skdy
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「南雲君って、性欲とか興味なさそうだね」
休みの日。
南雲君の部屋に行くと遮光カーテンのせいもあってか真っ暗だった。寝に帰っているだけみたいでキッチンもリビングもあまり汚れていなかった。自分の部屋でアイマスクをして眠っている南雲君。
付き合ってもうすぐ1年近く。
部屋に入れてくれるようになったけど、情欲を向けられたり、身体を求められることは一切無い。別にガツガツ求められたいとかそういうのではないけど、毎回会うたびに可愛い下着を着てくる自分を嘲笑われているようで悲しくなる。どうせ今日も南雲君のお世話で終わるんだからと、今日は上下違う下着だ。
大体、南雲君は私を恋人だと認識しているのだろうか?
もしかしたら、ただの家政婦みたいな存在とか思っているんじゃ…。そんな危うささえ感じてしまう。
取り敢えず、と静音だからと買った掃除機で掃除する。そして、冷蔵庫の中身を確認し、軽く食べられるような食事を少し作る。南雲君は、どうせ外食とかがほとんどだろうし。
終わったらゴミをまとめて捨てに行く。戻って来て昼過ぎ。昼食をとり、帰ろうかと思っていたらようやく南雲君が起きたのか部屋から出てきた。
南雲君は人間三大欲求の中でも睡眠欲にほとんど全振りしている、と私は思っている。食事はまあ食べるけど、性欲なんて興味ないんじゃないかなぁ。
南雲君と軽く会話をしている中、ふと冒頭の言葉が口からポロッとこぼれた。
南雲君は大きく目を見開き、少しムッとした表情をする。
「僕だって性欲ぐらいあるよ」
「興味は無いでしょ?」
「うーん…」
彼の家は諜報家系だからきっとロミトラもハニトラも習ってきているはず。そのせいできっとセックス=諜報活動の一環と思っている節がありそうだ。
別に身体の関係が全てではないとは思っているけど、なんだか自分だけがと思えて虚しくなってくる。
「夢主にはそう見えてるんだね」
南雲君はなるほどなぁ、と言いながら頷いている。私にはそう見えている?
………………あ。
なるほど。そういうことか。
諜報活動や他の女性を抱いているから、私を抱くほど溜まってないってことか。
南雲君、結構来る人拒まないし、去るものは追わないし。
なるほどなぁ。
なるほどなるほど。
………。
「あのね、仕事だから他の人抱いてもいいし、」
「え、突然どうしたの?」
「他の女の子抱くのも許すよ」
「え、ちょっと待って」
溜息を吐きながら南雲君にそう言う。
南雲君は少し慌てたように言ってくるけど、私にはあまり響かなかった。
だってもう、私には関係のないことになるから。
「僕は、」
「別れよう」
私の短く吐いた言葉は一瞬にして空気を張り詰めさせた。もう何もかも面倒くさいし嫌になった。
南雲君に期待するのも。
私が期待してるのも。
こんな通い妻みたいなことをするのも。
大体、最後に好きとか言われたのいつ?
「は?」
溜息を再度吐くと、南雲君がたった一音を漏らした。たった一音だけなのにゾクリと恐怖が肌を撫で、鳥肌が総立ちした。ちらっと南雲君を見てみると南雲君の目からはハイライトが消え、深く昏い漆黒が私に向けられていた。まるで深淵がこちらを見ているようで恐ろしい気分になる。
「君を抱かないから、僕達別れるの?」
「そうじゃない。私が南雲君に期待するのが疲れたの」
「君が勝手にしてた期待に応えないから別れるの?」
「そうだね」
ドッドッと心臓が早鐘を鳴らす。
早く逃げろと。
ここにいては嫌だと。
少し冷や汗が流れる。
南雲君が投げてくる質問に口早に答え、私は鞄を持って部屋から出て行くため足を玄関に向けた。
「そっか。夢主は僕の気持ち、全然分かってなかったんだね」
そう、耳元で囁かれた。
その声に抑揚はなく、感情が一切無くて恐怖を感じて。慌てて振り返ると肩を掴まれ壁に押し付けられた。
「僕の気持ち、全部夢主に渡したらきっと逃げちゃうと思ってたからさ。ちょっとずつ、ちょっとずつと思ってたんだけどね。でも、別れたいなんて言われたら出し惜しみなんてしてる場合じゃないから」
目を細めて笑う南雲君の目には相変わらずハイライトは宿らない。大きな手が私の肩を壁に押し付けてくる。
私は混乱していた。
南雲君は来るもの拒まず、去るもの追わずだと思っていたのに、なんで私はこんな事をされているんだろう。こんな事を言われているんだろう。大体南雲君の私にはそう見えてるんだねなんてわけの分からないこというからこういう事になってるのに。
「僕の気持ち、全部渡すから。もう逃げちゃダメだよ」
南雲君はそう言って笑った。
あれ、私もしかして、なんか、早まった…?
顔に陰を落としながら笑う南雲君に笑顔を向けられながら私は自分の選択が間違いであったことに今更気づいたのだった。
