第1章
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インペルダウンLEVEL6
世間に知られているのはLEVEL1からLEVEL5まで。
LEVEL6に収容される犯罪者たちは余りの罪の非道さや残虐さから、その存在は世間には秘匿にされている。
もし、一般市民がその存在を知ったら震え上がるだろう。
一体そこはどれほどの地獄なのだろう、と
『ぎぃゃぁああああああ!!!』
インペルダウンLEVEL6フロアに甲高くも悲痛な叫び声が響き渡った
一体、何があったのだろうか。
LEVEL6に相応しい残虐な拷問か。あるいは囚人同士の揉め事か
実際はそのどれでもなかった。
「おい、どうした!?」
「……うるせぇな。おい」
「がっはっは!!またお前か!嬢ちゃん。何があったんだ今度は」
叫び声を聞いた周りの囚人達が牢屋の奥から顔を出す。
一斉に見つめるのは、一つの牢屋。
その牢屋の柵を両手で掴んで顔を見せたのは、顔面蒼白のひ弱そうな女。女といっても、まだ少女と呼べるほど若く見える。
名だたる犯罪者が収容されているインペルダウンLEVEL6には異質の存在に思えるが__彼女が叫び声の主だったようだ。
『ご、ご、ご…』
「あ?」
『ゴ、ゴ、ゴキブリが!!出たんです!!!』
震える声で叫んだ次の瞬間
フロア中が囚人達の野太い笑い声で包まれた
「「「ぎゃっはっはっは!!」」」
「ただのゴキブリかよ!がははは!!」
「何だ!心配する必要なかったな!!」
その反応に少女は一瞬だけポカンという表情を浮かべたが、すぐに眉を吊り上げ
『何でそんな平然としてるんですか!?ゴキブリですよ!女の子にアンケートとったら嫌いな虫ランキングNO1に選ばれるやつですよ!?』
声を張り上げた。
牢屋の柵をガタガタとゆすって抗議するも、周りの囚人達はその必死さも面白いようで笑いが収まらない。
向かいの牢屋からもクハハ、と笑い声が聞こえてくる。特徴的な低い笑い声。
「虫ごときで騒ぐことができるのは、このフロアじゃお前さんくらいなもんだ」
『うっ……ク、クロコダイルさんまで。』
育ちが良さそうだから、虫とか苦手そうなのに。
と少女がボソリと呟いた言葉は男には聞こえなかったようだ。
「嬢ちゃんよぉ!そんなに嫌いなら殺しちまえばいいじゃねえか!!」
『え』
1人の囚人にそう言われ、少女は自分が入れられている牢屋を見渡す。パッと見たところ、虫を倒すための武器になりそうなものは何もない。
『…ね、念のために聞くんですが、どうやって、ですか?』
おそるおそる尋ねる。すると、その囚人はニヤリと笑って少女に告げた
「そりゃもちろん、素手でブチっと」
『いやぁあああ!!聞きたくなかったぁああ!!』
看守さん看守さん!!一生のお願いです。殺虫剤と虫よけスプレーください!!
くれないなら三日三晩呪いの歌うたい続けますからね!!
見てるんでんでしょ!その監視カメラで!!
少女が慌てて看守を呼ぶ姿を見て、囚人達は愉快そうに笑う
これが今のインペルダウンLEVEL6の状況である
さて、あなたにはどんな風に映っただろうか。
地獄?それとも___
_______________
数日後
「いやぁ、ゴキブリ1匹で泣いて叫んでたあの嬢ちゃんはどこに行ったんだろうな」
『ここにいますよ。ここにほら、か弱い女の子が』
そう言った少女は囚人と話す目線は変えずに、手元のハリセンでパァンと床を叩く。
見事に一瞬で潰れた哀れな虫は、きっと走馬灯を見る間も無く天国へと昇っただろう。
そして、それをペイッとハリセンを使って、ホウキのように自分の牢屋の外に出した。
「か弱い女の子はそんな手慣れた暗殺者のような手つきでゴキブリ処理できません」
「随分と図太くなったよな」
『流石に出過ぎて慣れました。嫌な慣れですけどね』
あの時、殺虫剤と虫除けスプレーを看守に頼んだのだが、爆弾を作られたり自殺されたりされると困るからって渡してもらえなかった。
渡されたのは紙のハリセンだけ。あれにはちょっと殺意が湧いた。
『強くなるしかなかったんですよ…はは』
そう言って少女はまた、目線を変えずにハリセンを振るう。
少女の乾いた笑いと共に再度、パァンと乾いた音が牢屋内に響き渡った。