第1章
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「___そなた、聞こえぬのか。お主じゃ!」
『………ん?』
囚人達が毒に侵されていく悲痛な叫び声を聞きたくなくて耳を塞いでいたから、呼びかけられていたことに気づかなかった。
私のこと?
顔を上げると、絶世の美女が目の前に立っていた。
近くで見ると美のオーラが半端ない。
「娘、わらわが何度声をかけたと思っておる。普通ならば死刑にしてるところじゃ」
全く気づかなかった。
というか、声をかけられると思ってなかった。意識がランナウェイしてたよ
というか死刑って言った?無視したからって流石に横暴すぎません?
美人だから許されるのか。くっそう美人に生まれたかった。後、100回くらい善行積んだ人生を繰り返せば美人に生まれ変われるかなぁ。
っと、いけないいけない。
『す、すすみません!!あの、何でしょうか!?』
サッと牢屋の床に正座し直す。
既にさっきのマゼランの毒の恐怖とかそういった感情はもう吹っ飛んでいた。
だってそうでしょう。目の前にいるのは海賊女帝。美女と会話をするっていう緊張感しか生まれない。
私に一体何のようだ。
ドキドキして美女の言葉を待つ。
「そなたの捕まった理由が知りたい」
『へ?』
あまりにも拍子抜けな内容。
そんなのを知って何になるのかと思ったけど、まぁ単純な疑問なのだろう。こんな小娘がインペルダウンに捕まっているってこと自体、違和感しかないし
『簡単に言うと、天竜人を怒らせてしまったんですよね』
そう言うと、ハンコック様は目を見開いて驚愕の表情を浮かべた
「なっ……そなた、何をしたのじゃ!?」
先ほどまでとは明らかに反応が違う。そのことに少し驚きながらも、言葉を紡ぐ。
『え、えっと天竜人にプロポーズされて___』
私のしどろもどろの回答に被せて、いつもの彼等が大声で叫び始めた。
「プロポーズを受けたはいいものの」
「速攻でホテルに連れてかれて」
「おかされそうになって」
「枕投げつけて」
「「「逃げたんだよな!!」」」
『………。』
エースさんとジンベエさんの時のように、周りの囚人が全部説明してくれたよ。
前回はデリカシーが無いって怒ったけど、もういいや。うん。私が説明するより、よっぽど分かりやすいよね。要点がよくまとまってる。
囚人達の話を聞いたハンコック様は目を見開いた。
「っそなた、天竜人との結婚を断ったのか…!?」
『…最初は私も逆らっちゃダメだと思って我慢したんですけど、無理だったんです。顔がキモすぎて』
まぁ、あの男に私の初体験を奪われるくらいなら捕まった方がマシだったかもしれないし。
最近は割とそんな感じに開き直ってきた。
うんうん、と頷きながらそんなことを考えていると、再び声をかけられる。
「…そなたを何とか救い出してやりたいが、わらわは今、能力を封じられていて自由がきかないのじゃ。すまぬ……」
『へ!?いやいやいや!え、なんで謝るんですか!?気にしないでください!!』
というか、何で助けたいと思われたんだ。こんな能力も権力も無い小娘を。
自分で言うのもなんだが、本当に一般人なので助けてもらっても何もお礼できないぞ。
「そなたの名前を聞いても良いか…?」
『え、あっ、みょうじ=ななしといいます!!』
「そうか、ななし。もしもここから出る好機があったら、わらわを頼るが良い」
その時は、そなたを女ヶ島に歓迎しよう。
そう言い残して蛇姫様は署長達と共に去っていった。
『び、びっくりした…』
あの海賊女帝と会話しちゃったよ私。これは自慢できるやつ。
おばあちゃんになった時、孫とかに『ワシは昔、世界一の美女に会ったことがあるぞい』と話したい。
まぁ、捕まってる以上、孫どころか子供も作れないんだけどね!いぇーい!囚人ジョーク!!
「まさか、あの女帝が他人を気にかけるとは…」
ジンベエさんが驚きの声を上げる。
『同じ女の子だから同情したんですかね』
「いや、同じ七武海同士で面識はあるが…あの女は安い同情をするタイプじゃないわい」
『うーん、何でだろう』
そういえばハンコック様、めちゃくちゃ良い花の香りがした。
私、お風呂とか全然入れてないから絶対臭かったと思う。ほんとすみません。
ところで、去り際に看守に見つからないようにコッソリ渡されたこの紙切れは何なんだろう。ゴミかな?
あらゴミだわ捨てておいて愚民。って感じで渡されたのかな?
そんなことを思いながら、その小さな紙切れを眺めているとエースさんが話しかけてきた。
「それは、おそらくビブルカードだ」
『知ってるんですか?』
「あぁ、海賊なら大体な」
この紙は持ち主の居場所を指し示してくれるらしい。紙を手のひらに乗せると、なるほど。ズリズリと動いて右上の方角を指し示した。
この紙を辿っていけば、目的の人に会えるっていうことのようだ。
便利なんだろうけど……なんか自動で動く紙って生きてるみたいで、ちょっと気持ち悪いわ。
世の中には変わったものがたくさんあるんだなぁ、と関心していてフッと思い出す。
『そういえばハンコック様、エースさんに何を言ってたの?あ、もちろん言いたくないのなら言わなくて大丈夫です!』
あの人はエースさんに用があるみたいだった。
尋ねると、彼は声を絞り出すようにして口を開く。
「弟が…ここインペルダウンに来てる、と」
その言葉にジンベエさんが体が揺れる。
ガチャンと重たい拘束の鎖が鳴った。
「いつも話していた麦わらの子かい…!無茶な」
牢屋で話してる時に、彼に弟がいるという話は聞いていた。そっか。弟さんが助けに…
……ん?麦わら?
え、麦わらってもしかして麦わらのルフィ?
兄弟揃って超絶有名な海賊なの?
すごすぎない?
でも、そっか。あの有名な麦わらのルフィなら
エースさんを助け出せるかも。
間に合うと、いいな。
多分エースさんがマリンフォードに護送されるまで、もうあまり時間がない。
その時は刻一刻と迫っていた。
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「おい嬢ちゃん!!そのハンコックのビブルカード寄越せよ!」
「俺も俺も!金なら払うぜぇ!!」
『ダメです!!絶対悪いことに使うでしょ!!』
それに、男に渡したとなったら私が殺されそう
ビブルカード…使う機会は来ないかもしれないけど、大切にしまっておこう。
これは私のお守りだ。