色んな短編
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今日も一日些細な事で落ち込む。勝手に一人で落ち込む。誰かのせいで落ち込むことより、きっと一人で傷ついている方が多いかもしれない。私がもう一人いたら私のことを殺してるだろう。そうしてまた死にたくなる。あー、これから上司に報告書提出するのも嫌だなあ。どうか上司居ませんように。そしたら机に置くだけでよくなる。そんな淡い期待を込めながら4回ノックを打つ。
「スモーカー大佐、いらっしゃいますか?」
「入れ」
ああ、居た。心の中で項垂れる。ちょっと曲がった背筋を頑張って伸ばして「失礼します」と一言言って入った。スモーカー大佐は書類片手に二本の葉巻の火を消していた。
「こちら、報告書となります。ご確認を」
野犬と評されるこの上司は只今上司の上司から嫌がらせを受けている。その名も書類地獄。とは言え、上司に噛み付くことは合っても、サボることはないスモーカー大佐のデスクには一山程しか書類の山がない。前回がとある三大将の配属だっただけに、この書類の量を“しか”と言うのは感覚が狂ってしまったのか。
「……おい」
「っはい」
ぼやっと書類を眺めていると上司から呼ばれる。どこか不備があったのだろうか。もしや色々と疲れてたせいで変なことでも書いていたか。それとも嫌がらせを受けているから私に八つ当たりでもする気なのか。手足から段々と体温が失われていく。
「前から思っていたが……」
ギロリと上司の赤い目がこちらを見る。条件反射で蛇に睨まれた蛙のように思わずぴしりと固くなってしまう。前からやらかしていたのか!?ドッドッと心臓が嫌な音を立てる。キュッと胃袋も掴まれたように痛くなる。
「お前の出す書類は見やすくて分かりやすいな」
「……へ」
予想を180度裏切ってやってきた。褒められた?しかもスモーカー大佐、ちょっと微笑んでる気がしない?手足はまだ冷たいが、胸がじんわり温かくなっていく。心臓はまだやけに大きな音を立てるが、今はその苦しさも耐えられた。
「それなのにちゃんと細かいトコまで書いてるから凄ェな」
「そんなこっ、あ、りがとうございます!」
謙遜しようとして止めた。謙遜したら上司の審美眼まで謙遜の対象に入る気がして。途中で慌ててお礼を言ったら、吹き出して笑われた。あ、ヤバい逃げたい。後ろ手に組んだ手をキツく握った。
「ルイ、俺のせいで忙しくてすまねェな」
「いえ!スモーカー大佐は悪くないですから!」
ガチャリ。叫んだように答えた瞬間、タイミングよく開いたドアからヒナ大佐が顔を出す。スタスタとこちらに向かいながら言葉を発した。
「あら、いい部下がいるのねスモーカーくん。ヒナ感激」
にっこり微笑んで肩を叩かれると、一気に顔が熱くなった。事実ではあるが、私は何を口走ったのだろうか。しかも聞かれてしまった。それもスモーカー大佐の同期でおそらく友達のヒナ大佐に。絶対酒のツマミにこの話が出てしまうだろう。最悪だ。
「まァな。言っとくが、お前の方にやる気はねェからな」
な、何を言っているんだ!この人は!嬉しいやら恥ずかしいやらで帽子のつばを下げた。私はいつこの部屋から退出したらいいのか。
「もう、ケチね。たしぎちゃんもくれないし、この子一人はいいじゃない」
ヒナ大佐にぐいっと引き寄せられる。うわ、と間抜けな声を出すよりも先に「貴女さえよければ私はいつでも来てくれていいのよ」と囁かれたら、もう出す声も出せなくなった。誰でも高身長でスタイル抜群の美人に囁かれたら頭に真っ白になるはずだ。
「おい!お前はそうやって俺の部下を誑かしに来たのか?さっさと書類もって帰れ!」
「ハイハイ、さっさと帰らせてもらうわ」
それじゃあ、と手を振りながら部屋を出ていくヒナ大佐を呆然と見つめていると、上司の声が私を呼んだ。
「…… ルイ」
「はい!」
「俺は、お前をずっとここに留める権限はねェ」
当たり前の事を言う上司に首をひねる。
「?はい」
「俺は問題ばかり起こすし、それでクソ上司に目を付けられてる。この書類みたいに俺のせいで忙しくなることも多い。比べてアイツは優等生だ」
「それでも、俺の部下で居てくれるか?」
ヒナ大佐の方に異動した方が仕事も楽だ。書類仕事に追われ疲れる事も少ないし、スモーカー大佐に振り回される事も、他の上司にも野犬の部下だと睨まれる事もなくなるだろう。それでも。
「もっ、勿論です!」
私は繊細なので、たった一言褒められるだけでしばらく頑張れてしまう。単純?うるさいな、それでも私は貴方に着いて行きたいと思ったのは嘘じゃない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「たしぎちゃんもヒナ大佐に狙われたんだね……!」
「あ、ルイちゃんも?ヒナさん、周りが男ばっかで嫌だから女の子が欲しいんだって」
「そ、うなんだ……(知りたくなかった)」
「でも役に立たないのは女でもいらないと思うから、それなりに認められてるんだよね?」
「……そうだといいなあ」
「スモーカー大佐、いらっしゃいますか?」
「入れ」
ああ、居た。心の中で項垂れる。ちょっと曲がった背筋を頑張って伸ばして「失礼します」と一言言って入った。スモーカー大佐は書類片手に二本の葉巻の火を消していた。
「こちら、報告書となります。ご確認を」
野犬と評されるこの上司は只今上司の上司から嫌がらせを受けている。その名も書類地獄。とは言え、上司に噛み付くことは合っても、サボることはないスモーカー大佐のデスクには一山程しか書類の山がない。前回がとある三大将の配属だっただけに、この書類の量を“しか”と言うのは感覚が狂ってしまったのか。
「……おい」
「っはい」
ぼやっと書類を眺めていると上司から呼ばれる。どこか不備があったのだろうか。もしや色々と疲れてたせいで変なことでも書いていたか。それとも嫌がらせを受けているから私に八つ当たりでもする気なのか。手足から段々と体温が失われていく。
「前から思っていたが……」
ギロリと上司の赤い目がこちらを見る。条件反射で蛇に睨まれた蛙のように思わずぴしりと固くなってしまう。前からやらかしていたのか!?ドッドッと心臓が嫌な音を立てる。キュッと胃袋も掴まれたように痛くなる。
「お前の出す書類は見やすくて分かりやすいな」
「……へ」
予想を180度裏切ってやってきた。褒められた?しかもスモーカー大佐、ちょっと微笑んでる気がしない?手足はまだ冷たいが、胸がじんわり温かくなっていく。心臓はまだやけに大きな音を立てるが、今はその苦しさも耐えられた。
「それなのにちゃんと細かいトコまで書いてるから凄ェな」
「そんなこっ、あ、りがとうございます!」
謙遜しようとして止めた。謙遜したら上司の審美眼まで謙遜の対象に入る気がして。途中で慌ててお礼を言ったら、吹き出して笑われた。あ、ヤバい逃げたい。後ろ手に組んだ手をキツく握った。
「ルイ、俺のせいで忙しくてすまねェな」
「いえ!スモーカー大佐は悪くないですから!」
ガチャリ。叫んだように答えた瞬間、タイミングよく開いたドアからヒナ大佐が顔を出す。スタスタとこちらに向かいながら言葉を発した。
「あら、いい部下がいるのねスモーカーくん。ヒナ感激」
にっこり微笑んで肩を叩かれると、一気に顔が熱くなった。事実ではあるが、私は何を口走ったのだろうか。しかも聞かれてしまった。それもスモーカー大佐の同期でおそらく友達のヒナ大佐に。絶対酒のツマミにこの話が出てしまうだろう。最悪だ。
「まァな。言っとくが、お前の方にやる気はねェからな」
な、何を言っているんだ!この人は!嬉しいやら恥ずかしいやらで帽子のつばを下げた。私はいつこの部屋から退出したらいいのか。
「もう、ケチね。たしぎちゃんもくれないし、この子一人はいいじゃない」
ヒナ大佐にぐいっと引き寄せられる。うわ、と間抜けな声を出すよりも先に「貴女さえよければ私はいつでも来てくれていいのよ」と囁かれたら、もう出す声も出せなくなった。誰でも高身長でスタイル抜群の美人に囁かれたら頭に真っ白になるはずだ。
「おい!お前はそうやって俺の部下を誑かしに来たのか?さっさと書類もって帰れ!」
「ハイハイ、さっさと帰らせてもらうわ」
それじゃあ、と手を振りながら部屋を出ていくヒナ大佐を呆然と見つめていると、上司の声が私を呼んだ。
「…… ルイ」
「はい!」
「俺は、お前をずっとここに留める権限はねェ」
当たり前の事を言う上司に首をひねる。
「?はい」
「俺は問題ばかり起こすし、それでクソ上司に目を付けられてる。この書類みたいに俺のせいで忙しくなることも多い。比べてアイツは優等生だ」
「それでも、俺の部下で居てくれるか?」
ヒナ大佐の方に異動した方が仕事も楽だ。書類仕事に追われ疲れる事も少ないし、スモーカー大佐に振り回される事も、他の上司にも野犬の部下だと睨まれる事もなくなるだろう。それでも。
「もっ、勿論です!」
私は繊細なので、たった一言褒められるだけでしばらく頑張れてしまう。単純?うるさいな、それでも私は貴方に着いて行きたいと思ったのは嘘じゃない。
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「たしぎちゃんもヒナ大佐に狙われたんだね……!」
「あ、ルイちゃんも?ヒナさん、周りが男ばっかで嫌だから女の子が欲しいんだって」
「そ、うなんだ……(知りたくなかった)」
「でも役に立たないのは女でもいらないと思うから、それなりに認められてるんだよね?」
「……そうだといいなあ」
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