ、馬乗りの態勢で片手で私のの手首を両方まとめて掴み、シーツに縫い付ける。その手は、冷たいのに力強い。もう一方の手で、優しく髪の毛を梳きながら、「怖がらなくていいよ」と矛盾した言葉を投げかけてくる。
抵抗しようとして「ぐっ」と喉から声にならない息が漏れる。力を込めても、まるで水の中にいるように体が重く、思い通りに動かない。アルコールが身体に残す熱とダルさが、抵抗する意志を鈍らせている。 南雲君のスーツから香る清潔な柔軟剤の匂い、そして彼の体温。その対比で、私の息が酒臭く、情けなく感じる。視界に入る南雲君の顔は近すぎて、瞳の奥の光のなさばかりが異常に鮮明に見えた。
