一年生
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『何かの水滴です。』
少し考えてみたが、広がり続ける痛みに思考が奪われてしまう。
スネイプの無言の圧力も重なって、名前はついに降伏した。
叱られるか、怒鳴られる可能性も予想されたが、言葉はすぐに返ってこない。
緊張で強張る名前の顔の目に、下からスーッと手が現れた。
「指先を見せたまえ。先程君が熱心に見つめていた指だ。」
名前はスネイプ顔を見上げた。
眉間の皺が一層深くて、苛々としているように見える。
そうして顔色を窺っているところ、差し出された掌で肩を突かれ無言の催促をされた。
名前は机の下に隠した手を出す為に動かした。
動かしているはずなのに、自分の手の感覚が感じられない。
長い時間正座した後に足を動かそうとしている感じだ。
差し出された掌を見つめた後、恐る恐る自分の手を置いた。
スネイプの手は冷たかった。
自分の手が熱いだけだろうか。
触れた手の熱にスネイプは眉根を寄せて、それから問題である名前の指先をじっくりと見た。
そして唐突に手を離した。
「自分の足で歩けるかね。」
『……』
何故そんな事を聞かれるのか全く分からない様子だったが、名前はその場で足踏みしてみた。
予想外に重心が安定しない。だけど少しなら歩けそうだ。
『…少しの間なら大丈夫そうです。』
「その心配はいらん。すぐそこだ。
ついてきたまえ。」
くるりと背を向けたスネイプは教室の奥へ足を向けた。
名前親鳥について歩く雛さながら、スネイプの背中を追う。
荒れた水上の船の上にいるようなふらふらとした足取りで、真っ直ぐ歩くだけでも集中力を要した。
「梟便で取り寄せたいくつかの材料の一つに不備があった。」
『……。』
「ガラス製の容器にヒビが入り、そこから中の薬品が漏れ出ていた。ほんの小さな、僅かなヒビだ。漏れ出る薬品もごく少量。だが雨の一粒のようなごく少量でも、使い方を変えれば劇的な変化を与える。まさに、今の君のように。
君の身体に起きている事に対して解毒が必要な状態だ。」
『あれは毒だったのですか…。』
「さよう。単独で使用すればの話ではあるが。通常は調合し強力な殺菌剤となる。」
悲鳴のような音を立てて木製のドアが開かれる。
ドアの奥へと続いていたのは、またもや薄暗い部屋だ。
もしかしたら教室よりも暗いかもしれない。
ドアを押さえて動かないスネイプを見上げた。
スネイプは名前が先に部屋へ入るよう顎先で促してきた。
名前は頭を下げて、お礼を言いながら素直に足を踏み入れた。
薄暗い教室内にいて暗さに目が慣れたと思っていたが、この部屋はやはり更に暗いようだ。
蝋燭の灯りに照らされてどこに何があるかはシルエットで分かる程度である。
数歩近付いて目を細めて、それが何かようやく分かる。
動物のアルコール浸けや、難しそうな書物が並ぶ背の高い本棚、調合されたたくさんの薬と、そのための道具。
まるでお化け屋敷のようだ。
「何をしているのかね。そこへ座っていたまえ。」
背後から唸るような低い声が襲ってきて、名前は珍しく傍目から見ても慌てた様子でキョロキョロと椅子を探した。
焦っていた事と暗さに目が慣れていない事が重なって、すぐには椅子を見付ける事が出来なかった。
背後でドアが閉まる。
二の腕の辺りを掴まれて、殆ど引き摺られるようにしてソファに導かれた。
肩を押されてソファに尻餅をつく。
『ありがとうございます。』
何の返答も無くスネイプは離れて行った。
暗闇に溶け込んでしまいそうな背中を目で追った。
テーブルう上、引き出し、棚。
必要なものを集めているようだ。
そしてすぐに戻って来た。
持ってきたものをサイドテーブルに置いて、名前の隣に腰掛ける。
スネイプは名前の問題の手を掴み引き寄せると、その指先に薬を塗り付けて湿布を貼った。
処置は痛みを伴うかと思われたが、スネイプの手当ては意外にもとても丁寧で、薬の匂いがぷーんと漂うだけだ。
「この毒は、健康な皮膚の上から触るの事には問題ない。しかしそこに傷があれば、もしくは粘膜であれば、容易く侵入する。」
『……俺の注意不足でした。薬を扱う場所だから、もっと気を付けるべきでした。
スネイプ先生にお時間を割いていただいて、お手数をお掛けしてすみませんでした。』
「Mr.ミョウジ、まるで全ての事象に対して自分に全責任があると思っているような口振りだな。思い上がりも程々にしたまえ。君はただの未熟な一年生の生徒だ。」
『それは、そうですが……そのような事を言いたいわけでは、』
「飲みたまえ。」
何も全責任があるとは思っていない。
責任の一端を担っていると思ったから謝罪したのだ。
説明をしようとした矢先、カップを眼前に差し出される。
視界いっぱいにカップが映り、名前は口を閉じて受け取った。
せいぜい200ml程が入るであろうカップには、液体が並々と入っていた。
薄暗い為に色は分からない。少なくとも透明ではない。
いくつもの薬草が調合されたような複雑な匂いが立ち上っている。
甘さがあり、香ばしくもあり、清涼感もある。
「これで腫れも倦怠感も早く治まる。君がぐずぐずせず飲み干せばな。」
暗に早く飲めと言われているようだ。
そこまで酷い匂いでは無かったから、それでも名前は口を付けて一息に飲み干した。
味は酷かった。
あまりの酷さに薬が喉を通る瞬間、自身の肌が粟立つのを感じた。
薬のせいで体調不良になりそうだ。
スネイプは名前の手からカップを奪い取り、ソファから立ち上がった。
「楽になるまでここに寝ていて構わん。
痛みが完全に治まるまで動かない事だ。」
そうスネイプが話す姿を、名前はぼんやりと見詰めた。
毒の影響で頭の中が霞がかっていたし、薬のまずさに身体が驚いていて、何にも集中する事が出来なかった。
話を聞いていても理解する事が出来ない。
スネイプは黙って名前の肩を押して、押し付けるように無理矢理ソファに横たわらせた。
『ここ』というのが『ソファ』だと、名前はそこでようやく理解した。
熱を孕み熱った指先から肩にかけては、痛みと痺れで動かない。
起き上がる事、寝返りを打つ事、身動ぎすら困難な程に身体が重たい。
動かない名前を少し見て、スネイプは側を離れた。
『スネイプ先生、ありがとうございます。』
「何の事かね。Mr.ミョウジ。」
『こうして手当てをしてくださった事です。』
「我輩の管理する教室で起きた事だ。我輩が対処するのは至極真っ当だろう。」
『それでも、俺が医務室に行って手当てを受ければ、先生の個人的な時間をお邪魔する事は無かったでしょう。』
「寝ていたまえ。体裁振る前に自分の状態をよく理解することだな。」
ごりごりと薬草を擦り潰す音が静かな部屋に響く。
調合の作業をしているのだろうか。
邪魔してはいけないと、名前は口を閉じた。
瞼を閉じて呼吸を繰り返す。
じわじわと睡魔が侵食する。
薬に眠くなる成分が入っていたのだろうか?
それとも作業の音が妙に心地良いせいだろうか?
「…ミョウジ。」
『…、』
「返事はしなくて良い。聞いて頭に入れておきたまえ。」
『………』
「今後の罰則の話だ。
残り約一週間の罰則があるわけだが───…」
「あぁ、やっと来た!
こっちこっち、ナマエ!」
「ナマエ、今日は遅かったね。
スネイプに何か厄介な事でもやらされたの?」
遅めの夕食時。
大広間に現れた長身痩躯の姿を見付けて、ハリーとロンは二人して手招いた。
周囲の生徒達と同じく二人も既にデザートに手を付けていたが、二人はあらかじめ名前の分の夕食を取っておいてくれたようで、食いっ逸れはしなくてよさそうだった。
名前二人にぺこりとお辞儀をして、温くなったサーモンのグリルの皿を受け取る。
無表情に、寡黙に、のろのろと食事を口に運ぶ。
その姿を見てハリーとロンは異常を察知したようだった。
二人は同時に顔を見合わせる。
そして名前に話を聞かれないよう、互いに近寄った。
「ねぇ、ロン。何だかナマエ、元気ないね。」
「君もそう思うかい?ハリー。」
「うん。まぁ、表情には出てないんだけど、雰囲気が、…暗いっていうか。」
「うん、言いたいことは分かるよ。ナマエは顔に出ないもんな。
やっぱりスネイプと関係あるのかな?」
「スネイプのせいとしか考えられないよ。だって僕らと離れるまで何もなかったでしょ?
戻ってきてからだもの。ナマエの様子がおかしいの。」
「そうだよな…
ナマエに聞くのが一番早いし、聞いてみるかい?」
「答えてくれるといいんだけどね…。」
口数が少ないのはいつもの事だが、これほどにも食事のペースが遅いのは珍しい。
大好き(であろうと、ハリーとロンは思っている)なミルクにも、今夜は見向きもしない。
急かすハリーをたしなめて、ロンは咳払いをし、言葉につっかえながら名前に聞いた。
『何かあったのか』と。
『スネイプに何か言われたのか』と。
名前は頬張ったプチトマトを咀嚼した後、八の字に眉根を寄せてハリーとロンを見た。
珍しく感情的な表情をする名前に、一体何があったのだろうかと、二人は更に気になった。
『…今日、スネイプ先生をイライラさせてしまったんだ。……』
「イライラ?…」
「あいつは僕らが理解できないちょっとした事で苛つくヤツだよ。君のせいとは限らないんじゃないかなあ。」
「ハリーの言う通りだよ、ナマエ。スネイプはきっと、ハリーがシーカーに選ばれて、しかもニンバス2000を手にしたことが気にくわないんだよ。
だから君のせいじゃないさ。」
「そうだよ。あいつ、僕のこと、何故か知らないけど憎んでるみたいだから。」
『でも、俺は、今日、…』
「何かやっちゃったの?」
頷く。
『…それで、………
罰則は、今日これきりで終わると、…そう、言われたんだ。…』
「よかったじゃないか!
一週間くらい短く終わったってことだろ?」
「別に気にすることないよ、ナマエ。
どうせスネイプのただの気まぐれだろうし。」
『…そうかな。……』
「そうだよ。気にすることないさ。」
「これで心置き無くハリーの応援できるじゃないか。
いいことだろ?」
『……………。』
名前は長い沈黙の後、小さく頷いた。
ハリーとロンはホッと安堵の息を吐く。
兎に角名前を元気にしようと、ロンはデザートを取り分け、ハリーはゴブレットにミルクを注いだ。
のんびりと食事を進める名前を眺めながら、ハリーは名前と交わしたの話の内容を思い返す。
少し何か違和感を覚えたからだ。
「(本当にスネイプは、ただの気まぐれでナマエの罰則を終わりにしたのかな……。)」
自分で導き出した答えだったが、後々考えてみると納得できない箇所があるのに気付いた。
何をしでかしてしまったのかは知らないが、名前はスネイプをイライラさせるような事をやってしまったらしい。
名前はそう言っていた。
しかしそういう場合、スネイプは罰則の日数を増やすのではないか、とハリーは思う。
実際、悪戯好きのロンの双子の兄達は、罰則を度々くらって、罰則をサボろうものなら容赦なく罰則日数を増やされたからだ。
何か別の理由があるのではないだろうか?
ハリーはちらりと教師陣が座るテーブルへ目を向ける。
スネイプはクィレルと何か話していた。
しばらくその様子を見つめていたが、ロンに話し掛けられ、名前も交えて談笑していく間に、だんだんとその猜疑心も薄れていって、
ハリー自身が気付かないうちに、いつの間にか忘れてしまった。
少し考えてみたが、広がり続ける痛みに思考が奪われてしまう。
スネイプの無言の圧力も重なって、名前はついに降伏した。
叱られるか、怒鳴られる可能性も予想されたが、言葉はすぐに返ってこない。
緊張で強張る名前の顔の目に、下からスーッと手が現れた。
「指先を見せたまえ。先程君が熱心に見つめていた指だ。」
名前はスネイプ顔を見上げた。
眉間の皺が一層深くて、苛々としているように見える。
そうして顔色を窺っているところ、差し出された掌で肩を突かれ無言の催促をされた。
名前は机の下に隠した手を出す為に動かした。
動かしているはずなのに、自分の手の感覚が感じられない。
長い時間正座した後に足を動かそうとしている感じだ。
差し出された掌を見つめた後、恐る恐る自分の手を置いた。
スネイプの手は冷たかった。
自分の手が熱いだけだろうか。
触れた手の熱にスネイプは眉根を寄せて、それから問題である名前の指先をじっくりと見た。
そして唐突に手を離した。
「自分の足で歩けるかね。」
『……』
何故そんな事を聞かれるのか全く分からない様子だったが、名前はその場で足踏みしてみた。
予想外に重心が安定しない。だけど少しなら歩けそうだ。
『…少しの間なら大丈夫そうです。』
「その心配はいらん。すぐそこだ。
ついてきたまえ。」
くるりと背を向けたスネイプは教室の奥へ足を向けた。
名前親鳥について歩く雛さながら、スネイプの背中を追う。
荒れた水上の船の上にいるようなふらふらとした足取りで、真っ直ぐ歩くだけでも集中力を要した。
「梟便で取り寄せたいくつかの材料の一つに不備があった。」
『……。』
「ガラス製の容器にヒビが入り、そこから中の薬品が漏れ出ていた。ほんの小さな、僅かなヒビだ。漏れ出る薬品もごく少量。だが雨の一粒のようなごく少量でも、使い方を変えれば劇的な変化を与える。まさに、今の君のように。
君の身体に起きている事に対して解毒が必要な状態だ。」
『あれは毒だったのですか…。』
「さよう。単独で使用すればの話ではあるが。通常は調合し強力な殺菌剤となる。」
悲鳴のような音を立てて木製のドアが開かれる。
ドアの奥へと続いていたのは、またもや薄暗い部屋だ。
もしかしたら教室よりも暗いかもしれない。
ドアを押さえて動かないスネイプを見上げた。
スネイプは名前が先に部屋へ入るよう顎先で促してきた。
名前は頭を下げて、お礼を言いながら素直に足を踏み入れた。
薄暗い教室内にいて暗さに目が慣れたと思っていたが、この部屋はやはり更に暗いようだ。
蝋燭の灯りに照らされてどこに何があるかはシルエットで分かる程度である。
数歩近付いて目を細めて、それが何かようやく分かる。
動物のアルコール浸けや、難しそうな書物が並ぶ背の高い本棚、調合されたたくさんの薬と、そのための道具。
まるでお化け屋敷のようだ。
「何をしているのかね。そこへ座っていたまえ。」
背後から唸るような低い声が襲ってきて、名前は珍しく傍目から見ても慌てた様子でキョロキョロと椅子を探した。
焦っていた事と暗さに目が慣れていない事が重なって、すぐには椅子を見付ける事が出来なかった。
背後でドアが閉まる。
二の腕の辺りを掴まれて、殆ど引き摺られるようにしてソファに導かれた。
肩を押されてソファに尻餅をつく。
『ありがとうございます。』
何の返答も無くスネイプは離れて行った。
暗闇に溶け込んでしまいそうな背中を目で追った。
テーブルう上、引き出し、棚。
必要なものを集めているようだ。
そしてすぐに戻って来た。
持ってきたものをサイドテーブルに置いて、名前の隣に腰掛ける。
スネイプは名前の問題の手を掴み引き寄せると、その指先に薬を塗り付けて湿布を貼った。
処置は痛みを伴うかと思われたが、スネイプの手当ては意外にもとても丁寧で、薬の匂いがぷーんと漂うだけだ。
「この毒は、健康な皮膚の上から触るの事には問題ない。しかしそこに傷があれば、もしくは粘膜であれば、容易く侵入する。」
『……俺の注意不足でした。薬を扱う場所だから、もっと気を付けるべきでした。
スネイプ先生にお時間を割いていただいて、お手数をお掛けしてすみませんでした。』
「Mr.ミョウジ、まるで全ての事象に対して自分に全責任があると思っているような口振りだな。思い上がりも程々にしたまえ。君はただの未熟な一年生の生徒だ。」
『それは、そうですが……そのような事を言いたいわけでは、』
「飲みたまえ。」
何も全責任があるとは思っていない。
責任の一端を担っていると思ったから謝罪したのだ。
説明をしようとした矢先、カップを眼前に差し出される。
視界いっぱいにカップが映り、名前は口を閉じて受け取った。
せいぜい200ml程が入るであろうカップには、液体が並々と入っていた。
薄暗い為に色は分からない。少なくとも透明ではない。
いくつもの薬草が調合されたような複雑な匂いが立ち上っている。
甘さがあり、香ばしくもあり、清涼感もある。
「これで腫れも倦怠感も早く治まる。君がぐずぐずせず飲み干せばな。」
暗に早く飲めと言われているようだ。
そこまで酷い匂いでは無かったから、それでも名前は口を付けて一息に飲み干した。
味は酷かった。
あまりの酷さに薬が喉を通る瞬間、自身の肌が粟立つのを感じた。
薬のせいで体調不良になりそうだ。
スネイプは名前の手からカップを奪い取り、ソファから立ち上がった。
「楽になるまでここに寝ていて構わん。
痛みが完全に治まるまで動かない事だ。」
そうスネイプが話す姿を、名前はぼんやりと見詰めた。
毒の影響で頭の中が霞がかっていたし、薬のまずさに身体が驚いていて、何にも集中する事が出来なかった。
話を聞いていても理解する事が出来ない。
スネイプは黙って名前の肩を押して、押し付けるように無理矢理ソファに横たわらせた。
『ここ』というのが『ソファ』だと、名前はそこでようやく理解した。
熱を孕み熱った指先から肩にかけては、痛みと痺れで動かない。
起き上がる事、寝返りを打つ事、身動ぎすら困難な程に身体が重たい。
動かない名前を少し見て、スネイプは側を離れた。
『スネイプ先生、ありがとうございます。』
「何の事かね。Mr.ミョウジ。」
『こうして手当てをしてくださった事です。』
「我輩の管理する教室で起きた事だ。我輩が対処するのは至極真っ当だろう。」
『それでも、俺が医務室に行って手当てを受ければ、先生の個人的な時間をお邪魔する事は無かったでしょう。』
「寝ていたまえ。体裁振る前に自分の状態をよく理解することだな。」
ごりごりと薬草を擦り潰す音が静かな部屋に響く。
調合の作業をしているのだろうか。
邪魔してはいけないと、名前は口を閉じた。
瞼を閉じて呼吸を繰り返す。
じわじわと睡魔が侵食する。
薬に眠くなる成分が入っていたのだろうか?
それとも作業の音が妙に心地良いせいだろうか?
「…ミョウジ。」
『…、』
「返事はしなくて良い。聞いて頭に入れておきたまえ。」
『………』
「今後の罰則の話だ。
残り約一週間の罰則があるわけだが───…」
「あぁ、やっと来た!
こっちこっち、ナマエ!」
「ナマエ、今日は遅かったね。
スネイプに何か厄介な事でもやらされたの?」
遅めの夕食時。
大広間に現れた長身痩躯の姿を見付けて、ハリーとロンは二人して手招いた。
周囲の生徒達と同じく二人も既にデザートに手を付けていたが、二人はあらかじめ名前の分の夕食を取っておいてくれたようで、食いっ逸れはしなくてよさそうだった。
名前二人にぺこりとお辞儀をして、温くなったサーモンのグリルの皿を受け取る。
無表情に、寡黙に、のろのろと食事を口に運ぶ。
その姿を見てハリーとロンは異常を察知したようだった。
二人は同時に顔を見合わせる。
そして名前に話を聞かれないよう、互いに近寄った。
「ねぇ、ロン。何だかナマエ、元気ないね。」
「君もそう思うかい?ハリー。」
「うん。まぁ、表情には出てないんだけど、雰囲気が、…暗いっていうか。」
「うん、言いたいことは分かるよ。ナマエは顔に出ないもんな。
やっぱりスネイプと関係あるのかな?」
「スネイプのせいとしか考えられないよ。だって僕らと離れるまで何もなかったでしょ?
戻ってきてからだもの。ナマエの様子がおかしいの。」
「そうだよな…
ナマエに聞くのが一番早いし、聞いてみるかい?」
「答えてくれるといいんだけどね…。」
口数が少ないのはいつもの事だが、これほどにも食事のペースが遅いのは珍しい。
大好き(であろうと、ハリーとロンは思っている)なミルクにも、今夜は見向きもしない。
急かすハリーをたしなめて、ロンは咳払いをし、言葉につっかえながら名前に聞いた。
『何かあったのか』と。
『スネイプに何か言われたのか』と。
名前は頬張ったプチトマトを咀嚼した後、八の字に眉根を寄せてハリーとロンを見た。
珍しく感情的な表情をする名前に、一体何があったのだろうかと、二人は更に気になった。
『…今日、スネイプ先生をイライラさせてしまったんだ。……』
「イライラ?…」
「あいつは僕らが理解できないちょっとした事で苛つくヤツだよ。君のせいとは限らないんじゃないかなあ。」
「ハリーの言う通りだよ、ナマエ。スネイプはきっと、ハリーがシーカーに選ばれて、しかもニンバス2000を手にしたことが気にくわないんだよ。
だから君のせいじゃないさ。」
「そうだよ。あいつ、僕のこと、何故か知らないけど憎んでるみたいだから。」
『でも、俺は、今日、…』
「何かやっちゃったの?」
頷く。
『…それで、………
罰則は、今日これきりで終わると、…そう、言われたんだ。…』
「よかったじゃないか!
一週間くらい短く終わったってことだろ?」
「別に気にすることないよ、ナマエ。
どうせスネイプのただの気まぐれだろうし。」
『…そうかな。……』
「そうだよ。気にすることないさ。」
「これで心置き無くハリーの応援できるじゃないか。
いいことだろ?」
『……………。』
名前は長い沈黙の後、小さく頷いた。
ハリーとロンはホッと安堵の息を吐く。
兎に角名前を元気にしようと、ロンはデザートを取り分け、ハリーはゴブレットにミルクを注いだ。
のんびりと食事を進める名前を眺めながら、ハリーは名前と交わしたの話の内容を思い返す。
少し何か違和感を覚えたからだ。
「(本当にスネイプは、ただの気まぐれでナマエの罰則を終わりにしたのかな……。)」
自分で導き出した答えだったが、後々考えてみると納得できない箇所があるのに気付いた。
何をしでかしてしまったのかは知らないが、名前はスネイプをイライラさせるような事をやってしまったらしい。
名前はそう言っていた。
しかしそういう場合、スネイプは罰則の日数を増やすのではないか、とハリーは思う。
実際、悪戯好きのロンの双子の兄達は、罰則を度々くらって、罰則をサボろうものなら容赦なく罰則日数を増やされたからだ。
何か別の理由があるのではないだろうか?
ハリーはちらりと教師陣が座るテーブルへ目を向ける。
スネイプはクィレルと何か話していた。
しばらくその様子を見つめていたが、ロンに話し掛けられ、名前も交えて談笑していく間に、だんだんとその猜疑心も薄れていって、
ハリー自身が気付かないうちに、いつの間にか忘れてしまった。