人魚姫は泡沫の夢を見るか
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『レッドサウスの5階建てビル倒壊、死者15人に』
ニューミリオン、レッドサウスストリートで起きた5階建て雑居ビルの倒壊で、警察当局は瓦礫の下で2遺体を新たに見つけ、犠牲者は少なくとも15人に達したと報告した。
倒壊後、計19人が救出され、10人が入院中。1人が行方不明になっており、捜索活動が続けられているという。
HERIOSによると、ビル地下に出現したサブスタンスを奪取しようと、イクリプスとヒーローが交戦。イクリプスの抵抗により―――
『1人が行方不明になっており、捜索活動が続けられているという』
切り抜いた新聞記事を見て、その一文を指でなぞる。結局その後も見つかることはなく、けれど生存は絶望的だろうと言われた。数年が経ちその行方不明者、親友のシリルは死んだことになった。
エリオスに就職して、もしかすれば何か情報が得られるかもしれないと薄い期待を寄せていたが、有益な情報は得られないままだ。だとしても私のやることに変わりはない。行方不明の親友の行方を探ることが、エリオスに入った唯一の目的ではないからだ。
あの日、私は自由に動くことのできる体と、親友を一人失った。ただの事故であれば、大学に入って勉強を続けて、今頃は就職先を探していたかもしれない。だが、そうではなかった。あれは人為的に引き起こされたものだった。
どうすればあの事件が起こらなかったのか、どうすれば被害を最小限に食い止めることが出来たのか、私はどうしたら良かったのか、ずっと考えていた。
そのすぐ後にロスト・ゼロが起こり、多数の犠牲者が出た。どうすればいい、なんて考える前からこの街にはイクリプスによる被害があって、でもそれは対岸の火事だった。私は自分が燃やされてからようやく事の重大さに気がついたのだ。そしてその火事は今後も続くのかもしれない。
私に出来ることは限られている。それに、時間だって十分にあるとは言えない。それでもエリオスに入ったのは、許せなかったからだ。不条理に人の命を奪う存在が、何も知ろうとしなかった自分が、知った上で行動に移さない自分が。許せなかった。だから周囲の制止を振り切り、ここへ来ることを決めたのだ。
自由に、とはいかないけれど、ベッドの上から出られるくらいには身体を動かせるようにしてくれたサブスタンスは、私の命を蝕んでいく。けれど、一生寝たきりで何も成し遂げられずにただ息をしているだけなのなら、生きているという実感を持って死んでいきたかった。だから私はこのサブスタンスを手放しはしない。
短い人生の中で、どれほどの事が出来るかは分からないけれど、少しでも生きた証を残せるのなら、精一杯足掻き続けよう。やるべき事、やりたい事、全部やりきることはできないかもしれない。それでも、後悔を残さないようにやっていくしかないのだから。
ニューミリオン、レッドサウスストリートで起きた5階建て雑居ビルの倒壊で、警察当局は瓦礫の下で2遺体を新たに見つけ、犠牲者は少なくとも15人に達したと報告した。
倒壊後、計19人が救出され、10人が入院中。1人が行方不明になっており、捜索活動が続けられているという。
HERIOSによると、ビル地下に出現したサブスタンスを奪取しようと、イクリプスとヒーローが交戦。イクリプスの抵抗により―――
『1人が行方不明になっており、捜索活動が続けられているという』
切り抜いた新聞記事を見て、その一文を指でなぞる。結局その後も見つかることはなく、けれど生存は絶望的だろうと言われた。数年が経ちその行方不明者、親友のシリルは死んだことになった。
エリオスに就職して、もしかすれば何か情報が得られるかもしれないと薄い期待を寄せていたが、有益な情報は得られないままだ。だとしても私のやることに変わりはない。行方不明の親友の行方を探ることが、エリオスに入った唯一の目的ではないからだ。
あの日、私は自由に動くことのできる体と、親友を一人失った。ただの事故であれば、大学に入って勉強を続けて、今頃は就職先を探していたかもしれない。だが、そうではなかった。あれは人為的に引き起こされたものだった。
どうすればあの事件が起こらなかったのか、どうすれば被害を最小限に食い止めることが出来たのか、私はどうしたら良かったのか、ずっと考えていた。
そのすぐ後にロスト・ゼロが起こり、多数の犠牲者が出た。どうすればいい、なんて考える前からこの街にはイクリプスによる被害があって、でもそれは対岸の火事だった。私は自分が燃やされてからようやく事の重大さに気がついたのだ。そしてその火事は今後も続くのかもしれない。
私に出来ることは限られている。それに、時間だって十分にあるとは言えない。それでもエリオスに入ったのは、許せなかったからだ。不条理に人の命を奪う存在が、何も知ろうとしなかった自分が、知った上で行動に移さない自分が。許せなかった。だから周囲の制止を振り切り、ここへ来ることを決めたのだ。
自由に、とはいかないけれど、ベッドの上から出られるくらいには身体を動かせるようにしてくれたサブスタンスは、私の命を蝕んでいく。けれど、一生寝たきりで何も成し遂げられずにただ息をしているだけなのなら、生きているという実感を持って死んでいきたかった。だから私はこのサブスタンスを手放しはしない。
短い人生の中で、どれほどの事が出来るかは分からないけれど、少しでも生きた証を残せるのなら、精一杯足掻き続けよう。やるべき事、やりたい事、全部やりきることはできないかもしれない。それでも、後悔を残さないようにやっていくしかないのだから。