Deeply love with the darkness -4-
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朝一番にジョセフから電話がかかってきた。
久しぶりに話すのに、ジョセフはめそめそしょぼくれていて、訳のわからない私に何度も謝ってきた。
やっぱりお前を守れるのはあいつしかいない。
わしがあと50年若ければって何度も。
何の話か分からなかったけど、誰の話なのかはすぐに分かった。
でも、受け入れたくなかった。
ジョセフが取り乱したままで電話は切れてしまって、私もすごく動揺してた。
「もしもし、朋子さんっ?!仗助ってもう学校行っちゃいましたか?!」
ほんとに、無理だよ今更。
ジョセフってなんでいつも勝手になんでも決めちゃうの。のりくんだってこのこと知ってるに違いない。わざと私に黙ってたんだ。2人とも許さないからね!
『仗助なら、今朝は散歩しながら行くって言って、早めに家を出たわよ。そんなに慌ててどうしたの?』
1人で抱えきれなくて、咄嗟に浮かんだのはやっぱり仗助の顔だった。今すぐ全部話したい。
ジョセフがほんとにわがままなの。
私、承太郎に会いたくないのよ。
あの時私が泣いてたのを見た仗助なら、何言ったってうんうんって聞いてくれる。藁にもすがる思いで電話の受話器を手に取ったら、答えてくれたのは仗助のママだった。
「あの…ちょっと、話したいことがあって…」
『何々〜?今すぐ会いたくなっちゃったとか、そういうやつぅ?』
「えと…いいんです、いないなら」
『あは、ウソウソ、冗談よ!…まぁ、ほんとにそうだったらあたしとしては嬉しいんだけど』
「朋子さん!」
『いいじゃない。あいつの一途さには母親の私もびっくりしてんだから…。帰ってきたら電話あったって伝えとくわね。あいつ大喜びで飛んで行くと思うわ』
あっけらかんと笑って朋子さんは電話を切った。
もう仗助に話す気満々だった私は1人の空間に耐えられず、すぐに家を出た。
ぶどうヶ丘高校までの通学路を駆け足で通っていたら、抜け道を出たところで仗助が歩いているのを見つけてすぐに横から飛びついた。
「仗助!お願い、聞いて!大変なことになったの!私もう無理この町にいられない!」
「!リカ…そんな慌ててどーしたよ?ちょっと待って…こっちも丁度取り込んでるとこなんだ」
何だか仗助も困ってる様子で覇気がなかった。
不思議に思って顔を覗き込んだら、距離を取るように両肩をやんわりと掴まれ制止された。
「ま、けど…お前の顔見たらやっぱ元気出んな」
そう笑って言ってくれる仗助に、私は笑い返すことが出来なかった。
それまで全然気付いてなかったけど、仗助は1人じゃなかった。大きくて、白いコートと帽子の人がいる。5年以上経ってるのにすぐに分かってしまった。だって、変わってないんだもん。私を見つめるグリーンの強い瞳が。
私はすぐに視線をそらしたけど、向こうはそうじゃなかった。
「……リカ…。」
「!」
呼ばれた瞬間、駆け寄って抱きつきたくなった。嫌いなのに、低くて優しく私を呼ぶその声を聞いて、嬉しいって思うなんて。
泣きそうになるのを堪えてすぐに仗助の背中に隠れた。
「なんで来たの」
「……。」
「馬鹿みたい。せっかく結婚して子供も生まれて、普通の人みたいに幸せな生活してたのに……なんで離婚なんて」
「……相変わらずおしゃべりなじじぃだぜ…」
やれやれって帽子を被りなおす仕草も昔と変わらなくて、やっぱりなんだか嫌だった。
離れ離れになってあんなに悲しかったことを思い出すから。
「ジョセフの話、全然分からなかった。私を守るって……何?」
「ちょうどそこの仗助にその話をするところだったんだ。まさかお前とこんなにも早く会えるとは思っちゃいなかったがな…」
「私もう承太郎に守ってもらわなくても平気だから」
反抗するのに無意識に後ろから仗助の指をぎゅって握りしめてた。
仗助は神妙に黙って私たちの会話を聞いているだけだったけど、私に応えるように手を握り返してくれた。
「…知らない町に1人で来て、高校にもちゃんと行った。今大学生なの。それに、バイトしてお金も稼いでる。…友達も、いっぱい出来たのよ。1人でも平気だった」
一方的に喋る私を承太郎はじっと見ていた。
揺れる瞳がすごく優しくて、嬉しそうだったから。私はあの頃に戻ったみたいに自分がすごく子供みたいに思えた。
10歳で経験したエジプトの戦いの後、怖くて不安定だった私をずっと守っていてくれたんだよね。
そのままで良いって、一緒にいればどこにだって行けるからって言ってたのに……嘘吐き。
「私…、承太郎がいなくても、平気だったよ」
ついに言えた。でも承太郎の顔は見れなくて、ほとんど仗助の背中で私の視界は隠れてる。
永遠に思える沈黙が降りてから、やっと承太郎が口を割った。
「…お前が1人で生きていく羽目になったのは、全て俺の責任だ。本当に悪かったと思っている」
「……平気だって言ってるでしょ」
「取り戻せるものじゃあないし、お前が会いたくないと言うなら本来俺は出てくるべきじゃない。だが今回のことは…じじぃの最後の希望だと思って我慢しちゃあくれないか」
「嫌、もうジョセフのわがままに巻き込まれるの。希望って何?」
「それを今から説明する。ひとまず…俺とお前の間で気まずそうにしている仗助を解放してやれ」
「……。」
仕方ないので仗助の手を離して隣に並んだ。
仗助は不機嫌なのか困ってるのかわからないけど眉間に皺を寄せて私と承太郎の顔を見比べている。
やっと正面から見た承太郎の帽子はなんか変な形をしていた。
それを深く被ろうと引っ張っていたけど、避けた隙間から目が潤んでるのが分かって私の怒ってた気持ちが少し萎えた。私のこと嫌いだとか、どうでも良いって思ってるわけじゃあないみたい。
「まぁ…色々とあったが……こうしてまたお前に会えたのだけは、良いことだな…確実に…」
そんなこと言われたら嬉しくって、小学生のときだったら駆け寄って抱きついてただろうけど。まだ全然許せない気持ちの方が勝つ。
けど今は仕方ない。仗助にも関係ある事情みたいだし、とりあえず話だけでも聞かなくちゃ。
「ねぇ、その帽子なんか変だよ。」
承太郎の頭を指さしたら何とも言えない空気が流れた。
「あと…その子誰?」
制服の小さな男の子に指を移動させたら、その子はどこかに隠れたそうにソワソワと視線を泳がせるばかりで、そのあと承太郎の盛大なため息にビクついていた。
久しぶりに話すのに、ジョセフはめそめそしょぼくれていて、訳のわからない私に何度も謝ってきた。
やっぱりお前を守れるのはあいつしかいない。
わしがあと50年若ければって何度も。
何の話か分からなかったけど、誰の話なのかはすぐに分かった。
でも、受け入れたくなかった。
ジョセフが取り乱したままで電話は切れてしまって、私もすごく動揺してた。
「もしもし、朋子さんっ?!仗助ってもう学校行っちゃいましたか?!」
ほんとに、無理だよ今更。
ジョセフってなんでいつも勝手になんでも決めちゃうの。のりくんだってこのこと知ってるに違いない。わざと私に黙ってたんだ。2人とも許さないからね!
『仗助なら、今朝は散歩しながら行くって言って、早めに家を出たわよ。そんなに慌ててどうしたの?』
1人で抱えきれなくて、咄嗟に浮かんだのはやっぱり仗助の顔だった。今すぐ全部話したい。
ジョセフがほんとにわがままなの。
私、承太郎に会いたくないのよ。
あの時私が泣いてたのを見た仗助なら、何言ったってうんうんって聞いてくれる。藁にもすがる思いで電話の受話器を手に取ったら、答えてくれたのは仗助のママだった。
「あの…ちょっと、話したいことがあって…」
『何々〜?今すぐ会いたくなっちゃったとか、そういうやつぅ?』
「えと…いいんです、いないなら」
『あは、ウソウソ、冗談よ!…まぁ、ほんとにそうだったらあたしとしては嬉しいんだけど』
「朋子さん!」
『いいじゃない。あいつの一途さには母親の私もびっくりしてんだから…。帰ってきたら電話あったって伝えとくわね。あいつ大喜びで飛んで行くと思うわ』
あっけらかんと笑って朋子さんは電話を切った。
もう仗助に話す気満々だった私は1人の空間に耐えられず、すぐに家を出た。
ぶどうヶ丘高校までの通学路を駆け足で通っていたら、抜け道を出たところで仗助が歩いているのを見つけてすぐに横から飛びついた。
「仗助!お願い、聞いて!大変なことになったの!私もう無理この町にいられない!」
「!リカ…そんな慌ててどーしたよ?ちょっと待って…こっちも丁度取り込んでるとこなんだ」
何だか仗助も困ってる様子で覇気がなかった。
不思議に思って顔を覗き込んだら、距離を取るように両肩をやんわりと掴まれ制止された。
「ま、けど…お前の顔見たらやっぱ元気出んな」
そう笑って言ってくれる仗助に、私は笑い返すことが出来なかった。
それまで全然気付いてなかったけど、仗助は1人じゃなかった。大きくて、白いコートと帽子の人がいる。5年以上経ってるのにすぐに分かってしまった。だって、変わってないんだもん。私を見つめるグリーンの強い瞳が。
私はすぐに視線をそらしたけど、向こうはそうじゃなかった。
「……リカ…。」
「!」
呼ばれた瞬間、駆け寄って抱きつきたくなった。嫌いなのに、低くて優しく私を呼ぶその声を聞いて、嬉しいって思うなんて。
泣きそうになるのを堪えてすぐに仗助の背中に隠れた。
「なんで来たの」
「……。」
「馬鹿みたい。せっかく結婚して子供も生まれて、普通の人みたいに幸せな生活してたのに……なんで離婚なんて」
「……相変わらずおしゃべりなじじぃだぜ…」
やれやれって帽子を被りなおす仕草も昔と変わらなくて、やっぱりなんだか嫌だった。
離れ離れになってあんなに悲しかったことを思い出すから。
「ジョセフの話、全然分からなかった。私を守るって……何?」
「ちょうどそこの仗助にその話をするところだったんだ。まさかお前とこんなにも早く会えるとは思っちゃいなかったがな…」
「私もう承太郎に守ってもらわなくても平気だから」
反抗するのに無意識に後ろから仗助の指をぎゅって握りしめてた。
仗助は神妙に黙って私たちの会話を聞いているだけだったけど、私に応えるように手を握り返してくれた。
「…知らない町に1人で来て、高校にもちゃんと行った。今大学生なの。それに、バイトしてお金も稼いでる。…友達も、いっぱい出来たのよ。1人でも平気だった」
一方的に喋る私を承太郎はじっと見ていた。
揺れる瞳がすごく優しくて、嬉しそうだったから。私はあの頃に戻ったみたいに自分がすごく子供みたいに思えた。
10歳で経験したエジプトの戦いの後、怖くて不安定だった私をずっと守っていてくれたんだよね。
そのままで良いって、一緒にいればどこにだって行けるからって言ってたのに……嘘吐き。
「私…、承太郎がいなくても、平気だったよ」
ついに言えた。でも承太郎の顔は見れなくて、ほとんど仗助の背中で私の視界は隠れてる。
永遠に思える沈黙が降りてから、やっと承太郎が口を割った。
「…お前が1人で生きていく羽目になったのは、全て俺の責任だ。本当に悪かったと思っている」
「……平気だって言ってるでしょ」
「取り戻せるものじゃあないし、お前が会いたくないと言うなら本来俺は出てくるべきじゃない。だが今回のことは…じじぃの最後の希望だと思って我慢しちゃあくれないか」
「嫌、もうジョセフのわがままに巻き込まれるの。希望って何?」
「それを今から説明する。ひとまず…俺とお前の間で気まずそうにしている仗助を解放してやれ」
「……。」
仕方ないので仗助の手を離して隣に並んだ。
仗助は不機嫌なのか困ってるのかわからないけど眉間に皺を寄せて私と承太郎の顔を見比べている。
やっと正面から見た承太郎の帽子はなんか変な形をしていた。
それを深く被ろうと引っ張っていたけど、避けた隙間から目が潤んでるのが分かって私の怒ってた気持ちが少し萎えた。私のこと嫌いだとか、どうでも良いって思ってるわけじゃあないみたい。
「まぁ…色々とあったが……こうしてまたお前に会えたのだけは、良いことだな…確実に…」
そんなこと言われたら嬉しくって、小学生のときだったら駆け寄って抱きついてただろうけど。まだ全然許せない気持ちの方が勝つ。
けど今は仕方ない。仗助にも関係ある事情みたいだし、とりあえず話だけでも聞かなくちゃ。
「ねぇ、その帽子なんか変だよ。」
承太郎の頭を指さしたら何とも言えない空気が流れた。
「あと…その子誰?」
制服の小さな男の子に指を移動させたら、その子はどこかに隠れたそうにソワソワと視線を泳がせるばかりで、そのあと承太郎の盛大なため息にビクついていた。
