Deeply love with the darkness -4-
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その日カフェドゥ・マゴでのアルバイトを終えたリカは裏の勝手口から店を出た。遅出だったので時間は夜の9時。外はすっかり夜の人工的な光に照らされている。
ガチャリとドアを押し開けて外を覗くと、目の前のドゥ・マゴの敷地にヤンキー座りの誰かが陣取っている。
「よっ!おつかれェェ〜〜」
振り返ると同時に片手を上げて悪戯に笑っているのはリカが良く知る人物だった。
「仗助…」
「今日も稼いだ?ん?」
「来なくていいって言ってるのに……」
茶化してくる仗助と目を合わさないまま段差を降りて歩き始める。
仗助は少しぽかんとしてから急いで立ち上がって後を追いかけた。
颯爽と歩いているリカの揺れる髪から、甘い香りが漂ってくる。仗助の好きな香りだ。
「もう9時だよ。ママもおじいちゃんも心配するでしょ」
「またまたぁ、親公認の仲じゃないスかぁ俺たちぃ」
「えらそうに何言ってるのよ。この不良めぇ」
「へへっ」
めげずについてくる仗助は図体は大きいが子犬のようで可愛かった。リカは思わず笑いながらくるりと仗助に向き直ってその鼻先を指で弾く。触れた先から顔が熱いけど、暗いからわかりゃしねぇよな。リカが笑うと仗助も心から嬉しくなる。
髪型をリーゼントにしたときも、今と同じ笑顔で「かっこいーじゃん!」と褒めてくれた。
仗助は初めてリカと出会った小学生のころから、彼女に特別な感情を抱いている。
「でも本当、毎回迎えに来なくていいからね。夜遅いし大変でしょ?危ないし」
「そう思うなら、夜のシフトはやめてもらえませんかね?危ないってよぉ、ストーカー被害で警察沙汰になったあんたが言う言葉じゃないっしょ」
「……ありがと」
リカはドゥ・マゴの売り上げに貢献している、と胸を張って言えるぐらいには客を呼び寄せていた。愛らしさとスタイルの良さのせいか、それとも誰をも吸い寄せてしまう海色の宝石のような美しい瞳のせいか…。
しかし困ったことに彼女のシフト上がりを狙う出待ちの男たちが現れたのだ。あまりにもしつこく、一緒にいたバイト仲間が警察を呼び騒ぎになった。特に酷かった年上男を撃退したのが仗助で、2度とリカに奴が近づけないようにしたのが露伴である(このことはリカと仗助は知らないが…)。
仗助はそれからずっと、リカがバイトを終えるのを迎えに来るようにしている。他の出待ちの男たちに睨みを効かせながら。
おかげで店の周りをうろつく男たちがいなくなり、無理やりやめろとも言いづらいリカであった。
「なぁリカ。」
仗助は立ち止まって彼女の細い肩を引いた。礼を言いながらもその笑みが少し困っているかのように見えたからだ。
ぐ、と近づいたら、大きな瞳に仗助の顔が映り込んだ。ただの街灯の光も一緒に反射してキラキラと星のように明るい。リカと一緒にいたら自分の人生もずっと輝いているだろう。仗助はそう確信していた。
「俺に対して礼なんていらねーんだ。俺はこうしてあんたの周りをうろついてるが、どんだけやっても足りねぇぐらいだよ。命を助けられたことに比べりゃあな…」
「そんなの、大袈裟だよ」
「いいや。大袈裟なもんか。俺がバカやって海で溺れちまったとき…助けてくれたのはリカじゃねーか。真っ暗で上も下も分からなくて、苦しくて……何でもやるから、一生言うこと聞くから助けてくれって神様に祈ったんだ。そうしたら、あんたが現れた……今でもはっきり覚えてるよ。あんだけ暗かった夜の海で、やけにはっきり見えたんだ。まるで光り輝いて…すげー綺麗だったよ」
「……。」
それは真っ暗な海の中で仗助を見つけるために、ダークネスで周りの闇を取り込んでいたからだろう。もちろんリカはその言葉を飲み込んだ。
「あの日からリカは俺の女神だ。一生かけて恩を返すぜ。あんたを守るためなら何だってやる。…神様と約束したからな」
肩を掴んだまま反対の手でびしっと鼻先に人差し指を突き付けてくる。
一瞬驚いたけど、リカはやっぱり仗助の瞳から目を逸らした。その迷いのない、何かをやり遂げる眼差しには覚えがある。承太郎やジョセフと同じ色の瞳である。でもきっと、もう彼に会うことはないだろう。
「……。(私、元気にしてるからね)」
「リカ?聞いてんのかよぉ〜」
こうして間近で目を合わせると、決まってリカは長いまつ毛に縁取られたまぶたを伏せてしまう。仗助はその度に不安になった。リカがどこか遠いところにいるようで。
「ねぇ仗助。本当に何でもしてくれるの?」
「…ああ……何でもやるよ…リカ、あんたのためなら」
ゆっくりと瞬きしながら再び仗助を見上げたリカは、女神というよりは小悪魔のように悪戯でいて艶のある微笑みを浮かべていた。
その瞳を見ていると、波のように突き放されては、吸い込まれてしまい…それを繰り返すうちにすっかり溺れてしまうのだ。
つまり、目の前いっぱいのリカに見惚れていた仗助は、完全に油断していた。
がばりと突然熊のように両手を上げたリカに驚く。
「それじゃあ私は今から……あんたをくすぐるッ!!」
「なんでだよぉぉーーーッ!?ギャハハハハハ!!リカ!やめろやめてくれぇーーッ!!?」
「なーにかっこつけてんのよ仗助のくせにっ!ほらほらほらほら!」
「わははははは!!ひぃーっ!!」
わき腹をくすぐってやると仗助は大袈裟なぐらいに笑っている。
杜王町に来てから、寂しさに負けそうになったこともあるけれど…新しい出会いがリカを癒してくれた。仗助といるといつの間にかリカも笑っているのだ。彼がいてくれて本当に良かったとリカは思っている。そして、守りたいと言ってくれる彼を大切にしようと思っている。今度は離れずに済むように…。
「そーいや、今夜は飯はどーすんだ?」
「まかないもらってきた」
ひとしきり遊びが終わって、持っている袋を誇らしげに掲げるリカに仗助はこっそりため息をついた。勝手な心配だが、リカを1人にしたくないのだ。1人で暮らしていることなんてもちろん分かっているが、そこに常に自分もいたいと思っている。
「…うちに来なよ。おふくろもじーちゃんも喜ぶからさ。一緒に食おーぜ」
「………うん。…ありがとう」
素直に頷いたリカは仗助の膝のところの服をつまんで少し距離をつめた。仗助に会うと、いつもその瞳から離れたくなくなる。改めて近付いてからの上目遣いに仗助は何度目か分からない胸の苦しさを味わっていた。こちらの本気など気にもとめず、奔放なリカに振り回されてばかりだ。4つも年が離れていたら、弟分にしか思えないのかもしれないけれど。
「……何コレ。」
「ドーナツ。」
東方家についてまかないを開けたときのショックといったら。
「……夜飯、ドーナツだけのつもりだったんスか?」
「…駄目よね」
「野菜食え!!」
無頓着さに心配のあまり本気で叱ったら、「ママじゃないんだから」とむっとされた。余計にストレスの溜まる仗助であった。
ガチャリとドアを押し開けて外を覗くと、目の前のドゥ・マゴの敷地にヤンキー座りの誰かが陣取っている。
「よっ!おつかれェェ〜〜」
振り返ると同時に片手を上げて悪戯に笑っているのはリカが良く知る人物だった。
「仗助…」
「今日も稼いだ?ん?」
「来なくていいって言ってるのに……」
茶化してくる仗助と目を合わさないまま段差を降りて歩き始める。
仗助は少しぽかんとしてから急いで立ち上がって後を追いかけた。
颯爽と歩いているリカの揺れる髪から、甘い香りが漂ってくる。仗助の好きな香りだ。
「もう9時だよ。ママもおじいちゃんも心配するでしょ」
「またまたぁ、親公認の仲じゃないスかぁ俺たちぃ」
「えらそうに何言ってるのよ。この不良めぇ」
「へへっ」
めげずについてくる仗助は図体は大きいが子犬のようで可愛かった。リカは思わず笑いながらくるりと仗助に向き直ってその鼻先を指で弾く。触れた先から顔が熱いけど、暗いからわかりゃしねぇよな。リカが笑うと仗助も心から嬉しくなる。
髪型をリーゼントにしたときも、今と同じ笑顔で「かっこいーじゃん!」と褒めてくれた。
仗助は初めてリカと出会った小学生のころから、彼女に特別な感情を抱いている。
「でも本当、毎回迎えに来なくていいからね。夜遅いし大変でしょ?危ないし」
「そう思うなら、夜のシフトはやめてもらえませんかね?危ないってよぉ、ストーカー被害で警察沙汰になったあんたが言う言葉じゃないっしょ」
「……ありがと」
リカはドゥ・マゴの売り上げに貢献している、と胸を張って言えるぐらいには客を呼び寄せていた。愛らしさとスタイルの良さのせいか、それとも誰をも吸い寄せてしまう海色の宝石のような美しい瞳のせいか…。
しかし困ったことに彼女のシフト上がりを狙う出待ちの男たちが現れたのだ。あまりにもしつこく、一緒にいたバイト仲間が警察を呼び騒ぎになった。特に酷かった年上男を撃退したのが仗助で、2度とリカに奴が近づけないようにしたのが露伴である(このことはリカと仗助は知らないが…)。
仗助はそれからずっと、リカがバイトを終えるのを迎えに来るようにしている。他の出待ちの男たちに睨みを効かせながら。
おかげで店の周りをうろつく男たちがいなくなり、無理やりやめろとも言いづらいリカであった。
「なぁリカ。」
仗助は立ち止まって彼女の細い肩を引いた。礼を言いながらもその笑みが少し困っているかのように見えたからだ。
ぐ、と近づいたら、大きな瞳に仗助の顔が映り込んだ。ただの街灯の光も一緒に反射してキラキラと星のように明るい。リカと一緒にいたら自分の人生もずっと輝いているだろう。仗助はそう確信していた。
「俺に対して礼なんていらねーんだ。俺はこうしてあんたの周りをうろついてるが、どんだけやっても足りねぇぐらいだよ。命を助けられたことに比べりゃあな…」
「そんなの、大袈裟だよ」
「いいや。大袈裟なもんか。俺がバカやって海で溺れちまったとき…助けてくれたのはリカじゃねーか。真っ暗で上も下も分からなくて、苦しくて……何でもやるから、一生言うこと聞くから助けてくれって神様に祈ったんだ。そうしたら、あんたが現れた……今でもはっきり覚えてるよ。あんだけ暗かった夜の海で、やけにはっきり見えたんだ。まるで光り輝いて…すげー綺麗だったよ」
「……。」
それは真っ暗な海の中で仗助を見つけるために、ダークネスで周りの闇を取り込んでいたからだろう。もちろんリカはその言葉を飲み込んだ。
「あの日からリカは俺の女神だ。一生かけて恩を返すぜ。あんたを守るためなら何だってやる。…神様と約束したからな」
肩を掴んだまま反対の手でびしっと鼻先に人差し指を突き付けてくる。
一瞬驚いたけど、リカはやっぱり仗助の瞳から目を逸らした。その迷いのない、何かをやり遂げる眼差しには覚えがある。承太郎やジョセフと同じ色の瞳である。でもきっと、もう彼に会うことはないだろう。
「……。(私、元気にしてるからね)」
「リカ?聞いてんのかよぉ〜」
こうして間近で目を合わせると、決まってリカは長いまつ毛に縁取られたまぶたを伏せてしまう。仗助はその度に不安になった。リカがどこか遠いところにいるようで。
「ねぇ仗助。本当に何でもしてくれるの?」
「…ああ……何でもやるよ…リカ、あんたのためなら」
ゆっくりと瞬きしながら再び仗助を見上げたリカは、女神というよりは小悪魔のように悪戯でいて艶のある微笑みを浮かべていた。
その瞳を見ていると、波のように突き放されては、吸い込まれてしまい…それを繰り返すうちにすっかり溺れてしまうのだ。
つまり、目の前いっぱいのリカに見惚れていた仗助は、完全に油断していた。
がばりと突然熊のように両手を上げたリカに驚く。
「それじゃあ私は今から……あんたをくすぐるッ!!」
「なんでだよぉぉーーーッ!?ギャハハハハハ!!リカ!やめろやめてくれぇーーッ!!?」
「なーにかっこつけてんのよ仗助のくせにっ!ほらほらほらほら!」
「わははははは!!ひぃーっ!!」
わき腹をくすぐってやると仗助は大袈裟なぐらいに笑っている。
杜王町に来てから、寂しさに負けそうになったこともあるけれど…新しい出会いがリカを癒してくれた。仗助といるといつの間にかリカも笑っているのだ。彼がいてくれて本当に良かったとリカは思っている。そして、守りたいと言ってくれる彼を大切にしようと思っている。今度は離れずに済むように…。
「そーいや、今夜は飯はどーすんだ?」
「まかないもらってきた」
ひとしきり遊びが終わって、持っている袋を誇らしげに掲げるリカに仗助はこっそりため息をついた。勝手な心配だが、リカを1人にしたくないのだ。1人で暮らしていることなんてもちろん分かっているが、そこに常に自分もいたいと思っている。
「…うちに来なよ。おふくろもじーちゃんも喜ぶからさ。一緒に食おーぜ」
「………うん。…ありがとう」
素直に頷いたリカは仗助の膝のところの服をつまんで少し距離をつめた。仗助に会うと、いつもその瞳から離れたくなくなる。改めて近付いてからの上目遣いに仗助は何度目か分からない胸の苦しさを味わっていた。こちらの本気など気にもとめず、奔放なリカに振り回されてばかりだ。4つも年が離れていたら、弟分にしか思えないのかもしれないけれど。
「……何コレ。」
「ドーナツ。」
東方家についてまかないを開けたときのショックといったら。
「……夜飯、ドーナツだけのつもりだったんスか?」
「…駄目よね」
「野菜食え!!」
無頓着さに心配のあまり本気で叱ったら、「ママじゃないんだから」とむっとされた。余計にストレスの溜まる仗助であった。