第1章
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『むー……』
インペルダウンに投獄されてから、幾日か経った。
最初はちゃんと日にちを数えていたのだが、覚えていた日にちをうっかり忘れてしまってからは数えるのをやめてしまった。
メモしようにも紙とかペンがないんだからしょうがない。
ちなみに、そうやってボヤいたら囚人の1人に「指でも切って血文字で壁に書きゃいいのに」と当たり前のように言われた。
そんな当たり前のように言われても痛いのは嫌だよ!
自分の指をガリッと噛んで、血を出すみたいな真似は漫画のフィクションだけで充分です。
話が逸れた。
今、私の機嫌が悪いのは日にちを忘れたからではない。
もっと根本的な問題だ。
『ご飯が!美味しくない!!』
食事のトレイを目の前に項垂れていると、同じフロアの囚人達がやいのやいのと柵付近に出てきた。
「まーたお嬢が何か言ってやがるぜ」
「嬢ちゃんは本当どうでもいい話ばっかするな。ま、飽きないから良いけどな」
こ、これがどうでもいい話だって!?
人間が生活するには衣食住という3つの要素が必要で、その1つが脅かされてるんだぞ!?
…と思ったけどよく考えたら着てるものも囚人服で着替えなんて無いし、住むところは牢獄。
衣食住レベル低すぎるな。
この際、衣と住には目を瞑ろう。だけど。
『もうちょっと、もうちょっとだけ料理長に頑張っていただきたい!』
スープとか味付け薄いし、パンはガッチガチに固いし。
「まぁ、そうだなぁ。なんかもう慣れちまったからな」
『うう…絶対、私達がここで固いパン食べてる時、看守達は看守室で美味しいご飯食べてるよぉ』
お前らの給料とか私達の食事とか、国民の税金から払ってるんだろ!どうせ!
私も捕まる前は、ちゃんと税金払ってたんだぞ!だから私にも美味しいご飯ください!
『はーあ、捕まる前にアレ食べておけばよかった…。値段が高いから食べれなかったけど…』
「ふーん、何か食べたいものでもあったのか?」
「値段が高いって相当なもんだろ?珍しいものなのか?」
そう言うと、囚人達は思い思いに予想した食べ物を挙げていった。さすが海賊が多いだけあって、色々な島の名産の食べ物や果物などが出てくる。
キャビア、フォアグラ、最高級ステーキ
紅一点カタリーナ先輩が「美人の生き血」と発言した時はびっくりした。
それは食べ物ですか!?
私が聞いたこともない食べ物の名前も沢山出た。
だけど、その中に私の食べたいものはない。
いや、まぁそりゃそうだろう
『あ、あの、すみません。一般人の私にとって値段が高いものでも皆様にとっては、はした金だということを思い出しました』
すみません。私が食べたかったのは巨大スペシャルデラックスパフェ税込2980ベリーです。
私の言葉に囚人達はポカンとして、一言。
「……貧乏だったのか?嬢ちゃん」
「すまんかったな。気付かずに。」
「もし機会があったら飯奢ってやるよ」
『貧乏じゃないです!!人並みです!!払えたけど、お小遣いが無くなっちゃうから買えなかったんです!!』
囚人達に哀れみの目を向けられた。これだからお金持ってる人は!!
『バイト4時間分のお金がパフェ食べただけで消えちゃうんですよ?ためらうのはそんなおかしい話じゃないと思います!』
「……4時間働いてやっとか。それ、ブラックじゃねえのか?」
高校生の時給ってそんなもんですよ。
『でも、クロコダイルさんのBW社ってそんなに給料良かったんですね!雇って貰えばよかった!』
「役立たずはいらん」
『ひどい』
こう見えても、お客様対応とかしっかりできるんですからね!猫をガッツリかぶるんで!!
そう言うと、かの社長はクハハと愉快そうに笑った
「ま、機会がありゃ召使いにでも雇ってやるよ」
クロコダイルさんが最後にこぼした言葉は上手く聞き取れなかったけど、きっと私のこと馬鹿にしてたんだと思う。
はーあ、何かの間違いで三つ星レストランのシェフがインペルダウンの調理室に就職しないかなぁ。