skdy
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私は足早に帰路に着く。足早な理由は恥ずかしさからだ。まるですれ違う人みんなが私を勘違いした女だと侮蔑しているように感じるほどだ。
あぁ、恥ずかしい。
私はなんて勘違いをしていたんだろう。
告白されたからって、南雲さんの恋人になった気にいたなんて…。
告白されたのは三ヶ月前。
身体を重ねたのは数日前。
身体を重ねた時の南雲さんはとても、怖かった。
普段饒舌な南雲さんが、行為の最中はほぼ喋らず、真っ黒な瞳は黒く昏く深く。その大きな黒い瞳に光など一切なかった。そして、私の身体を貪るだけ貪って、私は気絶してしまい。目が覚めたら南雲さんの姿はどこにも無かった。
最初はクエスチョンマークが頭の上をくるくると回っていた。でも数日した今日、たまたま聞いてしまった女性職員達の会話に私は勘違いしていたのだと判明した。
女性職員達は南雲さんに抱かれた事のある方々だった。
「南雲さんってさ、雰囲気大事にしてくれるよねー」
「そうそう。それに、なんか、抱かれてる時愛されてるって感じする」
「甘く、優しくって感じ?女性慣れしてるだけあるよね」
聞くつもりはなかったがたまたま聞いてしまったその話に、どう考えても自分は当てはまらない。
あの大きな黒い瞳は私を映しているけれど、言葉なんて無かった。
行為の最中だって、言葉一つなく、私の恥ずかしさから出た拒否の言葉だって何一つ受け付けてくれなかった。むしろ強引だった。
甘く?
優しく?
そんなもの一切無かった。
そこで私は、自分が恋人でもないことに気付いたのだ。下手したらセフレ以下かもしれない…。
そう考えると勘違いしていた自分がとても恥ずかしいのと、悲しいのとで胸が押しつぶされそうになる。
確かに、南雲さんは女性慣れしてるし、色んな女性を抱いてきている。でもだからって、こんな恋愛慣れしてない女を弄ばなくたっていいじゃないか…。
住んでいるアパートに逃げ込むように入り、一つ溜息を吐く。
スマホを確認すると南雲さんから連絡が来ていた。簡単に言うと会いたい、というものだ。
あの深く昏く黒い瞳を思い出すとゾッと恐怖さえ感じる。私はきゅっと唇を噛み締める。スマホを持つ手が震える。恐る恐る返信をした。
******
神々廻は目の前で机に突っ伏し、絶望に打ちひしがれている同僚ーー南雲を見て面倒くさそうに溜息を吐いた。
数ヶ月前に本命の女と付き合うことになったんだ、長い片思い期間だったーと聞いてもないのに延々と惚気話を聞かされうんざりしていたのに。
今朝は数日前にその本命と身体を重ねたのに、緊急の任務が入って。結局彼女を置いて任務に行ってしまったというクソ野郎発言をして大佛に最低と冷たく言われていた。
「神々廻ー…、どうしよう……」
「聞きたないから黙っとけ」
「勘違いされた…」
「聞きたない言うとるやろ」
ピシャリと神々廻は拒否するが、南雲は一切聞き入れず。見てよこれ…と言ってメッセージアプリ画面を見せてきた。そこには南雲から簡単に言うと今日会いたいと送られたメッセージ。その下に至極丁寧に、だが会いたくないという拒否と、
「『恋人さんは大切にされたほうがいいですよ』?」
「僕の恋人、君なんだけど?!」
いや、思いっきり拒否られとるやんか。
「今度は何やらかしたん?」
神々廻は南雲に聞くが、南雲はうーんと言うだけ。
「夢主ちゃん抱けない時にはちょっと他の子で発散したりはしてたけど…」
「ホンマに最低やな」
「本命の子を抱くってめちゃくちゃ緊張したよ。あ、神々廻には分からないよね、ごめんね」
「しばき倒したろか、ホンマに」
「全然お喋りできなかったし、挙句に夢主ちゃんを置き去りにして…」
………………。
………………………。
「あれ?」
「いきなり来た恋人(仮)が、緊張していたとは言え何一つ喋らず抱いて、挙句に置き去りにされて。もしかしたら他の女抱いてる事がその本命の耳に入ってたら、」
「なんか、言葉にしたら僕最低すぎない?」
「クズ男役満やんか」
ハッと鼻で笑いながら神々廻は言う。
「これで、必死こいて説明しても別れたい言われても拒否できひんで」
「別れ、る………?」
僕と夢主ちゃんが、別れる……?
南雲が呟くようにそう言った。
神々廻としてはからかうつもり半分、本気半分で言ったつもりだが、ゾワリと感じた殺気と冷たい何かにギョッとして南雲を見た。
先程まで目にあったハイライトは消え、昏く深く黒い瞳がスマホ画面を見つめている。
「そんなの嫌だ、僕が許さない。何で別れるなんて言うの?僕がこんなに愛してるのに。あぁ、そっか。他の女を抱いたことが悲しかったのかな。それとも置いていったことが悲しかったのかな。ちゃんと説明しないと…。僕から逃げることも離れることも一切許さないのに」
こいつ、ヤバいな…。
ブツブツと言いながら南雲は立ち上がり、ジュラルミンケースを肩にかけて退勤していった。
あー…、夢主ちゃんとやら、すまん。
神々廻は胸の中でそっと謝った。
