南雲vs楽
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昼休み。
友人のリオンちゃんに「会わせたい奴がいる」と言われた。ちょうどジャンケンで負けた坂本君がジュースを買いに行ってくれている時で、南雲君は坂本君に付いて行っていた。
「会わせたい人?」
「まぁ、会わせたいっていうか、夢主に会いたがってる奴」
「………?」
よく分からなくて首を傾げる。リオンちゃんは「まぁ、そういう事だから放課後空けとけよ。あ、あと南雲には内緒な」と言って帰ってきた坂本君と南雲君から頼んでいたジュースを受け取りに行った。
会いたがってる人…?私に…?何で…?私、なんか人に恨まれるようなことしたかな…?いや、恨みとは限らないけど、でもこんな私に会いたがるなんて……やっぱり恨み……?それとも、カツアゲとか…?
それに何で南雲君には内緒………?
分からないことや、疑問に思う事がたくさんありすぎてぼんやりとしてしまう。すると、頬を突かれた。それに驚いて、ハッと我に返ると目の前に私を覗き込む南雲君の顔があった。
「何か考え事?」
心配そうにそう聞いてくる南雲君。南雲君の手には私が頼んでいたジュースがある。
出来れば相談したいけど、リオンちゃんから口止めされてるから言えない。一度きゅっと唇を噛み締めた。
「……、次の時間の小テスト、ちょっと自信ないなぁって思って」
嘘じゃない。
次の授業はちょっと苦手な科目の小テストだから自信がなかった。それを聞いた南雲君は「なぁんだ」と言って笑うと、私の頭をぽんっと撫でた。
「大丈夫、僕が教えてあげるよ」
優しい南雲君の声。
南雲君はどの教科のテストでも高得点を叩き出してるから見てもらえるならありがたい。私はそんなことを思いながら、慌ててノートと教科書を机から取り出す。私は気づいていなかった。そんな私を南雲君が見る、仄暗い目に。
放課後。
リオンちゃんに連れられて来たのは、うちの学校の近くではなく、ちょっと治安の悪い学校の近くにある公園。リオンちゃんは堂々としているけど、治安の悪い学校の生徒とすれ違うだけで私はビクビクしていた。
公園に入ると、リオンちゃんは手を振った。
「憬、悪い。待たせたか」
憬?
リオンちゃんの影に隠れていたからよく見えなくて、ひょこっと顔を出すとそこには治安の悪い学校の制服を着た男子生徒が二人。
え、もしかしてホントにカツアゲ…?!
そろそろ心配になってきて青ざめる私を見て、リオンちゃんは「大丈夫だって!」といつものようにからりと笑った。
リオンちゃんは二人に近づくと私に紹介してくれた。というか、リオンちゃんが坂本君や南雲君以外の男子と絡んでる…。も、もしかして…。
「こっちは有月憬。言っとくが恋人じゃないぞ」
「え、」
リオンちゃんが完全に否定した。
何も言ってないのに…。
そ、そんなに顔に出てたかな…。
リオンちゃんはそう言って、有月君を見ると有月君もそれは同じなのかうん、と頷いた。
「同志、みたいなものかな」
そう言って私に説明する。
それより何より、私を凝視してくる明らかに怖いヤンキー系の男子生徒がいるんだけど…?!
その視線が痛くてまたリオンちゃんの背後に隠れようとしたが、リオンちゃんに「逃げんなよ」と言われガッと掴まれた。
「すまないね。楽、見すぎだよ」
そう有月君が優しく止めるように言ったけど、楽と呼ばれた男子生徒は私をその鋭い目で見続けてる。怖い、とても。
私、なんかした?
こんな怖い男子に?
いやいや、するわけない!
「夢主に用があんの、こいつだから」
ニマニマと笑いながらリオンちゃんが言った。有月君は、穏やかに私と楽と呼ばれた男の子を交互に見ている。
あ、そうだった。私に用があるっていう人がいるって…。え、まさか、このヤンキーみたいな怖い男子が…?嘘でしょ?私、こんな怖そうな男子になんかしたっけ?!
喉が張り付いたみたいに、声が出ない。恐怖で全身が震え、足が地面に縫い付けられたように動かない。ビクビクと怯える私に構うことなく、楽君は一歩、また一歩と大股で近づいてくる。
鋭い視線が痛いほど突き刺さる。居た堪れなくなって、思わず顔を背けたその瞬間、ごつごつとした指が私の顎を掴み、強引に視線を合わせられた。まるで何かを試すかのような、その強い力に、顎が軋む。
少し涙が浮かびそうになる。
ぎゅっと瞼を閉じる。
すると、何か柔らかいものが右瞼に触れた。
それは今まで触れたことのない、ふにゅっとした感触。慌てて目を開けると、楽君の顔が目の前にあった。
「え、」
目の前にある顔。
先程瞼に触れた感触。
そこから導き出した、瞼に触れたものの答えに顔が熱くなる。
「やっと目が合ったな」
表情は変わらない。
でもその声は嬉しそうだった。
顎から手が離され頬を撫でられる。
相変わらず目は鋭いけど、先ほどとは打って変わって、纏う雰囲気がどこが柔らかく感じた。
「あれー?赤尾と夢主じゃん、こんなところで何してるの?」
その声が聞こえるまでは。
楽君の視線が私の後ろに向けられる。人一人殺せそうな視線。ビリビリと肌に突き刺さる雰囲気。
私に向けられてるわけではないけど、今聞こえてきた声の主に向けられているのは分かった。
しかもその声の主を私は知っている。
「んだよ、南雲。お前ん家このあたりだったか?」
「まさか」
背後の砂を踏みしめる足音が徐々に近付いてくる。そして私の後ろで止まると、顔を大きな手で覆われ更にグイッと後ろに抱き寄せられた。
「なんか、悪い羽虫の音が聞こえた気がしたからさ。来てみただけ」
「あ゛?」
南雲君の言葉はいつも穏やかなのに、今はまるで氷みたいに冷たい。この二人の間に、一体何があったんだろう……?
張り詰めた空気が肌を刺すようで、思わず息を潜めた。
大きな手で顔を覆われているから何が起こっているのか分からないけど、一触即発なのは分かる。
楽君の声が、まるで重い石を落としたような響きで地面に沈んだ。
顔を覆われた私には見えていない。
ハイライトのない南雲君の目と、青筋を浮かべた楽君がバチバチと音がしそうなほど睨み合っていたなんて。
