skdy
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どこをどう走ったのかも、もう覚えてない。
ただ、人気も少ない路地に曲がったところで、
「待てってッ…!」
ガシッと手を掴まれた。
振り払う力もない。もう走り疲れていたため、掴まれてしまったことで足も止まってしまった。
せめて、この顔だけは見られたくなくてシン君の方は見れなかった。後ろで私の手を掴んでいるシン君の息が乱れているのが分かる。
何で?
私、また迷惑かけた…?
シン君に、会わないようにしてただけなのに…。
会わないの、辛くて、悲しくて、寂しかったのに…。
「ッ俺、」
「ごめんッ!!!」
シン君が何か言いかけたけど、それが更に悲しい言葉をかけられるような気がして、恐ろしくて遮るように謝罪の言葉を口にした。
また、好きな人に迷惑をかけていた…。
「ごめん…」
力無く謝罪の言葉がまた、溢れた。視線が自然と前から下に向いた。ボロボロと涙が溢れる。
罪悪感。
自己嫌悪。
悲しみ。
そんな嫌な感情が自分の中でぐちゃぐちゃになって、鉛のように重く、マグマのようにドロドロな、そんなものが胸を占める。
分かってる。
シン君は、私の存在が迷惑なんだ。
もしかしたら、なんて私の大きな勘違いで彼に多大な迷惑をかけてしまっていたんだ。私はお客で彼は店員さん、それだけの関係なのに。
なのに、
「今日はいい天気だな」
なのに、
「何かあったら俺に声かけろよ」
なのに、
「あー…、ルーより俺の方がこの店のこと詳しいし!」
なのに!!!
あの優しい眼差しを!
あの慈しむような優しい表情も!
全部全部勘違いなのに……!!
だからこう言えばいい。
もう、行かないから、と。
もう二度とお店には行かないから、と。
言いたいのに。
それを言おうとするのに、喉が締まって、声にならない。掠れた声だけが口から溢れる。
なんて意気地なし。
迷惑をかけていたんだという事実があるのに、もう二度と行かないという選択肢を身体が拒否しているなんて…。
「わ、たし……も、ぅ……!」
「会いたかった」
後ろからポツリと言われた言葉は、私の声量より小さい筈なのに飲み込まれず、私の声を遮った。
シン君、今、なんて言った…?
言葉が理解出来なくて、恐る恐る振り返る。
シン君は真っ直ぐに私を見つめていた。あの優しい眼差しで。
ねぇ、お願い。
やめて。
勘違いしちゃう。
嫌なの。
傷付きたくないの。
期待を持たせないで。
「俺は、お前に会いたくて、会いたくて、仕方なかったよ」
少し困ったように眉をひそめて、シン君は私の頬に触れた。ボロボロと涙が止まらない。シン君の男の子らしい手を汚してしまう。
「だって、めいわくだって…」
「うん」
「しんくん、いうから…!」
「悪い」
「わたし……もう…いかないほうがいいって……!」
まるで泣きべそをかく子供のように私は必死に言葉を紡ぐ。それをシン君は丁寧に優しく対応してくれる。
そして、まるで壊れ物に触れるように優しく両手で私の顔に触れるシン君の手は少し震えていた。
「お前が店に来なくて、寂しくて辛かった」
ゴシゴシと指で溢れる涙を拭いながらシン君は言った。
「酷いこと言って、悪い。迷惑なんて思ってないから。お前が風邪引いて会えなくなるのが嫌で…。うまく伝えられなくて、悪い」
お願い止めて。
そんな優しく触れないで。
優しいことを言わないで。
勘違いしたくない。
「ただ、これだけはちゃんと伝える」
さっきの優しい眼差しではない。もっと真摯な目だ。シン君と目だけじゃない、もっと深いところで何かが合った気がした。
「お前がずっと、ずっと好きだ」
その言葉に私は目を見開いていた。
「だから勘違いも期待もしててくれ」
そう言ってシン君は私を優しく抱き締めてくれた。
シン君が、私を、好き……?
顔が熱くなる。
胸が疼く。
止まりかけていた涙が、また溢れた。
*******
バイクを押しながら隣を歩く彼女をちらっと見た。泣きすぎて目元が赤い。そしてどこか恥ずかしそうだ。泣かせてしまったことに対して罪悪感はあるけど、自分のために泣いていたのだと思うと優越感もある。心の中で彼女に悪い、と謝った。俺はきっと彼女が思うような聖人君子的な彼氏ではないと思う。
「あ、シン帰てきたヨ!」
声がした方を見るとルーが店から出てこっちに手を振っていた。ルーの隣には坂本さんもいる。
「すいません、坂本さん。抜けさせてもらって…」
「本当ヨ。全く…」
「お前には言ってねえだろ!!」
「あの……」
彼女が口を開いた。
「坂本さん、先日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした…」
「迷惑……?」
坂本さんは器の大きな男だから彼女にタオルを貸したことぐらいで迷惑なんて思ってないのだろう。
"ちゃんとケリをつけてきたんだろうな?"。
坂本さんがそう心の中で問いかけてくれる。それに俺は頷いた。
彼女にはまだ、俺が心が読めるエスパーだと伝えていない。いや、元殺し屋とも伝えてない。
彼女に自分のことを知ってほしいと思う反面、知られて離れていかれたらという恐怖さえある。
今はとりあえず、黙っておくか…。
「もー、シンてばお姉さんのことになると心読みすぎてはたから見てると気持ち悪かたヨ」
まるで空から爆弾でも落とされたような気分になって血の気が引いた。彼女はキョトンとしてルーを見つめている。
「お姉さん気をつけるネ。シンはスパダリじゃなくて心を読んで先回してるだけネ」
「ルー!!!!てめぇ、それ以上言うんじゃねぇ!!!!」
「何ネ!?ホントのことヨ!」
慌ててルーの口を塞ごうとするが、ルーは逃げ出してしまう。ヤバい!!これ以上知られたら、やっと付き合えたのに即破局コースじゃねえか!!!
「あ、あのさ…!ルーの言ってた事は気にしなくても良いからな!」
彼女は口元に手を当てて何かを考えているようだった。そしてしばらくすると、
"どうしよう、私、シン君の事たくさん好きって言ってた…!え、でも心が読まれるってことは心の中でシン君がカッコいいとか、好きだなぁって何度も思ってたことも……?!"。
ヤバい。顔が熱くなる。ニヤけてしまう。
彼女が恐る恐るこっちを見て、俺の反応を伺ってる。
「……、悪い」
「〜〜〜〜〜ッッ!!!!」
俺の反応を見てルーの言葉が真実だと知った彼女は茹でダコのように真っ赤になって声にならない悲鳴を上げた。
