第1章
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『私が捕まったのは天竜人にプロポーズされて、断ったから』
そう告げると、フロアがシンッ_と静まった。そして少しの沈黙の後、フロア中に笑い声が響き渡る。
「「「ぎゃははははは!!!」」」
「そりゃ、確かにくだらねぇ理由だ!!」
「はははっ!そりゃあ大した罪だな!ははは!!ある意味LEVEL6に入るにふさわしい罪かもな!」
この様子なら、捕まった理由がくだらないってことで殺されることはないようなのでひとまず安心。
囚人達は好き勝手なこと言って笑い続ける。
笑われてはいるが、別に不快感はなかった。
むしろ笑い飛ばしてくれて救われた気がした。
『ふふ…』
笑い声というのは気分を上げる効果があるようで、自分の沈んだ気持ちも少し和らぐ感じがする。
高らかに笑う彼らを見て、一緒に笑っていると声をかけられた。
「天竜人のプロポーズとありゃ、断る訳にはいかねえだろう。途中で気付かなかったのか?お嬢さん」
丁度、笑い声が静まりかけた頃にバリトンボイスがフロアに響き渡った。
声をかけられた正面の牢屋を見るも、声の主は奥の方にいるのかボンヤリとしか姿が見えない。
若干、馬鹿にしたような声色と口調にムッとしつつも声の主に向かって返事をする
『私だって馬鹿じゃないから、最初はプロポーズ受けたもん!!』
しまった。思わず口調がキツくなってしまった。
だが声の主の声色を聞く限り、機嫌を損ねてはいないようだ。声の主は続ける。
「ほぉ、それで?」
『え?』
「プロポーズ受けたんだろ?じゃあ何でお前はこんな所にいるんだ?」
今のお前は、天竜人様の伴侶として優雅に暮らす立場とは真逆のようだが。
『……う。』
男の質問に言葉を詰まらせる。
いつのまにかフロアは静まり返っていて、囚人達は私と声の主との会話に集中しているようだった。
え、これ言わなきゃいけないの?
『え、えっと、プロポーズされて、すぐにホテルに連れてかれて……その、あれです』
「何だ」
わかるでしょ!?この流れでホテルって言ったらわかるでしょ!女の子にここまで言わせるか!?
羞恥プレイですか!そういうのがお好みですか!
__と喉まで出かかったが、そんな文句を大犯罪者に言うわけにはいかない。
グッと我慢して、続きを話し出す。
『あの、その、要するにいきなり天竜人に身体を迫られまして…』
「それで?」
『そ…それで』
息を吸って、口を開く。
『枕を顔面に投げつけて逃げちゃいました』
沈黙から1秒
2秒
3秒
「「「ぎゃっははははは!!!」」」
フロア全体が、また野太い笑い声に包まれた。
「ひぃ~!笑わしてくれるねぇ!新入り!!」
「天竜人の顔面に枕かぁ!!いい仕事したじゃねぇか!!がっはっは!」
「気に入ったぜ!嬢ちゃん!!」
あの時は必死だったんです!悪気なくほぼ無意識でやっちゃったんです!と言うと、また笑われた。
正面の牢屋を見ると、先ほど会話してたあの声が良い囚人の方も笑っていた。
クハハ…?随分と特徴的な笑い声だ。
「はー笑った笑った!それにしてもよ、1回くらい我慢できなかったのか?犬に噛まれたとでも思ってよ」
『無理だったんです!!』
あんなタコと豚が融合したような男。キスされそうになっただけで虫唾が走る!!
吐き捨てるように言ったその後、
別の囚人から投げかけられた質問に、私の動きはピシッと凍りついた。
「でも、初めてってわけじゃねえんだろ?」
…思えば、すぐさま否定しておけばよかったのかもしれない。
『………っ』
顔に熱が集まる。気が動転して言葉が何も浮かばなかった。
そんな私の反応を見て囚人達は何かを察したようで
「……え、あれ?」
「もしかしなくとも、経験なしか?嬢ちゃん」
・
・
・
「「「ぎゃははははは!!」」」
「こりゃ、悪いことしたな嬢ちゃん!!」
「いやー!気が利かなくてすまない!まだお子ちゃまだったか!!」
何度目かもわからない大爆笑タイムが始まった。
『うるさいうるさいうるさーい!!まだ17だもん!!仕方ないじゃん!!これから良い人見つけるんだもん!!』
「がっはっは!!じゃあまずは脱獄から始めなきゃだなぁ」
『うっ』
そうだった。私、今捕まってるんだった。
処女を捨てるとか言ってる場合じゃないわ。
「仕方ねぇな!!俺が相手してやろうか!」
「おう、俺も俺も!」
『仕方なくって何ですか!!抱くなら高級ホテルのスイートルームでお願いします』
「「「欲深っ!!」」」
初めては好きな人と幸せな気持ちでしたいもん。いつかの時のために大切にとっておいたのに。
「で、大切にとっておいたまま、お前の初めてはこの牢獄で腐っていくってわけか!!」
『うっさいわぁああ!!私だってこんなことになるとは思わなかったんだよおおお!!アオハルする予定だったもんんんん!!』
ていうか私、LEVEL6の囚人とタメ口聞いてるけど大丈夫か。
いいか、もう。
気にした方が負けなやつだ。これ。
『最悪、刑務所の偉い人とかに色仕掛けして脱出できないかな』
若さなら負けないんだけど、と呟く。
「この刑務所で一番偉いとなると署長のマゼランか。あいつの理想は高いぞ」
『乳が!乳が足りないのか!!』
くっそう、と胸に手を置いて悔しがる私を無視して囚人達は続ける。
「うーん、あとは顔と」
「足」
「スタイル」
「色気」
「性格」
『泣いていい?』