一年生
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医務室のドアを後ろ手に閉める。
ロンの着替えが入った紙袋を抱え直し、名前は歩き始めた。
傷付いたロンの手はなかなか治らなかった。
毒の影響なのか傷は手だけではなく全身に広がっている。
まるで茹でたソーセージが割れるみたいに。
早く治療をしていればこんなにも治りが遅くなることはなかったかもしれない。
名前は唇を一文字に結ぶ。
時は近付いているのだ。
「ポッターは土曜の夜、必ず現れる。そこを捕まえて突き出してやるんだ!」
物騒な言葉が廊下に響き渡り、名前はピタリと足を止めた。
すぐに周囲を見回すが、見える範囲には誰もいない。
名前はつい先程起こった出来事を必死に思い出そうとした。
声は曲がり角の辺りから聞こえてきた気がする。
意識をそこへ集中して耳をそばだてる。
「で、でも……来なかったらどうするんだ?」
当たりだ。曲がり角の辺りから声が聞こえた。
ただ押し殺した声は吐息が多くて、誰の声かまでは分からない。
「奴は必ず来る!この手紙を見ろ。真夜中にドラゴンを運びだそうとしている!しかも法律違反のドラゴンをだ!」
「けどさ、ドラコ……この手紙の内容が嘘だって可能性も、あるかもしれないし……。」
「いや、本当だ。僕は見たんだ!ドラゴンを!!」
先の声とは違う声が返事をした。
こちらも弱々しい、ぼそぼそした喋り声で誰かは分からない。
けれど話の最中に出た『ドラコ』という名前から、大きい声で話しているのはドラコ・マルフォイだと分かった。
ドラコはひどく興奮している様子で、声が辺りに響いているのにも構わず話し続けている。
しかし弱々しい声の二人は怖気づいているのか、はたまたやる気がないのか、ドラコの意見に同意が出来ないみたいだ。
「もういい、役立たずめ!僕だけで行く!!」
一際大きく鋭い声が響き渡り、すぐに身を翻すような音が聞こえた。
纏わり付くローブを力任せに跳ね除ける、バサバサと激しい衣擦れの音。
そして石畳の廊下を踏み鳴らす力強い足音。
それらの音はだんだんと此方の方へ近付いて来ている。
思いのほか音が素早く此方へ近付いて来ていて、名前は息を呑んで固まった。
今ここで動いたら、その物音はドラコの耳に届くだろう。
そしてきっとその物音の正体を走って確認をするだろう。
動けば立ち聞きしていたことがバレる。
かといって、このまま棒立ちしていてもバレるに決まっている。
"今来たばかりです"と偶然を装うか。
それとも来た道を戻って逃げ出すか。
名前に選択肢はない。
考えている時間も無い。
前に進むか逃げるか。
二つに一つだ。
「ぶっ!」
もう時間切れだ。
まごまごしているうちに、腹辺りに何かがぶつかってきた。
ちょうど鳩尾あたりだ。
結構な勢いだったから痛みがあるかと思われたが、名前は相変わらずの無表情だった。
ただ勢いで名前の体は一瞬振り子のように揺れた。
名前はぶつかった人物を見下ろした。
少しも乱れの無いプラチナブロンドのオールバックが輝いている。
憎々しげに睨み付けながら見上げてきた顔は、やはり思い描いていた人物だった。
「ナマエ・ミョウジ……!」
『ごめんなさい。ドラコ、……大丈夫か。』
「"大丈夫"だって?こんなところで突っ立っているな!邪魔だ!」
ドラコは力任せに名前を押して、名前を壁際に押しやった。
名前はよろけて二、三歩後退し、頭を壁に軽くぶつけた。
無表情の名前から痛みは見受けられないが、片手で後頭部を擦っている。
名前は頭を擦りながらドラコの方を見た。
ドラコは構わず歩き始めていて、既にちょっと遠い所にいる。
そのままドラコの背中を見ていると、彼は急にクルリと振り返った。
何故か肩を怒らせながら早足で此方に戻って来る。
呑気にも名前は逃げもせず、片手を後頭部にやったまま首を傾げる。
目の前までやって来たドラコは、名前の胸に人差し指を突き立てた。
そして大きく口を開いた。
「気安く僕の名を呼ぶな!」
『……じゃあ、何て呼べばいい。』
「お前に僕の名を呼ぶ資格なんてない!親しくもないくせに馴れ馴れしいんだ!分からないのか!?僕とお前は───」
怒りは頬を紅潮させ、口を突いて出る言葉は止まない。
これは多分、単純に八つ当たりだ。
今のドラコは先程の友人達とのやり取りで不満を抱き、それを名前にぶつけているだけだろう。
ドラコ本人がその事に気付いているかは定かではないが。
しかし次の瞬間、ぎょっとしたような表情を浮かべた。
「お───おい……お前、」
『そうだね……ごめんなさい。』
「な……」
『……君のことをよく知らないのに。』
「な……何なんだ、その……」
『自分勝手だった。』
「そ、そんな顔で僕を見るな……!」
ドラコは名前の表情に気を取られすぎて言葉に集中が出来なかった。
いつもは微動だにしない名前の眉毛が、今は情けなく八の字に垂れ下がっている。
口はへの字に曲がり、今にも泣いてしまいそうな目が、じっとドラコを見つめている。
名前のその姿はドラコの頭の中で、妙な想像を作り上げた。
どしゃ降りの雨の中、段ボールの中で濡れながら見上げてくる子犬だ。
手を伸ばしそうになったとき、ハッとして、ドラコは頭を振って正気に返る。
訳のわからないフィルターがかかってしまっていた。
名前は人間で、
しかもドラコよりずっと背の高い、
常にポーカーフェイスの、
気に入らない男。
そう。
自分は何かへんなまやかしを見せられているだけだ。
そんなものには引っ掛からないぞ。
冷静に、冷静に……。
ぎゅっと一回、強く目を閉じてから、もう一度名前を見る。
『……ごめん。』
やっぱり子犬がいる。
と、思ってしまってから、いやいや、と頭を振る。
二の舞にはなりたくない。
一体全体、いきなり、自分はどうしてしまったんだ。
あんなに嫌って嫌って、一時死んでしまえと強く思っていた相手に、こうも動揺するなんて。
まさかもう、何か呪いを?
ドラコは疑わしげに名前を見上げる。
うるうるした黒い両目が見つめてきた。
勢いよく目をそらした。
「あ、謝らなくていい。」
『……じゃあ、どうしたらいい。』
「どうしたらって……何だ。何がだ?」
『怒っているだろう。俺が、君を怒らせたんだ。どうしたら許してもらえる。』
名前は背中を丸めて暗い雰囲気を漂わせる。
今にも体育座りでのの字を書き出しそうだ。
オプションにキノコをつけて。
なんだこいつ。
おかしくなったのはこいつの方じゃないのか。
ドラコは若干後ろに引いた。
「……聞いていたんだろう?」
『……。』
「土曜の夜の話だ。」
『……。』
嘘を吐くわけにもいかず、名前はコクリと頷く。
ドラコはやっぱり、というふうな顔をして腕を組んだ。
「ポッターたちには話すな。」
『……。』
「お前はポッターたちと仲良しだろうが、言っては駄目だ。そうしたら許す。約束ができなければ許さないからな。」
『…………。』
「どうなんだ。約束できるのか?できないのか?」
名前は右上に視線を泳がせて考える。
それから首を少し傾げて、ドラコの目をじっと見つめた。
『わかった……話さないと、約束する。けど……』
「けど、何だ?」
『ドラコは……』
「だから名を呼ぶなと……」
『……ごめん。』
「……もういい。好きにしろ。で?僕が何だっていうんだ。」
『……土曜の夜、行くのか。』
「当たり前だろう。捕まえて突き出してやるんだ。」
『……でも、それは…………』
「何だ?勿体振らずにさっさと言え。」
『……ドラコも出歩いたことになるんじゃないのか。』
「…………。」
ドラコはぱちくりと瞬きを繰り返した。
そして、言葉を理解すると、目は右へ左へ泳いだ。
どうやらそれは考えていなかったらしい。
名前は涼しげな瞳でじっと見つめた。
「……僕の行為は正当だ。証拠がなければ先生方だって信じないだろう?だから僕は減点対象にはならない。」
『……そうか。』
「そうだ。」
自分自身に言い聞かせるように、そうきっぱりと言う。
名前が首を傾げると、もう一度、念を押すように、「僕が正しいんだ」と力強く言った。
あまりにも力強かったものだから、名前は勢いでコクコクと頷いてしまった。
内心、大丈夫だろうとは思っていなかったが。
いくらそれが正しい行為だろうと、夜に学校を歩き回るなんてことは許されない。
もし上手くハリーたちを捕まえることができたとしても、一緒に罰せられる可能性大だ。
そして、そんな名前の考えは的中していた。
翌朝、グリフィンドールからは一五〇点という減点があったからだ。
しかも減点したのが、かの有名なハリーだというのだから、グリフィンドール寮生以外の生徒からの風当たりも強かった。
スリザリン寮生はハリーを見るたび拍手をしたり口笛を吹いたりして揶揄した。
スリザリンからも二十点の減点があったのだが、露程も気にしていないらしい。
『……。』
試験を一週間前に控え、名前は朝食をとりながら本を開いていた。
隣に座るハリーも本を読みながら黙々とクロワッサンをかじっている。
ハーマイオニーも、ようやく手が元通りになったロンも静かだ。
ハリーに対する風当たりはなかなか弱まらない。
今もなるべく目立たないように、静かに過ごしている。
「あ、手紙だよ。ハリー。」
「本当だ……誰からだろう。」
「あら……私にもきたわ。ハリーと同じ封筒。」
「ハーマイオニーにも?……」
名前は本から顔を上げて、手紙の封を切るハリーとハーマイオニーを交互に見つめた。
ロンが口いっぱいにソーセージを頬張りながら、同じく二人を見つめている。
「…
そうだ。罰則があったんだった。」
「……ああ。……今日なの?」
「うん。今夜、玄関ホールに十一時だって……」
「ハーマイオニーも?」
「ええ。」
「フィルチが一緒だ。何をするんだろう……」
『……徹夜で掃除、……とか。』
名前がミルクを一口含み、首を傾げつつ言う。
ロンは眉根を寄せて首を振った。
「ナマエ、あのフィルチだよ。そんな生易しいもんじゃないさ。きっと、もっと恐ろしい……」
ハッとしてロンは口を閉じた。
ハリーとハーマイオニーは黙ってパンをかじっている。
「いくらフィルチでも、死なせるようなことはしないさ。生徒なんだし。な、ナマエ。」
『ん……うん。』
手をわたわたさせて慌てて言う。
そんなロンにいきなり振られ、ナマエは返事もままならない。
しかも早口だったので、正直なんて言ったか分からなかった。
とりあえず頷いてしまった。
しかし、ハリーとハーマイオニーは黙ったままだった。
フォローにはならなかったらしい。
ロンはへんな汗をかいた。
重たい空気が三人の間に漂う。
ただ一人、そんな空気などお構い無しに、名前はプチトマトをフォークに乗せようと奮闘している。
おかしな沈黙を少しも気にしていない。
気にしていないというか、気づいてもいないようだったが。
ロンの着替えが入った紙袋を抱え直し、名前は歩き始めた。
傷付いたロンの手はなかなか治らなかった。
毒の影響なのか傷は手だけではなく全身に広がっている。
まるで茹でたソーセージが割れるみたいに。
早く治療をしていればこんなにも治りが遅くなることはなかったかもしれない。
名前は唇を一文字に結ぶ。
時は近付いているのだ。
「ポッターは土曜の夜、必ず現れる。そこを捕まえて突き出してやるんだ!」
物騒な言葉が廊下に響き渡り、名前はピタリと足を止めた。
すぐに周囲を見回すが、見える範囲には誰もいない。
名前はつい先程起こった出来事を必死に思い出そうとした。
声は曲がり角の辺りから聞こえてきた気がする。
意識をそこへ集中して耳をそばだてる。
「で、でも……来なかったらどうするんだ?」
当たりだ。曲がり角の辺りから声が聞こえた。
ただ押し殺した声は吐息が多くて、誰の声かまでは分からない。
「奴は必ず来る!この手紙を見ろ。真夜中にドラゴンを運びだそうとしている!しかも法律違反のドラゴンをだ!」
「けどさ、ドラコ……この手紙の内容が嘘だって可能性も、あるかもしれないし……。」
「いや、本当だ。僕は見たんだ!ドラゴンを!!」
先の声とは違う声が返事をした。
こちらも弱々しい、ぼそぼそした喋り声で誰かは分からない。
けれど話の最中に出た『ドラコ』という名前から、大きい声で話しているのはドラコ・マルフォイだと分かった。
ドラコはひどく興奮している様子で、声が辺りに響いているのにも構わず話し続けている。
しかし弱々しい声の二人は怖気づいているのか、はたまたやる気がないのか、ドラコの意見に同意が出来ないみたいだ。
「もういい、役立たずめ!僕だけで行く!!」
一際大きく鋭い声が響き渡り、すぐに身を翻すような音が聞こえた。
纏わり付くローブを力任せに跳ね除ける、バサバサと激しい衣擦れの音。
そして石畳の廊下を踏み鳴らす力強い足音。
それらの音はだんだんと此方の方へ近付いて来ている。
思いのほか音が素早く此方へ近付いて来ていて、名前は息を呑んで固まった。
今ここで動いたら、その物音はドラコの耳に届くだろう。
そしてきっとその物音の正体を走って確認をするだろう。
動けば立ち聞きしていたことがバレる。
かといって、このまま棒立ちしていてもバレるに決まっている。
"今来たばかりです"と偶然を装うか。
それとも来た道を戻って逃げ出すか。
名前に選択肢はない。
考えている時間も無い。
前に進むか逃げるか。
二つに一つだ。
「ぶっ!」
もう時間切れだ。
まごまごしているうちに、腹辺りに何かがぶつかってきた。
ちょうど鳩尾あたりだ。
結構な勢いだったから痛みがあるかと思われたが、名前は相変わらずの無表情だった。
ただ勢いで名前の体は一瞬振り子のように揺れた。
名前はぶつかった人物を見下ろした。
少しも乱れの無いプラチナブロンドのオールバックが輝いている。
憎々しげに睨み付けながら見上げてきた顔は、やはり思い描いていた人物だった。
「ナマエ・ミョウジ……!」
『ごめんなさい。ドラコ、……大丈夫か。』
「"大丈夫"だって?こんなところで突っ立っているな!邪魔だ!」
ドラコは力任せに名前を押して、名前を壁際に押しやった。
名前はよろけて二、三歩後退し、頭を壁に軽くぶつけた。
無表情の名前から痛みは見受けられないが、片手で後頭部を擦っている。
名前は頭を擦りながらドラコの方を見た。
ドラコは構わず歩き始めていて、既にちょっと遠い所にいる。
そのままドラコの背中を見ていると、彼は急にクルリと振り返った。
何故か肩を怒らせながら早足で此方に戻って来る。
呑気にも名前は逃げもせず、片手を後頭部にやったまま首を傾げる。
目の前までやって来たドラコは、名前の胸に人差し指を突き立てた。
そして大きく口を開いた。
「気安く僕の名を呼ぶな!」
『……じゃあ、何て呼べばいい。』
「お前に僕の名を呼ぶ資格なんてない!親しくもないくせに馴れ馴れしいんだ!分からないのか!?僕とお前は───」
怒りは頬を紅潮させ、口を突いて出る言葉は止まない。
これは多分、単純に八つ当たりだ。
今のドラコは先程の友人達とのやり取りで不満を抱き、それを名前にぶつけているだけだろう。
ドラコ本人がその事に気付いているかは定かではないが。
しかし次の瞬間、ぎょっとしたような表情を浮かべた。
「お───おい……お前、」
『そうだね……ごめんなさい。』
「な……」
『……君のことをよく知らないのに。』
「な……何なんだ、その……」
『自分勝手だった。』
「そ、そんな顔で僕を見るな……!」
ドラコは名前の表情に気を取られすぎて言葉に集中が出来なかった。
いつもは微動だにしない名前の眉毛が、今は情けなく八の字に垂れ下がっている。
口はへの字に曲がり、今にも泣いてしまいそうな目が、じっとドラコを見つめている。
名前のその姿はドラコの頭の中で、妙な想像を作り上げた。
どしゃ降りの雨の中、段ボールの中で濡れながら見上げてくる子犬だ。
手を伸ばしそうになったとき、ハッとして、ドラコは頭を振って正気に返る。
訳のわからないフィルターがかかってしまっていた。
名前は人間で、
しかもドラコよりずっと背の高い、
常にポーカーフェイスの、
気に入らない男。
そう。
自分は何かへんなまやかしを見せられているだけだ。
そんなものには引っ掛からないぞ。
冷静に、冷静に……。
ぎゅっと一回、強く目を閉じてから、もう一度名前を見る。
『……ごめん。』
やっぱり子犬がいる。
と、思ってしまってから、いやいや、と頭を振る。
二の舞にはなりたくない。
一体全体、いきなり、自分はどうしてしまったんだ。
あんなに嫌って嫌って、一時死んでしまえと強く思っていた相手に、こうも動揺するなんて。
まさかもう、何か呪いを?
ドラコは疑わしげに名前を見上げる。
うるうるした黒い両目が見つめてきた。
勢いよく目をそらした。
「あ、謝らなくていい。」
『……じゃあ、どうしたらいい。』
「どうしたらって……何だ。何がだ?」
『怒っているだろう。俺が、君を怒らせたんだ。どうしたら許してもらえる。』
名前は背中を丸めて暗い雰囲気を漂わせる。
今にも体育座りでのの字を書き出しそうだ。
オプションにキノコをつけて。
なんだこいつ。
おかしくなったのはこいつの方じゃないのか。
ドラコは若干後ろに引いた。
「……聞いていたんだろう?」
『……。』
「土曜の夜の話だ。」
『……。』
嘘を吐くわけにもいかず、名前はコクリと頷く。
ドラコはやっぱり、というふうな顔をして腕を組んだ。
「ポッターたちには話すな。」
『……。』
「お前はポッターたちと仲良しだろうが、言っては駄目だ。そうしたら許す。約束ができなければ許さないからな。」
『…………。』
「どうなんだ。約束できるのか?できないのか?」
名前は右上に視線を泳がせて考える。
それから首を少し傾げて、ドラコの目をじっと見つめた。
『わかった……話さないと、約束する。けど……』
「けど、何だ?」
『ドラコは……』
「だから名を呼ぶなと……」
『……ごめん。』
「……もういい。好きにしろ。で?僕が何だっていうんだ。」
『……土曜の夜、行くのか。』
「当たり前だろう。捕まえて突き出してやるんだ。」
『……でも、それは…………』
「何だ?勿体振らずにさっさと言え。」
『……ドラコも出歩いたことになるんじゃないのか。』
「…………。」
ドラコはぱちくりと瞬きを繰り返した。
そして、言葉を理解すると、目は右へ左へ泳いだ。
どうやらそれは考えていなかったらしい。
名前は涼しげな瞳でじっと見つめた。
「……僕の行為は正当だ。証拠がなければ先生方だって信じないだろう?だから僕は減点対象にはならない。」
『……そうか。』
「そうだ。」
自分自身に言い聞かせるように、そうきっぱりと言う。
名前が首を傾げると、もう一度、念を押すように、「僕が正しいんだ」と力強く言った。
あまりにも力強かったものだから、名前は勢いでコクコクと頷いてしまった。
内心、大丈夫だろうとは思っていなかったが。
いくらそれが正しい行為だろうと、夜に学校を歩き回るなんてことは許されない。
もし上手くハリーたちを捕まえることができたとしても、一緒に罰せられる可能性大だ。
そして、そんな名前の考えは的中していた。
翌朝、グリフィンドールからは一五〇点という減点があったからだ。
しかも減点したのが、かの有名なハリーだというのだから、グリフィンドール寮生以外の生徒からの風当たりも強かった。
スリザリン寮生はハリーを見るたび拍手をしたり口笛を吹いたりして揶揄した。
スリザリンからも二十点の減点があったのだが、露程も気にしていないらしい。
『……。』
試験を一週間前に控え、名前は朝食をとりながら本を開いていた。
隣に座るハリーも本を読みながら黙々とクロワッサンをかじっている。
ハーマイオニーも、ようやく手が元通りになったロンも静かだ。
ハリーに対する風当たりはなかなか弱まらない。
今もなるべく目立たないように、静かに過ごしている。
「あ、手紙だよ。ハリー。」
「本当だ……誰からだろう。」
「あら……私にもきたわ。ハリーと同じ封筒。」
「ハーマイオニーにも?……」
名前は本から顔を上げて、手紙の封を切るハリーとハーマイオニーを交互に見つめた。
ロンが口いっぱいにソーセージを頬張りながら、同じく二人を見つめている。
「…
そうだ。罰則があったんだった。」
「……ああ。……今日なの?」
「うん。今夜、玄関ホールに十一時だって……」
「ハーマイオニーも?」
「ええ。」
「フィルチが一緒だ。何をするんだろう……」
『……徹夜で掃除、……とか。』
名前がミルクを一口含み、首を傾げつつ言う。
ロンは眉根を寄せて首を振った。
「ナマエ、あのフィルチだよ。そんな生易しいもんじゃないさ。きっと、もっと恐ろしい……」
ハッとしてロンは口を閉じた。
ハリーとハーマイオニーは黙ってパンをかじっている。
「いくらフィルチでも、死なせるようなことはしないさ。生徒なんだし。な、ナマエ。」
『ん……うん。』
手をわたわたさせて慌てて言う。
そんなロンにいきなり振られ、ナマエは返事もままならない。
しかも早口だったので、正直なんて言ったか分からなかった。
とりあえず頷いてしまった。
しかし、ハリーとハーマイオニーは黙ったままだった。
フォローにはならなかったらしい。
ロンはへんな汗をかいた。
重たい空気が三人の間に漂う。
ただ一人、そんな空気などお構い無しに、名前はプチトマトをフォークに乗せようと奮闘している。
おかしな沈黙を少しも気にしていない。
気にしていないというか、気づいてもいないようだったが。