skdy
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
自分の部屋で、時計の針の音だけが響く。
そんな部屋で私は眠れずにいた。
………。
「お腹、減った…」
小さめに発したはずの私の声は思ったより大きく聞こえたと思ったら暗闇に溶けていく。
時計を見れば明日仕事だから、みんな寝静まってる時間帯。
夕食控え目にしたつもりはないし、ちゃんと食べたつもりだけど、お腹減った。そんな事を気にしだしたら眠れなくなってしまい。足音を立てないように寝室を出て、キッチンに行く。こんな時間だからね、音を立ててみんなを起こしたら申し訳ないし。
冷蔵庫を開ける。うーん、夕食後に見た残り物とほぼ同じだよね。ラップに包んだ残りご飯が数個と、お味噌汁。夕飯の残りと、あとは食材がちょっとと鮭フレークとか。
あ、あとリオンちゃんのデザート。
甘いのというよりはしょっぱいのが食べたいし、出来ればちゃんとお腹いっぱいになりたいとなると…。炭水化物であるご飯かなぁ…。でも、ご飯とと味噌汁だけじゃ、なんか味気ないしなぁ…。
おにぎり…?
おにぎりとお味噌汁…?
いや、待てよ…?
焼きおにぎりって手はどうかな…。
そういえばこの間、テレビでやってた焼きおにぎり茶漬けって気になってたけど、みんなはガッツリ系だからなかなか作れずにいたけど。
よし、そうと決まれば焼きおにぎり茶漬けに決まり。
キッチンの小さな灯りをつけて、冷蔵庫から比較的量の少なめなご飯を一つ取り出してボールに移し、醤油とみりんを少し入れて混ぜる。
鍋に水を入れて、破った出汁パックの中身と少しの塩で味を整え火にかけ沸騰させないように、細心の注意を払いながら出汁を作る。
出汁汁が出来る間に冷めたご飯を握っておにぎりを作る。私は少し硬めのおにぎりが好きだからちょっとしっかり目に握る。少量のサラダ油を熱したフライパンで少し焼き目をつける。
ジュウッと食欲をそそる音を少し立てて焼いていく。醤油とみりんの甘辛い香りが鼻腔を擽った。
するとガチャッと扉が開く音。
それに私は酷く驚いて肩を跳ねさせてしまう。
音がした方を見ると、南雲君がこちらを見ていた。目にはハイライトなく笑う。それは悪い笑みだ。
「夜食なんて、悪い子だね〜」
うぅうう…、よりによって南雲君にバレるとは…。
南雲君は音を立てないように扉を閉めてこちらに寄ってくる。その顔には笑みが張り付いてるけど、分かる。これは、悪い顔だ。
「な、南雲君も、食べる…?」
そう尋ねれば、南雲君は首を傾げて「えー、どうしようかなぁ」なんてギャルのように白々しく言ってくる。
この嘘つきめ…!
心の中で毒づけば南雲君はふっと噴き出すように笑った。その笑みは先程の邪悪な悪い笑みではなく、まるで氷が溶けたかのような優しい笑み。その目にはハイライトが戻っていた。
「仕方ないなぁ。共犯になってあげる」
それは、南雲君も食べるということだろう。
南雲君はリビングの方に行き、いつもの席に腰掛ける。
私は慌てて、南雲君の分のもう一つ焼きおにぎりを作る。
それぞれの器に焼いたばかりの焼きおにぎりを入れる。
「南雲君、梅と鮭どっちが良い?」
「うーん、鮭で」
私の方は梅としらすを焼きおにぎりの上に乗せる。
南雲君の方は刻みのりと刻んだネギ、鮭フレークを乗せる。
そして、出汁汁をかけて完成。
「はい、共犯者」
そう言って南雲君の前に出す。
南雲君って良いところのお坊ちゃまだから焼きおにぎりとかお茶漬けとか、こういうの知ってはいるだろうけど実際に見たことも食べたこともないだろうなぁ。だからなのだろうか、興味津々に器の中の料理を眺めている。
まぁ、そんな南雲君の育ちなんて、私には関係無いけどね。
私はお腹が減ってるし、寝たいからさっさと食べて寝るよ!
南雲君の向かいに腰掛け、蓮華で焼きおにぎりを崩して、お茶漬けにすると口に運んだ。
うん、おこげがカリカリして美味しい。梅の酸味が程よくて美味しい。出汁の香りがふわりと香ってきて食欲をそそるし。
たまにはこういうのもありだなぁ。
「そっちも一口ちょーだい」
「あ、」
こら、共犯者。
作ってはあげるけど、私の分をあげるなんて一言も言ってないよ。
私の分から大きく取られた蓮華一杯分は南雲君の口に容赦なく運ばれる。
むむむ…、私の分の、かなり減っちゃった…。
ふと南雲君の器をよくよく見れば先程まであった焼きおにぎり茶漬けはすっかり跡形無く姿を消していた。なんだ、南雲君もお腹減ってたんじゃん。
まぁ、残さず食べてくれたからそこは良しとしよう。
「美味しいね」
口元に米粒をつけた南雲君は私にも誰に言うでもなくそう言った。
南雲君は、かなりの頻度で嘘を言う。
そういう時は結構ヘラヘラしてるし、真面目な顔もするし、息をするように嘘を付く時もあるからどれが本音なのかなんて未だに分からないことが多い。
でも。
この、何気なく呟かれた言葉は嘘ではないと、思った。
まぁ、口元に米粒つけてるの気づかないくらい夢中になって食べてくれるのは作り手としては嬉しいけど。手を伸ばし、南雲君の口元に付いた米粒をとった。
それを私はパクリと食べると、南雲君が珍しくカッと頬を少し赤らめた。
「え、」
なに、その反応…。
私がその反応に戸惑っていると南雲君はジトリとした目で私を睨んでくる。
あぁ、もしかして突然手を伸ばされて恥ずかしかったってこと?
そんな目で睨まなくても…。
「米粒付いてたんだよ?」
身の潔白を証明するようにそう言うけど。南雲君は睨みを強めるように更に目を細めた。
え、まさか、ご飯一粒も私には分け与えないって意味…?
「ッ、ご馳走様。後片付けよろしく」
口早にそう言うと南雲君は部屋に戻って行ってしまった。え、食べるだけ食べて帰るとか…、酷くない…?
食べ終えた頃、空腹が満たされた私は洗い物を済ませるとさっさと部屋に戻り眠りに就いた。
