えっちな自撮りシリーズ
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スマホに表示された南雲さんからのメッセージは、ただ一言だった。
『助かるよ』
それだけ。
何だか、自分が意図しない南雲さんからの返信に、しばらくスマホ画面を眺めて首を傾げた。
元気出た、じゃなくて助かるってどういうこと……?
しばらく悩んでいると、ポコンと通知音が鳴った。見てみれば南雲さんから更にメッセージが届いていた。
『これから向かうね』
このたった一言が私の頭の中を更に混乱させる。
なんでこれから南雲さん来てくれるんだろう?あんなに忙しそうだったのに?急に?突然部屋に来るなんて…。なんで…?
……もしかして、あんな写真送ったから、呆れられた…?
もう二度とあんな写真送って来ないで、とかを直接言うためとか…?
それとも、幻滅したから別れて欲しい、とか…?
思考は負のループに陥り、血の気が引いていくのが分かる。冷や汗が止まらない。
あんな写真、送るんじゃなかった…。
ふと、鏡を見る。鏡に映った自分は見本として送られてきたセクシーな女性達と比べるのも烏滸がましい程。
南雲さんは、あんなにも格好良いし、色っぽい女性達を見慣れてるからあんな写真送られて、迷惑だったのかもしれない。それどころか怒らせた…?気持ち悪がられた…?私なんかに興奮するわけ無いのに、と呆れられた…?
もう何も考えたくなくて、考えを断ち切るように私はひとまずシャワーを浴びて、部屋着に着替える。そして、冷蔵庫を開けてお茶を飲んだ。随分と乾いていたのかお茶が体に染み渡るのが分かる。冷や汗を掻きすぎていたのかもしれない。
一つ息を吐いて落ち着くと、また考えたくもないのに、嫌な考えがぐるぐると頭の中を回り始めた。ずっしりと胸に重い鉛を埋め込まれたかのように息苦しくて、大きく息を吐いてその重さを逃がそうとしても、息をすればするほど重くなっていく。
と、その時。ピンポーン、とインターホンが鳴り響いた。溜息ばかりだった部屋にその音は普段よりも大きく響き、私はビクリっと肩が跳ねさせる。
モニターを確認すると、南雲さんがにこにこと笑いながらカメラ越しに手を振ってくれている。
ひとまずは、怒ってはなさそうだけど…。
私はビクビクと玄関まで行き、恐る恐る扉を開ける。南雲さんはいつものように人懐っこく、でも何処かいたずらっぽくにっこりと笑うと、ガバッと扉を開けて、そのままするり部屋の中へ。背後でカチャリと鍵をかける音がして、私の心臓はさらに大きく跳ね上がった。
その流れるような動作に私は驚いて何も言えなかった。
「あー……、久しぶりの夢主だー」
南雲さんはそう言って私を抱き締める。それだけならまだしも、首筋に顔を埋めて、私の匂いを嗅ぐように大きく息を吸ったりしている。抱き締めるだけならなんとか耐えられたが、まさか匂いを嗅がれるなんて思わなくて。シャワーを浴びてるとはいえその行為に恥ずかしさがこみ上げる。止めてほしくて南雲さんの胸板を押すけどびくともしない。
「な、ぐもさん…!恥ずかしいから匂い嗅がないでください…!」
「えー、いいじゃん。僕、夢主の匂い好きだよ?」
そういう問題じゃないんです南雲さん…!
そして、南雲さんはよいしょ、と言って私を抱き上げると部屋の中に入って、私をベッド下ろす。南雲さんな床に座った。
「それで?」
私はベッドに腰掛けると、南雲はにこにこ笑いながらスマホ画面を私に見せてきた。そこには、先程私が撮った少しえっちな自撮り写真が。出来が悪くて、それが南雲さんのスマホに入っていると思うと恥ずかしくて、申し訳ない気持ちになって、少し顔を逸らす。
「そ、それでって…?」
「誰の入れ知恵」
食い付くように南雲さんはそう言った。
その声のトーンが下がっているのは明らかで、怒っているのが分かった。
あぁ、やっぱり…。あんな写真送ったから怒ってるんだ…。
ORDERで多忙な南雲さんに少しでも元気が出れば、と思って撮った写真だったけど…。迷惑にしかならなかった。
何かしてあげたかった、という気持ちは南雲さんのトーンの低い声にブスリと刺され、空気の抜けていく風船のようにシュルシュルとしぼんだ。
「友人に、その…、この間電話したとき、南雲さん元気なさそうだったから、少しでも元気になって欲しくて相談したら、そういう写真送ると良いってアドバイスもらって…」
説明するけど、声は尻すぼみに消えていく。
それは私の気持ちに比例しているようだった。
南雲さんはふーん、と言って私の膝に手と顎を乗せてきた。
「友達って、男?」
見上げる先程とは違うハイライトの無い黒い瞳。
ぞっと恐怖で体が逃げそうになるけど、膝の上に手を乗せられ、更に脚もいつの間にか拘束され逃げられない。
「女の子ですよ…!」
慌ててそう言って、証拠と言わんばかりにスマホを操作して先程のメッセージ画面を見せる。それを眺めて南雲さんは確認のためなのかスマホを少し操作をして、しばらく黙っていた。
そして、今更気づいた。
友人が大量に送りつけたあのセクシーな女性達の写真の事。
恐る恐る南雲さんを見ると、南雲さんはにっこり笑った。そして私のスマホをいとも容易く取り上げる。
「僕ね、夢主のこれとこれの姿と、あー、あとこれの写真も欲しいなー!」
南雲さん凄くハイテンションだ…。偏見だけど、まるでギャルみたい。
そう言ってズイッと見せられた見本写真。あまりにも嫌な予感すぎて見たくないけど…。
近すぎて見えないから少し距離をとって画面を見て、その大胆な格好に顔が熱くなるが、それを自分がしなくてはいけないということにザァッと血の気が引いた。
「む、無理です…!!こんな格好、恥ずかしいですって…!!」
「えー?この格好の夢主みたら、僕すっごく元気になるのになー…」
そう言われると、私は何も言えなくなる。
南雲さん、疲れててやっぱり元気ないのかな…、と思うと私も完全否定が出来ない。
で、でもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいし…!!
悶々と頭を悩ませていると、南雲さんはこの大きな黒い目をまるで子猫のようにウルウルとさせながら私を見上げてくる。
「だめ……?」
…………、こんなの南雲さんの策略だって分かってる。分かってるけど、膝の上に顔を乗せてウルウルと見上げられたら、ダメなんて言えるわけもなく…。
「ッ…す、こし…だけですよ……?」
翌日、私はこの時こう答えたのをとても後悔した。
あのセクシーな女性達の真似事の写真を撮ったあと、子猫のようだと思っていた南雲さんは、とんでもない獣で。私を貪り尽くして、更に致している時の動画さえ撮られ…。
「会えない時はこれ観て頑張るよ」
と、南雲さんは出勤ギリギリまで私を甲斐甲斐しくお世話した後に言った。
そして、見送ろうと玄関まで行くと、
「あ、今度これの上映会しようよ!」
と名案みたいな言い方をするから、私は大声で却下と叫んでいた。
